JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム

JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム - THE BAWDIESTHE BAWDIES
JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム - plentyplenty
JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム - Base Ball BearBase Ball Bear
JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編― @ 堂島リバーフォーラム - エレファントカシマシエレファントカシマシ
4月11日(日)、JAPAN CIRCUIT vol.48 WEST―山崎死闘編―、開催! ということで、大阪は堂島リバーフォーラムに、続々とロックファンが集結した。チケットはもちろんソールドアウト。なにせ、出演アーティストはASIAN KUNG-FU GENERATION、エレファントカシマシ、plenty、Base Ball Bear、THE BAWDIESという堂々たる顔ぶれだ。世代も音楽性も異なるが、今の日本の音楽シーンにおける超重要アーティスト5組を一晩で観れる機会とあって、開演を待つ会場はすでに熱気に満ちていた。そんな中、まず登場したのは本公演の総合プロデューサーである山崎洋一郎! 前説で、この「山崎死闘編」にこめた想いを語った。
そもそも、なぜ今回のJAPAN CIRCUITは大阪なのか。何が「山崎死闘編」なのか。それは山崎が、公式HPや『ROCKIN’ON JAPAN』誌面に寄せた声明文を見てもらえればよく分かると思う。この「山崎死闘編」は、過去3度開催された大阪でのカウントダウン・ジャパンを、昨年末は開催できなかった、という悔しい経験から出発している。しかしそれは、大阪での展開を諦めたわけでも撤退したつもりでもなく、これからも新たな戦略を練り直し何らかの形で大阪での展開を続けていく。その姿勢を示すのが、この「山崎死闘編」なのだ。「大阪のロックシーンに、これからも何かしていきたい」。そんな強い想いを語ったのち、いよいよ出演アーティストを紹介! 出演順が遅いほうからカウントアップ方式で、各アーティストの紹介と、ここに集ってくれた事への感謝を述べた。エレカシ→ベボベ→plenty→THE BAWDIESと来て、「ということは、なんとすごいバンドからはじまることになります!」という言葉に、早くも歓声が上がる。

そう、呼び込まれたトップバッターは、ASIAN KUNG-FU GENERATION!
リズムのシーケンスが流れ出し、会場から早速手拍子が起こると、舞台そでからメンバー4人が登場。そしてリズムの上にギターが、さらに後藤正文(Vo/G)のラップが乗る。昨年12月にリリースされたシングル曲、“新世紀のラブソング”だ。あまりにもすんなりと自然で、贅沢なスタートに、オーディエンスも心地よさそうに体を揺らしている。サビに向けてリズムが強まり、≪恵みの雨だ/僕たちの新世紀≫というの歌声がじわじわと会場の温度を高めていく。
そしてギターフレーズが鳴り、後藤が「エーイ!」と叫んで始まったのは“センスレス”。小気味良いビートが刻まれていく。さらに3曲目“アンダースタンド”では歌いだしから「待ってました!」と言わんばかりの歓声が起こり、ボルテージは一気に急上昇! 

「どうもご……こんばんは! ASIAN KUNG-FU GENERATIONです!」と一発目のMCで後藤がいきなり噛み、会場を笑わせる場面も。しかし続く「今日は楽しんで帰ってくださいね。考えないで、感じて帰ってくださいね」という言葉通り、その後も全身の全神経を刺激するスリリングな展開を見せつける。

その中でも特に大きな興奮と驚きをもってむかえられたのは、6月にリリースされるというアルバムのタイトル曲でもある“マジックディスク”。山田貴洋(B)のベースの重低音がぐんぐん腹に打ち込まれるような攻撃的な曲だ。曲中、後藤の「ウオ―――!!」という叫びも響き渡り、その異様なまでの迫力にアジカンのニューモードを見た。それでもやはり、サビの美しいメロディはすさまじい求心力をもっているのがすごい。
ラストは4月3日にシングル・リリースされたばかりの新曲“ソラニン”。青く疾走感があり、その奥にきらめきを秘めたアジカンの新たな強力なアンセムだ。
アジカンの今年初のライブとなったこの日。次のアルバムへ向けた新たな試みも、人気曲の円熟味を帯びた表現も、そして今のアジカンが生み出す新鮮な青さもすべて発揮された、とても貴重なライブだった。


