ASIAN KUNG-FU GENERATION @ 日本武道館

感動的なライブだった。デビュー当時から「僕らの屍を越えてみんなでロックを先に進めてほしい」とロック殉死志願者的な衝動を語っていたASIAN KUNG-FU GENERATIONが、「自分たちで00年代とアジカン自身を越えていく」決意のアルバム『マジックディスク』を経て到達した、どこまでも鋭利でポップでタフな音楽の現在地。震災とその後の混沌とした状況と真っ向から対峙し、苦悩の果てに獲得した明確な行動原理とアティテュード。その2つがアジカンの世界の中で完全にひとつになって、武道館という場所で無限のエネルギーを放っていた。アジカンだからこそ実現し得た、それでいてこれまでに観たどのアジカンのライブとも異なる、最高のロック・アクトがここにはあった。

[※まだ最終日の大阪公演を残しているので、セットリストや曲目に関しては基本的に『BEST HIT AKG』収録曲のみのレポとさせていただきます。が、ネタバレ完全回避したい方は以下は26日・大阪城ホール終演後にお読みいただければ幸いです。なお、セットリストは、26日のライヴ終了後に追加アップします]

ベスト・アルバム『BEST HIT AKG』のリリースに伴って、幕張メッセ イベントホール/日本武道館×2/大阪城ホールの4公演にわたって行われているツアーの3本目にして武道館2Daysの2日目。というわけで、ベスト盤に収録された楽曲が本編の半分以上を占める展開になるのはもちろんなのだが、やはり驚くべきは、“アンダースタンド”や“或る街の群青”、“君という花”といったアジカン・マスターピースの数々が、最新シングル曲“マーチングバンド”とがっちりギアを合わせた「今」の表現として、この武道館の場で鳴っていることだ。たとえば《切なさだけで 悲しみだけで/君の街まで飛べればいいのにな》というフレーズに、ソングライターとして/ロック・バンドとしての使命感を重ね合わせた“君の街まで”。たとえば《夢なら覚めた/だけど僕らはまだ何もしていない/進め》と決然としたゴッチのヴォーカリゼーションでもって突き上げる“アフターダーク”。たとえば《321 情報が錯綜 真実を知らない/現状と幻想の誕生 明日とその足音》という2005年の言葉を2012年の日本のカオスに直結させた“ブラックアウト”……自分たちの持てるメロディと言葉の限りを尽くして、そして今のゴッチ/喜多/山田/キヨシの4人で鳴らし得る最大限に強靭なリズムとアンサンブルでもって、僕らが今生きている時代に作用しようとする、実に力強い熱演。開演と同時に満場の武道館を一面クラップで満たし、幾度となく会場一丸のでっかいジャンプやシンガロングを巻き起こし……という壮大な景色は、僕らを明日の「その先」へと突き動かすロックンロールそのものだった。

一気に曲を畳み掛けた後、ゴッチのMC。物販ブースで販売しているトートバッグ(開演時にはもう売り切れていたが)は、震災後の自立支援プロジェクトの一環として、三陸海岸のお母さんたちが縫ってくれたものであること。そのトートバッグと同じデザインのTシャツは、エネルギー問題や今の情勢について迫る新聞『The Future Times』(ゴッチが編集長を務め自腹で運営)の資金に充てられること。そして、津波で被害を受けた大船渡/宮古/石巻にライブハウスを建設するための活動「東北ライブハウス大作戦」への募金活動を、会場の外で行っていること。「こういう話は普段は山田くんに頼んでるんだけど(笑)」と言いつつ、ひとつひとつ丁寧に告知していくゴッチ。「(震災から)もうすぐ1年になるけど、まだまだ何も片付いてないと思うんで。まあ、こういうMCしなくていいようになればいいんだけど……音楽をやることもはばかられる状況から、必死でやってきて。ここには音楽を好きな人がたくさん集まってるから、困っている人にエネルギーを送っていけたらいいなと思います!」――そんなゴッチの言葉に、熱い拍手が広がる。

この日は『BEST HIT AKG』の忠実な再現ライブというわけではなく、この日も“未来の破片”や“新世紀のラブソング”といった重要曲は演奏されなかったし、終盤でゴッチも「なんか……『ベスト・アルバムから漏れた俺の好きな曲をやるタイム』みたいになっててすいません(笑)」と語っていたように、『BEST HIT AKG』に収録されていない曲も、デビュー間もない頃の楽曲から『マジックディスク』の曲まで幅広く網羅した内容だった。というか、喜多くんと山ちゃんとキヨシの3人で選曲された『BEST HIT AKG』のナンバーと、ゴッチ選曲の楽曲群が絡み合うことで、結果的に「4人全員によるアジカン史完全総括」的なセットリストが構成されていた。途中、「『こんな曲知らないよ』って思ったかもしれないけど……(アリーナから「知ってるよ!」の声)……うん、わかってて言っちゃうんだよね。ついつい皮肉から入っちゃう。だから、メンバーからも飲みに誘われなくなるんだよね(笑)」とか「よく雑誌とかでさ、『見た目は平凡だけど』とか『才能もないのに大きな会場でやってる』とか書いてるけどさ、才能あるからやってんだ!って思うよね(笑)」とかいう辛口MCでいちいち笑いと歓声を誘い、ただでさえ熱い会場の温度をさらに上げていくあたり、今までのゴッチ節も全開だ。

Wアンコールまで含め約2時間半のステージで、この時代を前へ・先へと転がすロック・バンドとしての決意と情熱を、改めて僕らの脳裏にはっきりと刻みつけてみせたアジカン。そして……すでに4月11日のリリースがアナウンスされているニュー・シングル曲“踵で愛を打ち鳴らせ”も、この日披露された。タイトで軽快なステップとあふれんばかりのエモーションで、今この時代の困難を胸を張って駆け抜ける力をみんなで獲得していこうとするかのような、どこまでも開放的でアグレッシブなナンバー。“マーチングバンド”と同様に、ロックの習慣や手癖に微塵も囚われない鮮烈なビートが、バンド全体の疾走感とメロの高揚感の鍵になっていることがわかるし、それはそのまま、まだ見ぬ次のアルバムへとつながっていくに違いない。日本を代表するロックの殿堂で今、アジカンの逞しいステージを観れて本当によかった。心からそう思えた一夜だった。(高橋智樹)

セットリスト
1.迷子犬と雨のビート
2.Re:Re:
3.アンダースタンド
4.君の街まで
5.夜のコール
6.アフターダーク
7.或る街の群青
8.ブラックアウト
9.サイレン
10.ソラニン
11.月光
12.マーチングバンド
13.惑星
14.融雪
15.藤沢ルーザー
16.リライト
17.ループ&ループ
18.君という花
19.さよならロストジェネレイション
20.転がる岩、君に朝が降る
21.海岸通り

En 1. 踵で愛を打ち鳴らせ
En 2. 真冬のダンス
En 3. ワールド ワールド ワールド ~ 新しい世界

W En 1. 遥か彼方
W En 2. 羅針盤
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