『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu

『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu - all pics by 柴田恵理all pics by 柴田恵理
設立20周年、並びにキューンミュージックへの名称変更を記念して、リキッドルームで20回に渡り繰り広げられているライヴ企画の第6日目。この日に登場するのは、YO-KINGと、ゲストとしてSPARKS GO GOという顔ぶれである。YO-KINGは真心ブラザーズとして数えると、ほぼ同時期にメジャー・デビューを果たして共に20年以上のキャリアを誇るグループだ。ベテラン・ロッカー勢のこなれたステージ・ワークと粋を見せつける、どちらもカッコ良すぎて涙が出るほどの素晴らしい一夜になった。

『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu
『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu
キューンミュージック所属のアーティスト達が挙って20周年&名称変更にコメントを寄せ、それをカット&ペーストして繋ぎ合わせたおもしろオープニング映像が流れると、まずはSPARKS GO GOが登場。まるでスネアを打ち抜いてしまうんじゃないかというテッチことたちばな哲也(Dr.)のバックビートが立ち上がり、橘あつや(G.)のゴリッゴリのリフが火を噴く。のらりくらりと姿を見せたはずのヤック=八熊慎一(Vo./B.)は、その野太いヴォーカルを放つなり両拳を掲げて強烈な雄叫びを上げるのだった。のっけから“NEW ROSE”(ザ・ダムド)、“SOOKIE SOOKIE”(ステッペンウルフ)というカヴァー・レパートリーで飛ばしまくり、レプレゼント北海道な“NORTH SEA ROAD”の爽快で大らかなロック・サウンドへと繋げてしまう。

「ようこそおいでくださいました。SPARKS GO GOです。ゲストの、SPARKS GO GOです。キューンには2,3年しかお世話になってないのに、こんなおめでたいパーチーに呼んでくださってありがとうございます」とヤック。「キューン万歳!」とプレイされたのは、目下の最新アルバムにしてキューンからリリースされた『SUNBURST』から“bird”である。アルバムのリリース当時、筆者はその燃え盛る太陽のかっこいいジャケット・アートワークを電車の中吊り広告で見つけて「おおっ!!」と声を上げ、一目を憚らず携帯で写真を撮ったのを思い出した。

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洋楽ロックと邦楽ロックの垣根を楽々と踏み越え、「日本人のロックなんて」という古い論調に対しては「この音で顔を洗って出直して来い」と言い放つことが出来たバンド、それがスパゴーである。キャリアを重ねて深みを増したサウンドはますます熱く、そしてルーズで煙たいグルーヴを備えている。せめて演奏の合間には、ウダウダグダグダとしてくれていないとこちらの身が保たない。ウダウダグダグダをいかに強烈なロック・グルーヴとして鳴らすか。スパゴーはそんなトライアルを続けてきたのではないかと、今になってようやく思う。

6月末にはキューンから6曲入りの新作がリリースされるそうで(メンバーは誰一人としてリリース日を把握していなかった)、そのタイトル曲と紹介された“BEAUTIFUL WORLD”も披露。スパゴーらしい肯定性が全開の一曲だ。ヤックは「我々3人と、エンジニアと、マネージャーと、あとバイトくんで、より分けて、吟味して、丹精込めて、練り上げた、表面はカリッと、中身はふわっと、仕上げましたので、ぜひご賞味ください」と語っていたので、ぜひともチェックを。終盤は“SAD JUNGLE”〜“SLOW DOWN”〜“ざまーない!”という連打で、平均年齢は決して低くないオーディエンス(失礼)がばんばか跳ねまくる。誰が、というわけではない。この3人でステージに立てばいつでも最高。そんな理想的な、ロック・バンドの姿だった。

