ent @ 代官山UNIT

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ent @ 代官山UNIT - pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)pics by 橋本塁(SOUND SHOOTER)
ホリエアツシ(ストレイテナー)のソロ・プロジェクトentの、最新作『entish』を引っさげて行われた初の東名阪ツアーのファイナル、代官山UNITワンマン。後方のドア付近まで人、人、人で埋め尽くされていながらも、非常にレイドバックした空気に包まれる会場にentが姿を見せたのは、定刻を少し回った18時5分。1曲目の“9646”を終えたところで、ホリエから「こんばんはent bandです」という挨拶があったように、この日はギターにストレイテナーのOJこと大山純、ドラム/マニピュレーターにレコーディング・エンジニアの菅井正剛を迎えたバンド編成での出演だ。

ゆったりとした同期ビートで届けられた2曲目は、2009年リリースの『Welcome Stranger』に収録された“Farewell Dear Stranger”。そして体温を持った生ドラムと静謐なピアノが美しいハーモニーを響かせた3曲目は、entが手掛けた映画『ソラニン』のサントラからの“pure river”。「新しい」とか「かっこいい」とか以前に、何よりも先に「気持ちいい」という言葉が浮かんでくる、ギターポップ/ポストロック/アンビエント/エレクトロニカあたりの意匠が絶妙なバランスで配合されたentサウンド。打ち込みと生音が溶け合う、まるで静かな森の中にいるような気分にさせられるその滑らかなサウンドスケープに、会場のリラックス・ムードは深まっていくばかりなのであった。

「改めましてこんばんは、ent bandです。ent初ツアーで、ワンマンで、この代官山UNITが埋まっております。最初、entを始めたときはライヴをやらないつもりだったんですけど、みんなの協力とか後押しがあって、こうしてステージに立ってます」。アコースティック・ギターを軽やかに爪弾いた“Zoe”の後で、そう語っていたホリエ。しかしながら、ステージ後方のスクリーンに映し出された稲光のような視覚エフェクトにあわせてキレ味鋭いアンサンブルを浴びせた“Water Screen”や、「ハハッ!」という曲終盤のホリエの不敵な笑い声から一気にエモーショナルに展開していった“Do Not Adjust Your Set”など、想像以上にライヴ映えする楽曲もあった。また、恐らく我々がホリエの歌声を聞き慣れているということもあるのだろう。楽曲に彼のボーカルが入ることで、アート性の高い音楽をやっているのにもかかわらず、やけにポップな聞こえ方をするのも印象的だった。

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8曲目“Airwalker”の後は、ホリエとOJが一度ステージから去り、菅井が“Dragon Fruit”のトラックをプレイ。この曲の途中で2人が戻ってきて、打ち込み音にインプロっぽい生音フレーズを挿入していったところは、肩の力の抜けたなんともentらしいワンシーンであった。そしてエレ・ポップ風のイントロからダンサブルに攻め込んでいく“Silver Moment”で場内の高揚感を煽ってから、MCへ。ここまでのライヴもずいぶんとリラックスしたムードで行われてきたが、ここでもしゃべってる途中でホリエがチューニングを始めたりと、その至ってマイペースな進行ぶりに、フロアのあちこちから笑いが漏れる。ここで彼は、こんなことを語った。
「もうね、思ってることを言葉にするのがつくづく苦手で。でも、言葉にしないと伝わらないこともあって。でも、言葉自体が指している意味も人によって違って、その指している意味を理解しないと言葉の意味も理解できなくて。そうは言え、『好きだよ』とか感謝の気持ちとか、そういうすごくシンプルなことは、やっぱりちゃんと伝えなきゃいけないなって思うわけなんですよ。ていう当たり前のことなんですけど、そういう当たり前の、自然なことを日本語で書いた曲をやりたいと思います」 そうして“Lens”が披露された。
《いつも笑って/素顔になる日まで/今日は雨で/明日は雪になる/Hello 語ろう/言葉は要らない/結末は知らない/未来は逃げない》。ホリエの丸裸の心情がシンプルな言葉で刻まれたこの曲は、entというプロジェクトの性質が、当初の「自分が聴きたい音楽を作る」という客観的なものから、「ストレイテナーとは別チャンネルでの、ホリエアツシの自己表現」という主観的なものへとシフトしたことを象徴する楽曲だ。ここで生まれた穏やかな余韻を引きずったまま、『entish』のラストを飾った“At The End Of The Blue Sky”でライヴ本編の幕は降りた。

そしてアンコールでは、「今日はスペシャルゲストが来ています」というホリエの紹介から、『entish』のレコーディングで“lens”のドラムを叩いたRADWIMPS野田洋次郎が登場(ちなみに『entish』の歌詞カードには、「DARMAN」とクレジットされていました)。まさかのビッグサプライズに沸き立つ会場に、ギター:ホリエ・OJ、ドラム:野田という編成で、「本当にぶっつけなんですけど」とスリリングなジャム・セッションを届けてくれた。その後は野田と菅井が入れ替わり、簡単なライヴ告知をしてから“Sleeping Ghosts”を披露。全13曲、時間にしておよそ1時間半程度の、ワンマンにしては少し短めのステージではあったが、「また観たい!」と思わせてくれるには十分すぎるほどの、濃密な音楽体験だった。(前島耕)
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[セットリスト]
1. 9646
2. Farewell Dear Stranger
3. pure river
4. Zoe
5. Water Screen
6. Do Not Adjust Your Set
7. Frozen Flowers
8. Airwalker
9. Dragon Fruit
10. Silver Moment
11. Lens
12. At The End Of The Blue Sky

アンコール-JAM SESSION-
1. Sleeping Ghosts
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