COMEBACK MY DAUGHTERS×Ben Kweller @ 代官山UNIT

以前から愛聴し、インスパイアもされてきたCOMEBACK MY DAUGHTERSのことだ。今夜の共演は、まさしく夢にまで見たものと言っていいだろう。そう、主催イベント『Before You Come Home』に、アメリカのシンガー・ソングライター:Ben Kwellerを迎えてのツー・マンが実現! そもそもはギター・ボーカルの高本が、某音楽誌の企画でBen君と対談したことがきっかけとなったもので(「単なる口約束だったのに、本当に実現できてうれしい」と高本)、たくさんのお客さんが詰めかけたUNITは高揚した空気で満ち溢れている。

先手はBen君。颯爽とひとりステージに登場すると、フロアからは「フォーー!」という歓待の声が上がる。「コンバンワ! ドモドモドモドモッ!」と初っぱなから上機嫌なBen君は、アコースティック・ギターを抱えて“I Don't Know Why”からライブをキック・オフ。サビメロではオーディエンスがコーラスを担い、さっそく両者のコンビネーションはばっちりだ。「アリガット! いま日本をツアー中なんだけど、最初に名古屋に行って、それから京都でくるりの素晴らしいフェス(『京都音楽博覧会2009』)に出させてもらって、大阪にも行って、それから東京に来たんだ」とBen君。「じゃあ、ニューヨークからの友達を紹介するよ」と、スライド・ギターのリチャードを呼び込んで“On My Way”をプレイ。シンプルだけど心温まる情景が広がり、UNITがまるでメルローズの小さなバーような親密なムードに満たされていくのを感じる。Ben君のライブは個人的に初体験で、勝手に朴訥とした人柄とステージをイメージしてたんだけど、いやいや、Ben君めっちゃ陽気! お茶目なMC、激しいギター・カッティング、大きなステージ・アクションに誰しもが魅了される(カムバック曰く、実際すごく人懐っこくて天真爛漫なキャラだそう)。中盤には“Sawdust Man”、“Falling”をピアノで弾き語り。トラディショナルな側面を強めた最新作『Changing Horses』からはアッパーな“Fight”を披露し、場内を盛大なハンドクラップで包んだ。グッド・ソングスの数々はもちろん、彼の全身から溢れ出る人間的なパワーも爽快で、ますますBen君に好感を抱かずにはいられなかった50分だった。

対するカムバックは、「Ben Kwellerの後なので、いつもとちょっと違う感じで、めちゃくちゃ影響された感じでやろうと思います(笑)」(高本)と、今夜はアコースティック・セットで応戦。いつもはセンターの高本が左サイドに位置し、メンバーが半円状にポジショニング。“Wall flower”からUNITにハートフルなメロディを響かせていく。シンプルなアンサンブルがメロディ・ラインの機微をより際立たせていて、その旋律に改めてうっとりしてしまう。SCAFULL KINGのカバー“IRISH FARM”ではオーディエンスのハンド・クラップが一層大きなものとなり、場内の一体感はみるみる上昇。10月に行われる盟友・ASPARAGUS主催ツアー「BKTS」のライブ会場限定コンピに収録の新曲もいちはやくパフォームされ(ボイス・エフェクトを用いたチャーミングな一曲!)、「アコースティック・ライブ、楽しいです!」とメンバーもこの貴重なステージを思いっきり楽しんでいるようだ。後半の“Hot Chinkee”からはいつものパーティ・モードに一気にシフトし、最後は「今日来てくれたみなさんに捧げます」と“Bored Rigid”で――歌い出しで一度ミスちゃったけど(苦笑)――感動的に本編フィニッシュ。アンコールも見所満載で、まずはCHUN2、ユースケ、高本の3人で“You and only you”をしっとりと届け、続けて5人全員でBen君の代表曲“Nothing Happening”のカバーを披露。ワン・コーラス終えたところで「レディース&ジェントルメンーー」と高本が告げれば、次の瞬間、勢いよくBen君が再登場! カムバックとBen君の貴重なセッションにUNITは大フィーバーとなった(前日の夜に一緒にスタジオ入って練習したそうです)。さらにもう一曲、以前Ben君がゲームのサントラに提供していた“Lollipop”(有名な「♪ロリポップ、ロリポップ、オーローリロリロリ」ってやつです)を6人でプレイ。誰もが知るスウィートなメロディをシンガロングして、ライブはこの上ないハッピーなムードのなか幕を閉じたのだった。時流に流されないインディペンデントなスタンスで、時代を問わない普遍的なメロディを紡ぎ続ける両者の国境を超えた交歓に酔いしれた、心温まる一夜だった。いやぁ、楽しかった!(奥村明裕)
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