ダリル・ホール&ジョン・オーツ @ 日本武道館

ダリル・ホール&ジョン・オーツ @ 日本武道館
ダリル・ホール&ジョン・オーツ @ 日本武道館 - 写真は2月21日(月)グランキューブ大阪公演のもの pics by 田浦薫写真は2月21日(月)グランキューブ大阪公演のもの pics by 田浦薫
6年ぶりの来日ツアー、大阪2日、名古屋1日を回ってきて、この東京は日本武道館、あと2日後・28日の追加公演・国際フォーラム、というスケジュール。で、その国際フォーラムがまだ残っていますが、以下、一部、セットリストなどに触れます。これから観る、まだセットリストを知りたくない、という方は、ご注意願います。

さて。ホール&オーツ、1972年のデビュー以来、ちゃんと活動を休止していたのは、実は1991年から1995年の4年間だけで、それ以降はツアー&リリースともコンスタントに活動を続けている。いるがやはり、来日公演を行う、となると期待するのは、大ブレイクしていたかつての時期の曲たちであるわけだが、その大ブレイク時期、ホール&オーツの場合、2回ある。1回目は、“Sara Smile”や“She’s Gone”、“Rich Girl”などがヒットした1970年代中盤。2回目は、出す曲出す曲もうどっかんどっかん売れまくった、1980年代の頭から中旬にかけて。アルバムでいうと、『PRIVATE EYES』『H2O』『BIG BAM BOOM』あたりです。日本でも本格的に売れたのはこの時期であり、となると、期待するのも、どうしたってこの時期の曲になるわけです。

とりあえず、私的に、これだけは必ずやってほしい、と強く願っていた曲は、以下でした。
“Kiss On My List”
“Private Eyes”
“I Can’t Go For That”
“Maneater”
“Out Of Touch”
この5曲。“Sara Smile”や“Everytime You Go Away”(のちにポール・ヤングがカヴァーしてヒットしたあれです)、“You Make My Dreams”、“Adult Education”、“Method Of Modern Love”あたりは、やってくれればそりゃあうれしいけど、まあ、なくてもがまんします(※結果、やってくれた曲もありますが。“Method Of Modern Love”とか)。とにかくその5曲は。それだけは。どうかお願い。
で、結果。見事に全部やってくれました。しかも、それぞれ、「ここでくるか! ……いや、そう、そりゃあここでくるよね」と言いたくなるような、すんごくいいポイントで。まず、1曲目からいきなり“Maneater”。3曲目で“Out Of Touch”。本編ラストに“I Can’t Go For That”。そして2度目のアンコールを、“Kiss On My List”“Private Eyes”の2連発でしめくくる、という。どうでしょう。最っ高でしょう、それは。

ないことはないけど、「素朴」って言っていいくらい、限りなくシンプルな照明や装飾などの演出全体。ボーカルとギター(10曲目からラストまではボーカルとキーボード)のダリル・ホールと、ギターとコーラス(7曲目はツイン・ボーカルをとった)のジョン・オーツ以外に、ギター、ベース、ドラム、パーカッション、キーボード、サックス&キーボード、以上、という、この人たちの音楽性上、必要最小限なバンド編成。キーボードを弾く3人とも、シンセが1台だけスタンドにのっかっていて、それを立って弾く、というのもいい、80年代っぽくて。で、その総勢8名が、渋谷クラブクアトロ、はちょっと無理かもしれないが、リキッドルームだったら余裕でステージ上に収まりそうなくらい、ステージまんなかにギュッと固まった、そのたたずまい。で、その、もんのすごく安定した、よけいなことはしない、そのさまがほんとにもうすばらしい、歌そのものと、演奏そのもの。ちょっとアレンジ変えたりはあるけど大きく崩したりはせず、基本的にオリジナルに忠実にやってくれる。一番変えてたのは、本編ラストにやった“I Can’t Go For That”かな。あのジャジーな感じじゃなくて、もうちょいアッパーにリアレンジされていて、後半はサックス等のソロ合戦でインスト曲みたいになりました。それも、とてもよかった。

というわけで。全体に、もう、文句のつけようのない、ファンのための、ファンの身になった、ファンはただひたすらうれしい、ほんとにすばらしい時間でした。本編が11曲で、アンコール2回で2曲ずつ、なので計15曲。始まったの、17時ちょっとすぎで、終わったの18:40、という、意外なくらいの短さを除けば。“I Can’t Go For That”が終わって、ダリルが「サンキュー!」って言って、一同がステージを去った時、「えっこれで終わり? このソロ合戦、中盤の盛り上がりかと思ってた! ……あ、2部構成で、ここで休憩ってことなの? こないだのスティングみたいに」などと、本気でうろたえてしまいました。
でも、帰り道に、「……でも、聴きたい曲みんなやってくれたし、演奏も歌もすばらしかったし、片時たりともダレなかったし、これでいいのかも。むしろ、3時間くらいダラダラやられたら、それはそれでつらかったかも」とも思いました。

毎週『ベストヒットUSA』をワクワクしながら観て、FM雑誌(というものがあったのです、当時。知らない方は各自調査)を読み漁っては『サウンドストリート』なんかのFMラジオ番組を一所懸命エアチェック(これもわかんないだろうな。各自調査)していた中学生の自分が、ほかのアーティストでなくホール&オーツを聴くたびに、強く強く感じていたことを、観ながらずっと思い出していた。いや、「思い出した」んじゃないか。その「感じ」が蘇って、1曲目からラストまで、自分を襲いっぱなしだった、と言った方が正しいです。どういう「感じ」か、というと、「なんていい曲を書く人たちなんだろう。なんていい歌を歌う人たちなんだろう」という感じです。
2度目のアンコールの2曲をやる前に、長年にわたって何度も日本に呼んでくれている、そして今回も呼んでくれたウドーに感謝の意を述べ、ウドーのボスをステージに呼び込んで水色のストラトキャスターをプレゼントしたダリル・ホールは、そのあと前述の2曲を歌い終えたあと、「See you next time!」と叫び、この日初めてサングラスをとってあいさつをした。
はい。ぜひ。また来ます。全力で拍手しながら、ほんと、そう思いました。(兵庫慎司)

<セットリスト>
1. MANEATER
2. FAMILY MAN
3. OUT OF TOUCH
4. METHOD OF MODERN LOVE
5. SAY IT ISN'T SO
6. IT'S A LAUGH
7. LAS VEGAS TURNAROUND
8. SHE'S GONE
9. SARA SMILE
10.DO WHAT YOU WANT
11.I CAN'T GO FOR THAT(NO CAN DO)

<アンコール>
12.RICH GIRL
13.YOU MAKE MY DREAMS

14.KISS ON MY LIST
15.PRIVATE EYES
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