星野源 ゲスト:清水ミチコ @ 恵比寿リキッドルーム

星野源  ゲスト:清水ミチコ @ 恵比寿リキッドルーム - pics by 岡本英理pics by 岡本英理
「部屋」と銘打ったライヴは、確か今年4月4日の渋谷パルコ劇場以来。基本、自分の部屋でやってるみたいな感じで、ひとりで弾き語りで行うアコースティック・ライヴ、という趣旨の企画。というわけで、星野源、「部屋を出た格好のままで来た」という……オレンジ? ピンク? 朱色? 照明の具合で判別しづらかったのですが(写真ではピンクに見えますね)、とにかく赤色系統のパーカー姿で登場。そういえば、パルコ劇場の時は、水色のパーカーでした(こちら http://ro69.jp/live/detail/49582 )。星野くん、部屋ではいつもパーカーなんですね。
で、今回は「(友達編)」と付いているわけで、ゲストで清水ミチコが出演。それから、星野くんが水曜レギュラーを務めるJ-WAVEの『ラジペディア』や、テレビのいろんなバラエティ番組の構成をしている、そして出演したりもしている放送作家・寺坂直毅も、後半、司会者として登場しました。
ではざっと振り返ります。

まず1部。星野源、ひとりで弾き語り。グレッチ(たぶん)のセミアコを持って登場。セットリストはこうでした。

1.歌を歌うときは
2.エピソード
3.変わらないまま
4.布団
5.ばらばら
6.家族なんです
7.バイト
8.老夫婦
9.グー
10.予想
11.くせのうた

2曲目と11曲目で、歌詞を間違えて中断しました。2曲目の時の言い訳は、「さっき、ケーキ食べたから」で、11曲目の時は「こういう部分を楽しむイベントなんで、これは。この、グダーッとした感じを」でした。
まあ、確かにそういうステージでもあったけど、ただし。星野源の歌そのものの、「一緒に歌うとかじゃなくて、ただただ聴き入るしかない状態に全員をさせる力」、もう、圧倒的なもんでした。だんだんすごくなってないか? 声もでかくなってる気がする。で、こっちは聴き入るしかないもんだから、メロディを味わいながら、今目の前で歌われている歌詞の意味とかを、どんどん考えてしまう。そうすると、CDで聴き慣れた曲なのに、また新たな発見があったりする。そんな時間でした、私にとって。今日は本編ラストの“くせの歌”と、あとアンコールの“くだらないの中に”(後述します)で、その自分にとっての新たな意味を、見つけました。
なお、6曲目は、現在テレビ朝日で毎週金曜23:15から絶賛放映中、星野くんも「ヒロユキおじさん」役で出演中のドラマ『11人もいる!』の中で、毎回ひと騒動終わると星野くんがギター弾きながら歌うシーンの、一瞬で終わるあの曲です。大拍手でした。あと、3曲目と4曲目の間、6曲目と7曲目の間、9曲目と10曲目の間にMCがあったのですが、「ヒロユキおじさんだよ! でも、ヒロユキおじさん、本当は暗いんだ! 今日はヒロユキおじさんの暗部をぜひ観ていっていただきたいと思います」とか、「さっき、『ごめんなさい、今日ライヴ行けません。次の予定があったら教えてくださいね』ってメールが来ました。RED RICEさん(湘南乃風)からでした」(『11人もいる!』のSAM役ですね)などと、全体に、『11人もいる!』ネタのしゃべり、多かったです。今週金曜が最終回で、すごく意外な、でもすごくいい終わり方をするので、ぜひ観てほしい、とのことです。言われなくても観ますが、楽しみです。
あとは、『11人もいる!』のロケとかやってると、すれ違いざまに「普通ー」って言われる、ということや、「男前である」という事実においてROY(THE BAWDIES)に対して並々ならぬ悔しさを抱いていることなどなども、話しておられました。

