LOUD PARK 11 @ さいたまスーパーアリーナ

さいたまスーパーアリーナ狭しと響き渡るANIMETAL USAの超重金属型“マジンガーZ”の轟音とともに、ステージには突如ももいろクローバーZが登場してまさかの「Z共演」が実現!……と、6回目を数える歴史の中でもずば抜けて異色と言える幕開けを迎えた、ヘヴィ・メタル/ラウド・ロック系フェス『LOUD PARK 11』。正統派HM/HRファンもここぞとばかりに集結するロックの響宴だけに、この演出が吉と出るか凶と出るかはある意味賭けではあったと思うが、元LOUDNESSのマイク・ヴェッセーラ(Vo)を中心に「光より速いソロ」ことクリス・インペリテリ(G)など強者4人衆が結集した珠玉の爆裂アンサンブルは、間違いなく日本一メタル濃度の高いこの空間をあっさり支配していたし、Z共演も最高の打ち上げ花火として響いていた。“愛をとりもどせ!!”(『北斗の拳』)“残酷な天使のテーゼ”(『新世紀エヴァンゲリオン』)など名曲乱れ打ちのラストは、外の雨空を吹っ飛ばすかのように“宇宙戦艦ヤマト”で場内一丸の大合唱! ちなみに、ももクロちゃんたちは本当に“マジンガーZ”だけのために来たらしい(しかも“おれはグレートマジンガー”へと流れる“マジンガー・メドレー”の一部だったので、ステージには3分もいなかったはず)。

06年に幕張メッセで産声を上げ、年によって幕張だったりさいたまスーパーアリーナだったりと場所を移しながら2日間にわたって開催されてきた『LOUD PARK』だが、例年までと大きく違ったのは2点。今年は初の「1日のみの開催」だったこと。そして、場内のレイアウト。「アリーナ内に設けられた2つの巨大ステージ=[BIG ROCK STAGE][ULTIMATE STAGE]で交互にアクトが展開されていく」という開催方式は昨年までと同様だが、これまでと大きく違うのは、昨年まで左右に隣り合っていた2つのステージが、アリーナの両サイドへセパレートされたこと(1つのアクトが終わるたびに、これまでアリーナ「最前列」だったところが「最後列」になる形)。で、ステージ~アリーナ~ステージを両側から挟み込むようにスタンド席が広がっている。エキサイトしたい人はアリーナで、ゆっくり観たい人はスタンドで座って、という自由度の高さも嬉しい。

そして。この日は何と言っても、[BIG ROCK STAGE]のラストに登場した重鎮・WHITESNAKE! ダグ・アルドリッチ&レブ・ビーチのWギターの音像を貫いて高らかに“Best Years”“Give Me All Your Love”を歌い上げ、「コンバンワ、トキオ! コンバンワ、『LOUD PARK』!」と叫び上げるデイヴィッド・カヴァデール御大の声の、60代に突入したとは思えない堂々の迫力! それこそ『Burn』期のディープ・パープル以降、大英帝国のハード・ロック/ヘヴィ・メタルの生き証人として君臨し続けてきた彼が、多彩なメンバーの変遷を経ながらもWHITESNAKEという旗の下で追求してきた、いわゆるスラッシュ系とはまったく別種な不動のストイシズムが、2011年の今、超弩級のスケールで炸裂していた。今年3月にリリースされた新作『Forevermore』から披露された“Steal Your Heart Away”のタフな威力も、“Forevermore”の全員コーラスから雄大なディストーションの地平へ飛び出す瞬間の快感も、とにかく桁違い。最後の“Still Of The Night”でばりばりと空気を震わせたシャウトには、本気で空が割れるんじゃないかってくらいの凄味が備わっていた。

で。そのWHITESNAKEが終わり、いよいよ[ULTIMATE STAGE]のトリを飾る正真正銘ヘッド・ライナー=LIMP BIZKITが!……というタイミングで、ご年配のHM/HRファンの方々が「WHITESNAKEを観終わった安心感」と「かつてのラップ・メタル/ミクスチャーの象徴=リンプへの違和感」から会場を後にしてしまうのも、事前にタイムテーブルを見た時に想像した通りだった。が、この日のリンプが最後に見せた熱狂はすごかった。かつての「世界一の嫌われ者」の称号すら栄冠として背負っているかのように、新作『Gold Cobra』の“Why Try”で勢いよくスタートを切り“Hot Dog”“My Generation”とオーディエンスに不敵に挑みかかり熱狂を生み出していくフレッド・ダースト。そして、バットマンになり損ねた悪魔のような白と黒の禍々しいペイントに身を包んだウェス・ボーランドの、およそこの世の音とは思えない切れ味の鮮烈なハイブリッド・ギター・サウンド! ヘッドライナーの重責などどこ吹く風とばかりに、途中でウェスがNirvana“Smells Like Teen Spirit”を弾き始めたのをきっかけにフレッドも歌い始め「……ストップ、ストップ・イット! 何やってんだ? ファック!」とノリツッコミ風にウェスに絡んだり、さらにウェスがAC/DC“Back In Black”で特大のボケをかまし……といった掛け合いを展開してみせる悪ふざけも、ウェス正式復帰後初アルバム今のリンプの充実感の裏返しだろう。

