wooderd chiarie
トップ・バッターは都内(主に下北沢など)を中心に活動する4ピース、wooderd chiarie(ウッダード・チアリ)。ギタリストの小和瀬がゆったりと、陶酔を呼び込むウォール・オブ・ギター・サウンドを響かせてくれる。そして共に素晴らしい立ち上がりを聴かせてくれたのが、上邨(Vo)のファルセット・ボイスだ。一息でduoのフロアの空気をwooderd chiarie色に染め上げてしまった。2曲目からは一転、小気味良くキャッチーなビート・ポップにシフトしていったのだが、一発目に説得力のある音響派プレイでオーディエンスを釘付けにするやり方は上手い! と感じた。メロディアスなベース・ラインもいい。青い情景と、その時代の時の流れを綿密かつ美しいサウンドと歌心で描いてゆくような、そういう印象を抱かせてくれるステージであった。
SPANK PAGE
2組目は、今春、シングル『koi』でメジャー・デビューを果たしたSPANK PAGEである。ROCKIN’ON JAPAN6月号の『新・新世代バンド特集』でもがっちりフィーチャーされているホープ。オープニングは、フロントマンの仲手川がキーボードを弾きつつ歌い出す。複雑に絡み合うダイナミックなポスト・ロック風バンド・アンサンブルの中にあって、彼の歌メロの芯の強さというのは何か特別なインパクトをもたらしている。国産フォークというかニュー・ミュージックというか(もちろん肯定的な意味合いで書いているのだが)、サウンドやアレンジの急進性の中で妙に懐かしささえ覚える、親和感のあるメロディなのである。それが一緒くたになっているのが非常に面白い。2曲目以降は仲手川がギターにスイッチしてパンキッシュに攻めたり、ラストは山下(G)と2人で再び鍵盤に向かって4つ打ちポップを披露するなど、短い持ち時間ながら多様な作風とステージングを披露してくれた。
sleepy.ab
そして、地元・北海道を拠点に、国内のポスト・ロック/ポップのスタイルをリードし続けているsleepy.ab。相変わらず穏やかに、美しい音響空間を描き出してくれるが、グルーヴの感触が随分とロックな印象になっている気がした。ローライダー、或いはドラッグ・スターという感じの、どっしりと後ろに構えたリズム隊が支えるグルーヴ。とりわけsleepy.ab型低温レゲエといったふうの“ドレミ”、またファンキーな“アクアリウム”という新曲群でそのグルーヴは大活躍していて、その上で彼らならではの幻想的なギター音響、浮遊感のある歌が映える。良い曲たくさんあるのに5曲中2曲が新曲、しかも名曲という攻めの姿勢が手伝ってか、ああ、いいバンドだなあ、と今更ながらじんわりと思ってしまった。これからもばんばん活躍して欲しいし、もっともっと多くの人に知ってもらいたいバンドだ。
People In The Box
ステージ袖から威勢の良いかけ声が聴こえた。トリを務めるのはPeople In The Boxだ。3人が位置につくと、静動/緩急自在のスペクタクル・ショウが始まる。オーディエンスを異世界に誘い込むようなスリリングなアンサンブルと、「え、そーなるの!?」的なユニークなソング・ライティング。目一杯のびのびとプレイしている感じもいい。急転直下に爆音ノイズを撒き散らす展開も彼らにとっては常道である。恐ろしいというか笑えるというか。そしてのたうち回りながら爆音とともにギターを投げうってしまう波多野。なんか嬉しそう。「どうも! People In The Box、改め、変態です!」「皆さん、楽しんでますかー!? 僕は見てのとおりです」と絶好調だ。音響/ポスト・ロック型のアーティストというのは、理性と計算に基づいた理論派タイプが多いような気がするのだけれど、どうも彼の場合は衝動派ロッカーの血も色濃いというか、分裂症気味に両方を併せ持ってしまっている感がある。一言で言えば、ズルイ。彼らはアンコールにも応え、ラストは“バースデイ”で、更なる音の深みへとダイブしていった。
洪水のような爆音の中に淡いメロディを浮かべた、英国のシューゲイザー。或いはジャズやエレクトロニック・ミュージックのマナーを用いて新しいバンド・アンサンブルを築いた、米国のシカゴを中心とするポスト・ロック・シーン。邦楽の音響/ポスト・ロックがそうした海外のサウンドに学んできたのは間違いのないところだろうが、今回の企画に出演した4組に共通して感じたのは、海外のサウンドに比べて「歌」を届けようとする意志や工夫が、さまざまな形で感じられたということだった。ポップ・ソングとして流通する音響/ポスト・ロック。もちろん思想そのものの違いということもあるし、音響/ポスト・ロックの流れを組んだポップ・ソングが海外に全く存在しないわけではないのだけれど、歌心に溢れた刺激的なサウンドがこの国で今後より大きな潮流となってゆくということは、とても興味深く、また素晴らしいことだ。この日の模様はSPACE SHOWER TVにて6/17(水)25:00〜26:00(初回放送)の枠でオンエアされるので、ぜひともチェックして頂きたい。(小池宏和)
wooderd chiarie
1.みなおどる
2.sputnika
3.Brazil
4.MOONLIGHT
5.アイのストーリー
6.幽霊たち
SPANK PAGE
1.koi
2.不器用な情景
3.らしさのありか
4.ame 〜rain song〜
5.呼吸
sleepy.ab
1.メリーゴーランド
2.メロディ
3.ドレミ
4.アクアリウム
5.ねむろ
People In The Box
1.レントゲン
2.新曲
3.泥の中の生活
4.完璧な庭
5.はじまりの国
6.ペーパートリップ
アンコール
7.バースデイ