星野源  ゲスト:清水ミチコ @ 恵比寿リキッドルーム
で、11曲目“くせのうた”を歌い終わると、そのまま転換とか休憩とかなしで(最初からステージにグランドピアノも設置ずみだったのです)、ゲストの清水ミチコを呼び込む。
ここからは清水ミチコの時間なのですが、えーと、セットリスト、書きにくいですね。ああいう芸風の方なので。ちょっと無理ありますが、一応書いてみます。なお、登場して、超満員&超あっついフロアを見て、「源ちゃんすごい人気だね! こんなに人が! うわあ!」とか言っているうちにテンションが上がったのか、口調がどんどん平野レミになっていったのは、意識的だったのか無意識だったのか。どっちにしても素敵です。
ではセットリスト。

1.フロアからリクエストをつのってモノマネ。楽しんご、瀬戸内寂聴などなどいろいろ。
2.童謡“サッちゃん”の替え歌で、「桃井さんはね」「デヴィさんはね」「細木さんはね」と歌っていくおなじみのやつ。大ウケ。
3.“愛の賛歌”を美輪明宏のマネで、美輪明宏が自らのことを綴ったような歌詞で歌うやつ。9月に出たライヴDVD『LIVE! 清水ミチコのお楽しみ会 バッタもん』に入っています。やはり大ウケ。
4.「ここで、あえて、気持ちの悪い音楽を」という前置きあり。そして、これも得意ネタ、「2曲が合わさると気持ちが悪い」というやつを披露。口で「天空の城ラピュタ」のテーマソングを歌いながら、両手で(もちろんピアノで)『渡る世間は鬼ばかり』のテーマを弾く、というものでした。この曲は、大ウケというよりも、あまりのすごさに、フロア、爆笑と感心が入り混じる不思議な空気になってました。
あ、さっき「気持ちが悪い」のが得意ネタみたいに書きましたが、厳密に言うと違います。2曲合わさるのが得意ネタ、が、正しいです。「口で『一休さん』のエンディング・テーマ、両手で『戦メリ』のテーマ」というネタもあるけど、あれは気持ち悪くはないし。
5.メドレー。矢野顕子“ひとつだけ”に始まり、RCサクセション“トランジスタ・ラジオ”や研ナオコ“カモメはカモメ”や森山良子“ざわわ”(ってそんな曲名ではありません。正しくは“さとうきび畑”です)やユーミンなどなどを経由して“千の風になって”で終わる、という。選曲、まったく一緒ではありませんが、これも『清水ミチコのお楽しみ会』に入ってます。もちろん大ウケ。

普段、清水ミチコのワンマンに訪れるファンというのは、CDもDVDも本もラジオもチェックしているような熱心な人が多いわけで(って、証拠があるわけじゃないけど、きっとそうだと思う)、ゆえにネタはすべて前もって知り尽くしているわけです。なので、リアクションも、バンドとかのライヴで、おなじみの曲が始まって「待ってました!」みたいなのと同じようなウケ方なのでは、と、思います。
という意味で、今日は違ったのだ、と思います。ネタを知らずに観る人も多い、あと清水ミチコのワンマンよりもロック寄りのフィールドである、というのもあると思うが、とにかくもうどっかんどっかん、ほんと熱狂的なくらいウケてました。ご本人も驚いたみたいで、そしてうれしかったみたいで、「なんか、ここに来てよかったです! 源ちゃんありがとう!」と叫んでおられました。

星野源  ゲスト:清水ミチコ @ 恵比寿リキッドルーム
で、ここで星野源を呼び込む。で、呼び込まれた星野源、ここからの企画を説明する。「ふたり紅白歌合戦」ということで、星野・清水で、交互にカヴァー曲を歌う、という趣向。で、司会者として、紅白マニアであるという、前述の寺坂直毅が登場。彼の名調子(イントロにのっけていろいろしゃべって紹介する、昭和の時代の玉置宏とか宮田輝とかああいう感じのやつ)に導かれて、以下の曲たちが歌われました。

1.星野源“襟裳岬”(森進一)
2.清水ミチコ“いい日旅立ち”(山口百恵)
3.星野源“機関車”(小坂忠)
4.清水ミチコ“カーネーション”(椎名林檎)
5.星野源“雪が降る町”(ユニコーン)
6.清水ミチコ“テネシーワルツ”(綾戸智恵。ってそれもカヴァーだけど)
7.星野源“スーダラ節”(ハナ肇とクレイジーキャッツ)
8.清水ミチコ“春よ、来い”(松任谷由実)

