11月23日にソロ初となるフルアルバム『école de romantisme』をリリースし、12月から始まった全国ツアー『中田裕二 TOUR'11-'12 "tour de romantisme"』の4公演目であり、年内ラストとなる今日のワンマンライヴで中田裕二は2011年を振り返りながら語った。思えば昨年の今ごろは椿屋四重奏としての全国ツアーを回り、大晦日には彼らの結成の地である仙台(Zepp Sendai)にてカウントダウンライヴを行っていた。私は個人的にこのZepp Sendaiでの事実上ラストライヴとなったカウントダウンライヴを観に行ったのだが、その時はまさか中田裕二にとっての2011年がこういう年になることなど全く想像もつかなかった。バンド解散後、正直こんなに早く彼のソロ活動が見られると思わなかったし、ましてやフルアルバムやライヴツアーまで堪能できるとは思ってもみなかったので、2011年はファンにとっても本人にとっても本当に激動の1年だったのではないかなと思う。
そんな年内最後を飾るワンマンの会場は昨年オープンした日本橋三井ホール。中田が日本橋を散歩していたときに偶然見つけ、ここでワンマンをやりたいと決めたのだそう。大人の街を彩る格式高い会場はまさにアルバム『école de romantisme』のイメージにぴったりだ。ホール内に入るとステージには欧風建物や街灯のセットが組んであり、ヨーロッパの街並みが表現されている。開演を10分少々回った頃、サポートメンバーがステージに登場。今回は椿屋四重奏時代からサポートキーボードを務めているYANCYに加え、ベースに小松秀行(ex.Original Love)、ドラムに小松シゲル(NONA REEVES)、ギターに竹内朋康(FIASCO 3、Dezille Brothers)という実力派揃いの面々をサポートに迎え、大人の色気を漂わせる豊潤なサウンドを展開していく。三つ揃えのスーツ姿で現れた中田はアコギ片手に伸びやかなフェイクで第一声を聴かせてくれた。肩肘張らない大人の余裕すら感じられるその立ち姿からは、ソロとして、歌い手としてのプロ意識を感じさせる。
「今日も中田裕二流の歌謡曲を存分に楽しんでもらいたいと思います!」と意気揚々に挨拶する中田。ソロになってからの中田は歌謡曲、つまり古き良き時代の日本の歌を中田のフィルターを通して歌い継いでいくということに重きを置いている。今年30歳を迎えた中田だが、同世代でこんなアダルティなライヴを見せてくれるアーティスト、他に見たことない。"LOST GENERATION SOUL SINGER"のなまめかしいメロディを軽やかに歌い上げる中田を観ていて、ソロになってより彼の原風景が色濃く表れるようになったなと感じる。「大人という価値を大事にしたいなと思って作ったアルバムで、その中でも大人度の高いお気に入りの曲をやります」と言って歌った"バルコニー"は繊細な色気に満ちていて、バンド時代の刺激的な艶やかさとはまた違う、中田自身から匂い立つような魅力で溢れていた。
アンコールではカバー曲も披露。日本橋という大人の街にぴったりなあのお酒の歌や、クリスマスを控えた時期、中田からのクリスマスプレゼントということで贈られたクリスマスソングもあり、公開カラオケパブならぬ『SONG COMPOSITE』も堪能できるというファースト・ツアーとしては大満足の内容にオーディエンスも心から楽しんでいるようだった。
このツアーは来年以降も続き、さらには追加公演として3月14日(水)に赤坂BLITZ公演も決定!今回のサポートメンバーとみっちり全国を回り、結束力も増したところでのツアー・ファイナルはきっと物凄いことになっているに違いない。「新曲もたぶん増えています!」とのことなので期待して待っていたい。(阿部英理子)