「今日は日本では決して出ることのないオーロラをここ東京お台場でみんなで浮かべてみたいという思いです。今、すさまじい熱気がオーロラとなって浮かんでいます!」
フロアから沸き立つものすごい熱気が色鮮やかなライトに染められて、オーロラのように浮かび上がるくらいZepp Tokyoを熱くさせたNICO Touches the Walls。11月25日(いいニコの日)に発売された2ndフルアルバム『オーロラ』を携えての全国ツアー『TOUR2009~2010「&Auroras」』が、12月23日(水)Zepp Osakaを皮切りについにスタートした。今日はその2日目、Zepp Tokyo公演。ワンマンライブとしては2009年末最後を飾る公演であり、この1年の充実っぷりをギュッと詰め込んだライブだ。
彼らが最初にZepp Tokyoのステージに立ったのは、バンドを結成してまもなく出演した『TEEN'S MUSIC FESTIVAL 2004』の関東大会だったそう。それから5年が経って、今こうして満員のオーディエンスを迎えてワンマンライブができることに、メンバー全員が感無量の様子だった。「東京では初めてやる曲もたくさんあります。みなさんは今日我々のそんな曲たちのヴァージンを奪いに来ています。この日まで鋼鉄の処女を守り抜いてきた曲たちの幕が開かれるということで・・・」とちょっとばかり下の方へ走って会場の笑いを誘う光村。ニュー・アルバムの楽曲を中心に序盤から激しく飛ばしていき、天高く突き抜けるようなエネルギーをこれでもかと言わんばかりに放出していった。
NICOのライブは観る度にスケールが大きくなっていて本当に驚かされる。バンドとしての成長ぶりはとどまるところを知らないし、楽曲がどんどんポップに開かれていくにもかかわらず、ロックバンドとしてのエッジは全く失われていない。むしろ、どんどん鋭さを増しているくらいだ。
ニュー・アルバム『オーロラ』の楽曲と絶妙なバランスで1stからの楽曲やそれ以前の楽曲が織り交ぜられたセットリストだったのだが、新曲の勢いが過去の楽曲にさらに光と輝きを与えてそのパワーを倍増させていた。特に“そのTAXI,160km/h”“泥んこドビー”で見せたバンドの凄まじい威力といったら、それはもう半端なかった。対馬の安定感のある重厚なビートに絡み合うように坂倉がうねるようなベースを乗せていき、古村と光村は向き合いながら激しくギターをかき鳴らし、圧倒のバンドアンサンブルでフロアを制圧していった。
時に優しく包み込んでみたり、時に闇を照らしてその裏側を暴いてみたり、逃げ道を作ることなく正面から自分たちの音楽と向き合ってきたNICOだから奏でられるロック。ハンドクラップとか大合唱とか会場の一体感もすごいけど、彼らのライブを観ていて感じる、この上もない爽快感に満ち満ちた気持ちは、きっとそれだけではない。正攻法で切り込みながら、自分たちの色をちゃんと出して、一切嘘がない純真無垢なサウンドを届けてくれるからこんなにも気持ちがいいのだ。こんな器用なバランス感覚を持ったバンド、なかなかいないとライブを観ていて痛感させられる。
バンドとしてのシリアスな一面を観せながらアンコールでは、
光村:「終始、俺のまぶたにはオーロラが見えてるね」
対馬:「泣いてるの?」
光村:「バカ、泣いてないよ!」
なんていうやりとりもありつつ・・・・・・
光村:「あなたとコンビニ?」
観客:「ファミリーマート!」
という去年のライブでもやっていたCMソング・コール&レスポンスという遊び心満点のコミュニケーションをしっかり盛り込んでしまうのもNICOのすごいところ。最後には来年3月12日に決まった武道館公演への思いを語ってくれた。初めて出したCD『Walls Is Beginning』でNICO Touches the Wallsが始まり、それから約4年。『オーロラ』というアルバムに辿り着いたこれまでの思いを全て詰め込んだ夜にしたいという思いからライブ・タイトルを『Walls Is Auroras』と名づけたという。
ライブが終わった後、会場には本当に眩しいくらいの光が満ち溢れていた。光を追い求めていくバンドから、自らが光を発信していくことができるバンドになったのだなと思う。年明けの各地でのツアーを終えた後、その集大成となる武道館公演で一体どんな「オーロラ」をみせてくれるのか、本当に今から楽しみだ。(阿部英理子)
NICO Touches the Walls @ Zepp Tokyo
2009.12.27