サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」

サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 西槇太一Photo by 西槇太一

●セットリスト
01. ふたりだけのパーティ
02. My Foreplay Music
03. 東京VICTORY
04. いとしのフィート
05. 恋するマンスリー・デイ
06. あっという間の夢のTONIGHT
07. 君だけに夢をもう一度
08. 夜風のオン・ザ・ビーチ
09. LONELY WOMAN
10. Ya Ya(あの時代 (とき)を忘れない)
11. 愛は花のように(Ole!)
12. 走れ!!トーキョー・タウン
13. 世界の屋根を撃つ雨のリズム
14. 栄光の男
15. はっぴいえんど
16. LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜
17. ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)
18. エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
19. BOHBO No.5
20. マンピーのG★SPOT
(アンコール)
EN01. 希望の轍
EN02. 夕方 HOLD ON ME
EN03. 勝手にシンドバッド


サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 西槇太一Photo by 西槇太一
未曾有の困難に見舞われた2020年から2021年の幕開けまでを、サザンオールスターズの年越しライブと共に過ごすことができる。音楽とエンタメの底力を発揮して人々を労い、素晴らしい新年を祈願すべく行われた今回の無観客配信ライブ「サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020『Keep Smilin’〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜』」は、感染拡大防止への配慮から横浜アリーナで事前収録されたパフォーマンスだ。12月31日の22時からスタートした配信映像では、居間のセットで炬燵を囲んだサザンの面々(まるでザ・ドリフターズのコントみたいだ)が「私たちもさあ、サザンのライブ観ながら年越しするなんて、初めてだよねー(原由子/Key・Vo)」、「僕は『紅白』観たいんだけどさあ。嵐! 嵐!(関口和之/B)」といったふうに、のんびりしたムードで過ごしている。

でも、デビュー42周年記念日以来半年ぶりとなった今回の配信ライブ(前回は生配信)は、ただ世の人々を労い、楽しませるだけの内容ではなかった。サザンオールスターズはもしかすると、この時のために40年以上のプロキャリアを歩んできたのではないか。歴代のアルバム曲やカップリング曲も数多く引っ張り出し、10年、20年以上の歳月を経て久々にライブ披露された楽曲も少なくない。そこには確かに、世界中の音楽のエネルギーを咀嚼し、呑み込み、メッセージに変換しようとしてきたサザンのキャリアが息づいていた。これは2021年へと向かう我々のための、愛と融和の総力戦なのだ。

サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代
サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 西槇太一Photo by 西槇太一
3作目のアルバム『タイニイ・バブルス』から“ふたりだけのパーティ”で華々しくロックし始める、総勢12名の大所帯バンド。桑田佳祐(Vo・G)、関口和之、松田弘(Dr)、原由子、野沢秀行(Percussion)のサザン本体プラス、斎藤誠(G)、片山敦夫(Key)、山本拓夫(Sax)、吉田治(Sax)、菅坡雅彦(Tp)、TIGER(Cho)、小田原"ODY"友洋(Cho)という信頼のサポート陣である。右肩腱板を痛めて治療とリハビリに努めていた松田も、心配を寄せ付けないようなタイトで鋭いビートを繰り出している。オリンピック日本代表選手たちの映像を背に、気高いチャントと拳を上げて届けられた“東京VICTORY”は、楽曲が宿した本質的なタフさをあらためて知らしめるように響いていた。

桑田が、医療従事者やエッセンシャルワーカーに感謝の言葉を伝え、「全国のファンの皆さんの魂と共に、ここ横浜アリーナに帰って参りました!」と告げた後には、大晦日にぴったりなサザンロック“いとしのフィート”へと向かう。そこからレゲエ風の“恋するマンスリー・デイ”、メロウなカリプソ“あっという間の夢のTONIGHT”と、膨大なディスコグラフィから次々にバンドグルーヴの引き出しを開け放っていった。まさに変幻自在である。ツアーを通して時間をかけて、レアな選曲のセットリストを仕上げてゆくならまだわかるが、この配信ライブ一発に途方もない労力を注ぎ込み、際限なく豊かな音楽の時間を導き出しているのである。

とりわけ圧巻だったのは、「次の曲なんだっけ?」、「え、俺?」、「俺?」(原やTIGERも口々に言っている)とトボケた前フリを挟み込んでからの“愛は花のように(Ole!)”や、“走れ!!トーキョー・タウン”、そしてアルバム未収録のディープなサイケデリア“世界の屋根を撃つ雨のリズム”という怒涛のレア曲連打であった。人生の悲喜交々をもってこそ雄弁に語る、サザン作品の奥行きの深さに震えが走る。

サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 高田梓Photo by 高田梓
サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 西槇太一Photo by 西槇太一
国立競技場の映像を背負って始まる“栄光の男”や、“はっぴいえんど”、“LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜”といった珠玉のポップチューンで触れる者の胸を揺さぶった後には、セクシーダンサー達が乱舞し、ド派手な特効演出も出し惜しみなしのクライマックスへと向かう。1コーラス目に艶かしくスウィングするアレンジが持ち込まれた“ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)”も最高だ。“マンピーのG★SPOT”を切り出すとき、桑田の被ったカツラには、花飾りや獅子舞の頭部などと共に「嵐」の文字に象られた飾りが煌めいている。「ほぼほぼ年越しライブ」の公演タイトル通り、既に新年を迎えてしまっていた点はご愛嬌だが、10秒前からの賑々しいカウントダウンを経て色とりどりの風船が降り注ぎ、“一月一日”の一節が歌われる。そして桑田は「音楽関係、エンタメ業界は負けないからなーっ!! 嵐、ありがとうっ!!」と告げるのだった。

今回のステージで披露された楽曲たちには、サザンが消化・吸収してきた多様なグルーヴだけではなく、日本語や英語、スペイン語やフランス語、中国語などの歌詞が散りばめられていた。世界中の人々が病魔に脅かされ、物理的にも精神的にも分断され孤立した時代に、サザンはありとあらゆる手段を尽くして「うた」のエネルギーを呼び起こし、対話の時間を作り上げたのだ。アンコールの最後は、アリーナ内で和装ダンサーが踊りまくる “勝手にシンドバッド”。桑田は「暮れも正月もなく 人の命を守る 医療従事者の皆さん そして家族の方々を守ろう 収束が見えて来ない みんな苦しいけど コロナ禍を乗り越えて いつか素敵な未来を 迎えよう」と歌詞を変えて歌っていた。日本各地にスタッフが赴いて打ち上げたという、美しい花火の様子で、今回の映像は締め括られる。人類は、決して無力ではない。音楽が、映像が、そんなふうに語りかけてくる配信であった。(小池宏和)

サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 西槇太一Photo by 西槇太一
サザンオールスターズ/無観客配信「ほぼほぼ年越しライブ 2020」 - Photo by 関口佳代Photo by 関口佳代



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