続いて、飛び上がったありピースサインを見せたりと、威勢良くステージに現れたのは、THE BAWDIES!
1曲目“IT'S TOO LATE”から、ROY(Vo/B)の皺枯れたソウル・ボーカルが炸裂! 「アアアアー」と歌うサビ部分、そしてその後のブレイクからまた一斉に全パートの音がぶっ放される瞬間に痺れる。続いて“EMOTION POTION”。時につんのめりながらも、この会場で誰よりも俺が楽しんでるぜ! とでも言いたげなほど嬉々とした表情でプレイするJIM(G/Cho)、これでもかというほどに腰にクる最高のリズムをたたき出すMARCY(Dr/Cho)、そして堂々たる物腰で演奏していたかと思いきや、客席の前まで駆け出しギターソロで会場にさらに火をつけるTAXMAN(G/Vo)と、個性はバラバラながらも絶妙なコンビネーションで最高のロックンロールを叩きつける。
さらに4月21日にリリースされるニューアルバム『THERE'S NO TURNING BACK 』より、超ゴキゲンなナンバー“I'M A LOVE MAN”を投下! 「愛は足りましたか!? その愛を育みますか!?」というROYのMCをはさみ、“KEEP YOU HAPPY”へなだれ込む。さらにシングル・リリースされた“HOT DOG”でも客席を大いに沸かせ、今、一番新しいTHE BAWDIESのモードを惜しげもなく披露。圧巻としかいいようがないロックンロールパーティーだ。
モッズスーツを着こなし、自分たちの愛するルーツミュージックをこの21世紀の日本で爆発させるTHE BAWDIESは、何かとその「スタイル」が注目されてきた。しかし次のアルバムではルーツミュージックへの愛はもちろん持ち続けながらも、よりメンバーそれぞれが持つ個性が楽曲やプレイにダイレクトに出ていると思う。もはやTHE BAWDIES以外の何物でもない音楽が鳴っていた。

そしてラストは“YOU GOTTA DANCE”! まだまだパーティーしたりないと言わんばかりに強烈なグルーヴで会場を揺らす。ROYがあおり、サビではオーディエンス全員をジャンプさせたりと、強引なまでに楽曲の中に引きずり込むパフォーマンスは本当に爽快だ。ロックンロールの最高の楽しさを体現する4人。最後にはそろって客席に向けて一礼し、TAXMANは「またツアーであいましょう! ワッショーイ!」と叫んでステージを後にした。最後の最後まで、熱くて真摯で気持ちがいいバンドだ。


そして、3番手にはplentyが登場!
この日出演する5バンドの中で最も若く、多くのオーディエンスにとっては最も未知数に違いない。先ほどの沸騰状態から一転、水を打ったような静けさが会場を包み込む。一音たりとも聴き逃すまいと固唾を飲んで見守るような緊張感のなか、まず演奏されたのは“明日から王様”。4月21日にリリースを控えたセカンド・アルバム『理想的なボクの世界』の1曲目を飾る曲だ。≪泣いてよ。泣いてよ。僕のためにさ。≫というフレーズが、静かに、それでいて恐ろしいほどの切迫感をもって響き渡る。少年のような、さらに言えばまるで天使のような江沼郁弥(Vo/G)の歌声は、透明感があって凛とした強さがある。そして、赤ん坊を目の前にしたとき、そのあまりの純粋無垢さに抱き上げることを忘れて思わず立ちすくんでしまうような、それくらい簡単に触れることができない純な美しさがある。
とはいえ、離れた場所からただ彼らの音楽を見守っていられるのかというとそれは不可能だ。彼らの音楽が差し伸べる純粋無垢な手は、否応なしに聴き手の心に触れるように迫ってくる。続く“後悔”も、胸を打つメロディーだけでなく、リズムがものすごく逞しく力強いのが印象的だった。さらにギターのイントロから始まった “少年”では、≪こわくて。こわくてさ≫と何の飾り毛もない、まっさらな言葉がメロディに乗って放たれ、小刻みなギターリフと共に空気を震わす。

そんな緊張感のなか、「……はじめまして。plentyっていいます」という江沼のたどたどしいMCに、安堵のような温かな笑いが起こる。曲においてもそうだが、この世の不条理やぬるさや歪みを容赦なく射抜く鋭さと、まるで子供のような無防備さの共存が、このバンドに不思議なバランスを生み出していると改めて思った。

そしてこの日のハイライトは“枠”。こちらも『理想的なボクの世界』からの楽曲だ。疾走感あふれるイントロ、そして≪もったいぶってどうすんの? 今しかないよ≫という、ハッとさせられる歌で幕を開ける。世の中の人々がとらわれているつまらない枠や、目の前に張り付いている淀んだくもり硝子を打ち砕き、見ようとしていなかった真実を暴き出そうとするplentyの圧倒的な正しさは、とても眩しかった。

4番手はBase Ball Bear! 
冒頭、“Stairway Gnenration”で一気に会場に上昇気流を巻き起こし、フロアからたくさんの拳が突き上げられる。この日のメンツの中ではキャリアは中堅とも言えるベボベ。楽しく盛り上げるはもちろん、じっくりと「聴かせる」ということも忘れない抜群の安定感を見せた。
小出祐介(Vo/G) の「行くぞー!」という叫び声と共に始まったのは、ダンサブルなナンバー“LOVE MATHEMATICS”。甘酸っぱさを感じさせるギターフレーズ、踊らずにはいられないグル―ヴを生みだすドラム。そして関根史織(B/Cho)は客席の目の前まで飛び出し、片膝をつくポーズで力強いプレイを見せたり、リズミカルなコーラスワークを聴きかせたりと活き活きと動き回っていた。 

