グリーン・デイ @ 赤坂BLITZ

5月15日の、『21世紀のブレイクダウン』世界同時リリースを前後してキック・オフされた、グリーン・デイの「レコ発」ツアー。バンドのスケールからすれば法外なスモール・サイズで敢行されるそれは、各都市で気絶しそうなほどのプレミアムを起爆させながら、ついにこの夜、東京での実現を見た。雨の赤坂ブリッツは、なぜかそこだけすっぽりと、「雨のことなどまったく気になってないに違いない」千数百人の幸運なオーディエンスによって、文字通りスペシャルなエリアと化していた。

会場に足を踏み入れると、それはもうとっくに沸点を超えていた。ぎゅう詰めのフロアは、すでにこれから繰り広げられる一大パンク・スペクタクルの予行演習に余念がなかった。SEが終わるたびに沸き立つ歓声、そして、「グリーン・デイ!」のシュプレヒ・コール。誰もが、この夜がどれだけセレブレイトなのかを全身全霊でかみ締めていた。

連中が登場してから以降については…フル・テンションのバンドと、フル・テンションのオーディエンスの、気持ちのいいガチなコネクトが一秒たりともたわむことなく、120分間のボリュームを3分半くらいに感じさせるスピードで駆け抜けていった、という言葉以上に書く必要もないし、書けもしない。ビリー・ジョー・アームストロングが何度も観客をステージに引っ張り上げたことにはじまり、隙あらば号令されるコール&レスポンスが続き、リクエストを募り、声援にも答え、手を握り、もちろんマイク・ダーントも演奏中だろうが曲間だろうが下唇を尖らせ、トレ・クールはたぶん都合百回はスティックを放り投げては目をギョロつかせる、といった「約束」が、当然のように、淀みなく惜しみなく繰り広げられていったのだ。

演奏は、事前のライブから予想されたように、新作『21世紀のブレイクダウン』を本編に、その後は『アメリカン・イディオット』から『ドゥーキー』にいたるまで、途中、カジュアルなカバーもはさみながらのセット・リストだった(詳しくは、このサイト内のブログ「ロッキング・オン編集部日記」を参照ください)。この夜そこにいた誰もが強く感じたように、そして、そこにいられなかったすべてのひとがたぶんそう想ったように、グリーン・デイは自身が持てるものをすべてそこに置いていくいつもの覚悟でそこに立ち、しかも、笑顔でそれに献身していた。その姿勢は、明らかにバンドとオーディエンスとの距離を、執拗に無効化する行為だった。

さて、思うのは、これはいったいいかなる事態なのか、ということである。「パンク」の名の下に、もはや機能美とすら呼べるほど「動的」なビートとフックとメロディに磨き上げられた曲をいわば中心に、ステージにいる者もフロアにいる者もまるで区別なくひたすらなコネクトを展開するこのライブとは、やはりいったい何なのか。グリーン・デイの「パンク」がいかに特別で、それが今いかに優れた装置となったかについては、以前、ブログで書いた(このサイト内の宮嵜のブログ、「5月14日付 グリーン・デイとは大いなる誤解である」と「5月15日付 グリーン・デイはなぜ復活したのか」を参照くださるとうれしいです)。それは、1970年代末に誕生した「パンク」が、その初期においては、ロックそのものへの「批評」として起案されていたのとは違うかたちでグリーン・デイの「パンク」は設計され、ここに結実したということだった。彼らの「パンク」があらかじめ大衆的で、普遍的で、メッセージ性を持ち、つまりは啓蒙的であって、そのための装置として物語を(つまり、オペラ、を)用いた、ということだった。

しかし、この夜のライブは、グリーン・デイがそのような「送り手」側の献身のその先に、いったいどのような光景を欲しているのかを実証するものだった。それは、言い換えれば、そのような誰にでもあてはまる物語を、どこにでもいるわれわれオーディエンス自身の物語として実装させることだった。あのシンガロング、あの演出、すべてはその唯一のベクトルに包摂されるトライアルだった。誰もが思ったのはだから、こういうことだったのだ。ほかならぬこの自分自身が(ステージ上の彼ではなく)、この物語のこの配役を生きている――。

グリーン・デイの発明した「パンク・オペラ」はすでにして、ただ目の前で語り描かれる物語ではなくなっていたことに、胸を穿たれてしまった。その空間は、ステージ上の演者だけが歌い舞うオペラではなく、ほかならぬわれわれが叫び猛る、それはまるでミュージカルのようだったのだ。そして、なぜわれわれはそのように、叫び猛りたかったのかといえば、それは、長らく歌を奪われていた時代に生きていたからなのだと、そう思うのである。(宮嵜広司)

(第1部)
21st Cetury Breakdown
Know Your Enemy
East Jesus Nowhere
Before The Lobotommy
Last of The American Girls
Murder City
Viva La Gloria (Little Girl)
The Static Age
21 Guns
American Eulogy
See The Light

(第2部)
American Idiot
Jesus of Suburbia
Britkreig Bop
Saint Jimmy
Longview
Dominated Love Slave
J.A.R.
2,000 Lights Years Away
Geek Stink Breath
SHE
Basket Case
King For A Day
Stand By Me / Shout
Minority
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