ほんとに紅白っぽい選曲なのは、頭2曲だけですね。星野源は普通に歌い、清水ミチコはモノマネで歌う。いずれもすばらしかったが、星野くんは特に1曲目と5曲目がよかった。清水ミチコは、なんと言っても4曲目、“カーネーション”。単に、この曲以外は私、どれも「清水ミチコヴァージョン」を知ってたから、というのもありますが、「ミチコの林檎」、もう、絶句もんでした。血を吐くほど笑いました。
あと、その司会の寺坂直毅という放送作家。『やりすぎコージー』に出ていたりもしてたそうですが、私、あの番組観てなかったもんで、よく存じ上げませんでした。こんなにすごい人だとは。
紅白マニアである。というのは、「ああ、そういや前に雑誌かなんかで紅白の話してるの読んだことある、TVブロスだったっけ、あれ」とか思い出しましたが、それ以外にも、この日の3人のしゃべりでわかった、寺坂さんに関すること。
デパートマニアで、エレベーターマニアでもあるそうです。黒柳徹子を、女性として好きだそうです。由紀さおりを抱きたいそうです。星野くんと同い歳だそうです。童貞だそうです。それも「この人童貞なんですよ」というふうに告げられたのではなく、「30過ぎて童貞だと、夢の中で誰でも抱けるんですよ」みたいに、会話の中でさらっと本人が言ったもんだから、超満員のフロア、「……ん? …………えーと…………って、えーっ!?」という感じで、それはもうすごい引きっぷり。清水ミチコ、思わず、「おーい、戻ってこーい! 大丈夫だぞ、私がいるからー!」と呼びかけたほどでした。
って書くと、寺坂直毅さん、単に、とんでもねえ変わり者みたいだけど、というか実際にそうでもあると思うけど、それだけで私、こんなに行数を費やしているのではありません。その特殊な知識の膨大さといい、ポロッとこぼすコメントのおもしろさといい、イントロにかぶせる名調子のうまさ(言葉のセンスも語り口も声のトーンも本当にすばらしい)といい、要は、本当にもう、すんげえおもしろいのです、この人。なんなんだ。ショックですらありました、私。とりあえず、家に帰ってすぐ、星野くんがMCで言っていた彼の著書、『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)を、amazonのショッピングカートに入れました。

そして最後に、ふたりでデュエット。星野源と井上陽水(の清水ミチコ)で“帰れない二人”、星野源と矢野顕子(の清水ミチコ)で“中央線”の2曲。“帰れない二人”は大笑いでしたが、“中央線”の方は、笑えませんでした。ただただ、すばらしすぎて。清水ミチコのモノマネって、デフォルメしまくって笑わせる時と、「ただの本人」になる時の2パターンがあるんだけど、完全に後者。お客さんもみんな「星野くんと矢野さんのデュエット」として、じいっと聴き入っていました。終わった時の拍手、すごかった。

アンコールは、星野くんがひとりで、“くだらないの中に”を歌って、シメ。後半のこの「ふたり紅白」企画、すごくいいから、来年もやりたい、この3人でやりたい、NHKホールでやりたい、だから来年までに僕、がんばって売れます(星野)、「裏紅白」的に大晦日にやるのはどうでしょう、とか、3人でいろいろおっしゃってました。
基本的に大賛成ですが、大晦日だと本当の紅白があるからNHKホール借りられないし、COUNTDOWN JAPANとかぶると、私、行けないので、ぜひ、今年ぐらいの時期でお願いできれば。と、希望します。

ああ。こんなに長く書いてしまった。本日アップのライヴレポで、同じく超長い高橋智樹の神聖かまってちゃん@新木場スタジオコーストの方は、読めば、あの長さが必要だったということがわかりますが、どうなんでしょう、私のこれは。不安です。でも、書いちゃったのでアップします。(兵庫慎司)
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