「本日は山崎死闘編にお越しいただきありがとうございます。Base Ball Bearです。」という感謝と挨拶を述べ、さらに堀之内大介(Dr)のウッドペッカーがプリントされたTシャツをおちょくったりと、小出のMCも好調だ。

そして堀之内のドラムが生み出す心地よいビートから、“LOVE LETTER FROM HEART BEAT”が始まると、客席から自然と手拍子が沸き起こる。穏やかな序盤から徐々にヒートアップし、サビではメロディがはじけるようなまばゆさを放ち、1曲のなかでも様々な要素をみせる。本当に、表情豊かなバンドだ。“ホワイトワイライト ”は比較的スローテンポでじっくり聴かせる曲だが、ライブだとベボベのロックバンドとしての充実ぶりがとても顕著に感じられる。穏やかなメロディーラインを支える、どっしりと大きなリズム、彩りを与えるギターフレーズが効いている。

そして、「僕らがずっと待っていた、また新しい夏がやってきます」という小出のMCのあとに鳴らされたのは、“BREEEEZE GIRL”! 裸足で海岸を走り抜けるような解放感と疾走感が気持ちいい。その勢いのまま、“CRAZY FOR YOUの季節”、そして“ELECTRIC SUMMER”で大団円。ポップとロックの垣根を無効化しながら、青春のきらめきをまとって驀進していくベボベの真骨頂ともいえる痛快なライブだった。


そして、いよいよ最終組。「イエー!エビバデー!」という宮本浩次の雄たけびと共に、エレファントカシマシの登場だ!
1曲目は“Sky is blue”。この場を祝福するかのように高々と天を指さす宮本の姿が眩しい。続いて石森敏行のギターがうなり始まったのは“ファイティングマン”! ハンドマイクを片手に、ステージを縦横無尽に動き回り、お尻もペンペンと叩いて見せる宮本は絶好調で、血を沸き立たせるような歌声が早くも会場中を圧倒する。

MCでは開口一番、「みんな元気か!? メシも食ってねえのに。もう一息だぞ!」と、宮本が脱ぎかけの上着をブンブンふりまわしながら、観客をあおっていた。
そして “今はここが真ん中さ!”でエレカシのポジティブなエネルギーが爆発! ≪純なエモーション≫≪いわば心はいつも燃えてる炎さ≫といった熱い言葉が有無を言わせぬパワーで会場の温度をぐんぐん上げていく。
そして“悲しみの果て”、哀愁と激情入り混じる≪ジョニーの彷徨≫と続き、「27歳くらいの時に思いをこめて作ってた曲で。嬉しいときは肩怒らせていこうぜって」と宮本がアコスティックギターを手に弾き語りを始めたのは“涙”。嬉しくも驚いた意外な選曲だった。

そして、「一番新しい曲やります」と紹介されたのは“幸せよ、この指にとまれ”。5月12日にシングル・リリースが決まっている新曲だ。力強いリズムに温かみのあるギターフレーズが印象的。「雨のち晴れ」という言葉が、今までにない新鮮な響きをたたえてすっと耳に飛び込んでくる。光を引き寄せるような、眩しい名曲だ。
「そろそろメシの時間だ! その前にもう1曲聴け!」と宮本の叫びが会場に響き、あの破壊的なフレーズが鳴り出す。“ガストロンジャー”だ。まくしたてるようなアジテーション、そして「オーオーオーオー!」の咆哮と共に、フロア全体で拳が突き上げられた光景はとても美しかった。「戦いと反抗を続けようぜエビバデー!」という宮本の言葉ほど、この日を締めくくるのに相応しいものはないだろう。

そしてアンコールは“今宵の月のように”。柔らかい照明が観客席まで照らし、この不朽のアンセムが会場をエンディングに相応しい温かな空気で満たしていく。と、思ったのも束の間、続いて投下されたのはなんと“待つ男”! 本当に圧巻としかいいようのない凄まじいパフォーマンスだった。全身から絞り出すような宮本の歌声も、ガシャン!と世界を簡単にひっくり返しそうなほどキレ味鋭く獰猛な演奏には思わず鳥肌が立つ。≪だれも俺には近寄るな≫という叫びは、終演後もしばらく脳裏に焼き付いて離れないくらい。
この日、日本のロックの爆心地は間違いなくこの大阪だ。そう言い切れるほど絶対的で、強烈なラストだった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION、THE BAWDIES、plenty、Base Ball Bear、エレファントカシマシ。それぞれのアーティストが、それぞれのやり方で、ロックの面白さ、楽しさ、切実さ、美しさを体現してくれた。この5組の熱演はもちろん、オーディエンスの熱量、スタッフの熱意により、このJAPAN CIRCUIT vol.48 WEST ―山崎死闘編―は、単なる一晩限りのイベント以上の意義深いものになった。ロックの現在に強い手ごたえを感じた一日だった。(文=福島夏子/撮影=TEPPEI)
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