[ULTIMATE STAGE]のトリ前に登場したARCH ENEMYもすごかった。アンジェラ嬢のデス声とマイケル(SPIRITUAL BEGGARSでの出演も含めこれまでLOUD PARK皆勤賞!)らの轟音とが黒を黒で塗り潰し合うように響く暗黒の果てに立ち昇る、救いそのもののような美麗メロディ。“Yesterday Is Dead And Gone”“Ravenous”から“Nemesis”に至るまで、そのソリッドの極みのような音で広大な宇宙の闇に強靭な座標軸を描いていくような、途方もないアクト。何度も何度もどでかいサークルを描いていたアリーナが、メンバーが退場した瞬間、WHITESNAKEの出番を前にして「これで今日完全終演?」のような虚脱感に包まれていたことからも、そのエネルギーのほどが窺えた。

質実剛健の極みのような黄金のリフで場内を震撼させたUSメタルコアの精鋭=AUGUST BURNS RED。黄色と黒の「取扱注意」風なストライプに身を包みつつ、めくるめくLAクリスチャン・メタルのポジティビティを鳴らしてみせた古豪・STRYPER。男女トリプル・ヴォーカル・スタイルから繰り出すエネルギッシュなメロディック・デス・メタルでアリーナの狂騒とがっつり共鳴し合ってみせたスウェーデン発の6人組=AMARANTHE。スイス・ハード・ロックの雄・KROKUSはギタリストのフェルナンドが病気で来日できなかったため、かつてのギタリスト=マンディ・メイヤーがサポートを務めていたし、そのマンディの本来のバンドでありキスク&カイの元HELLOWEENコンビを擁するUNISONICは“A Little Time”やら“I Want Out”やらHELLOWEENナンバーも披露して会場をすっかり『守護神伝』状態にしてみせていた。06年の第1回『LOUD PARK』にも出演していた日本のメタル古豪・UNITEDは、09年から新たに加わったクウェートの巨人=KEN-SHIN(Vo)が「日本語しゃべれると思わなかったでしょ!」と流暢なMCででっかく笑いを誘いながら、その激速&激烈なサウンドのエッジ感でもってフロアに激しい渦巻きを描いてみせていた。メタルコアの真髄とも言うべきディストーションと鋭利なビートで雨雲どころか天をも射抜くようなアクトを見せたのはTRIVIUM! ひとつひとつの音を貪るようなアリーナの狂騒感にさえ、どこか儀式のような荘厳さを漂わせる強烈な世界観は彼らならではのものだ。

そして、[BIG ROCK STAGE]のトリ前に登場した復活・THE DARKNESS! 一瞬誰だかわからないくらい立派な髭をたくわえてこそいたものの、5年間の空白などなかったかのように相変わらずギャランドゥ寸前までぱっくり割れたコスチュームでギターを弾き倒しファルセットで聴く者の理性のタガを外しまくるジャスティン。デビュー当初から「ロック懐古主義だ」という批判を受けながらも、それを片っ端からなぎ倒しながら70年代ロックの核心ど真ん中のようなハード・ロックを鳴らして世界を席巻していた彼ら。それが2011年の今、その音もギターもパフォーマンスも「異端」「時代錯誤」どころか、紛れもない「ハード・ロックの王道そのもの」として痛快に鳴っていた。彼らはノスタルジックだったわけでもアナクロだったわけでもなく「新しすぎた」のだ、ということを改めて思いながら彼らのステージを観て、なんだか妙に嬉しくなってしまった。

リンプのアクトが終わって外に出ると、朝の激しい雨はすっかり上がっていた。「2日目」がないのはやや寂しいが、17日東京・新木場スタジオコースト/18日大阪・なんばHatchではLIMP BIZKITの単独公演もあるし、17日からはWHITESNAKEの単独ジャパン・ツアーもスタートする。轟音の秋はまだまだ終わらない。(高橋智樹)
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