『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu
『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu
さてさて、続いてはYO-KINGが登場し、すぐさま“バランス”の穏やかに諭すような歌を、暖かく膨らみのあるバンド・サウンドで届けてくるのだが、このバンド=クレイジーバッファローズの顔ぶれがすごい。ベースにグレートマエカワ(フラワーカンパニーズ:バンド名の由来は彼の近鉄バッファローズのシャツから)、ドラムスにサンコンJr. (ウルフルズ:お手製のネクタイを締めて登場)、キーボードに奥野真哉(ソウルフラワーユニオン:元・キューン所属と紹介)、ギターにおおはた雄一(なぜかこのバンドではホモキャラという設定らしく、ホモミルク名義)。おおはたをいちギタリストとして起用してしまうだけでも、異常に贅沢なバンドだ。

「初日に真心ブラザーズで出さして頂きまして、そのときにおめでとうをたくさん言ったので、今日は一回しか言いません!」とYO-KING。まあとにかくこのバンドの演奏を聴いてくれ、とばかりに、フォーキーでじわじわと染み入るようなバンド・アンサンブルの“いつも笑顔で”を披露する。そして、紛れもなくYO-KINGの芯の強い歌が核にあるのだけど、それに寄り添ってゆくサウンドの手応えがとてもフレッシュな“いつかのうみ”。名曲群だからこそ、この顔ぶれならではのパフォーマンスが際限なく引き立ち、呑み込まれてしまう。「こう見えて、高い声もだけど低い声も魅力的です。今後は、フランク永井みたいな歌を作って、紅白も狙っていきたいと思います」とお得意の自画自賛。ハンド・マイクでソウルフルな歌を聴かせる“輝く星と楽しい遊び”へと繋いだ。

奥野:「フランク永井みたいだったよ」
YO-KING:「おおっ、喋り出したなソウルフラワー!」
奥野:「やっぱパワステはいいねえ」
YO-KING:「(笑)タクシーに乗るといまだに、パワステの前で、とか言うらしいよ。バンド・ブームの申し子だからね」
奥野:「自分もやん」
YO-KING:「バンド・ブーム世代だけど、いつまでも若いままだぜ! 心は永遠の29歳、YO-KING & クレイジーバッファローズ!!」

『キューン20イヤーズ&デイズ』 YO-KING/SPARKS GO GO(ゲスト)@LIQUIDROOM ebisu
29歳が若いのかどうかという疑問はさておき、そのまま“FOREVER YOUNG”に傾れ込むというさすがの機転を見せてくれた。グレートとおおはたのコーラス・ワークも映える。更には、昨年のリイシューも話題になったローリング・ストーンズ『女たち』から“Beast of Burden”をカヴァー。バンドの豊穣なサウンドが引き立つ、素晴らしい選曲だ。個人的にも『女たち』で一番好きな曲なのでめちゃくちゃ嬉しい。更にこの後には、一気に50年代風のロックンロールで痛烈にロックを糾弾する“ハリボテROCK”や“DREAM IS OVER”で飛ばしまくる。

「どうもありがとう楽しかったです! スパゴーとYO-KINGを観に来た人は、幸せになります。んははは! だからなんも心配してません。勝手に幸せになりましょう。俺も勝手に幸せになります!」と本編ラストの“泣かないけどね”へと向かうのだった。こんなバンドを1時間ほどしか観ることが出来ないなんて、それはそれで勿体ない気もするけれど。アンコールは、YO-KING & クレイジーバッファローズがスパゴーを招き入れて、8名のベテラン・ロッカーたち(おおはたはこの顔ぶれだとどうしても若手になってしまう)がステージ上に勢揃いだ。

ヤック:「何やんの?」
YO-KING:「何やろうか(笑)」
ヤック:「二人でずっと喋ってる? 生い立ちから」
YO-KING:「どこ生まれだっけ? 北海道・倶知安! 知ってる。行ったことある!」
ヤック:「来たことあるよね。なんかラップとかやってたよね」
YO-KING:「あと、体育館の床に穴あけたことある(笑)。今年もまたやるんでしょ? 秋に」
ヤック:「倶知安ではやらないよ。新木場で」

ヤック、新作の発売日は覚えてないわ、イヴェントの告知はしてないわであんまりである。YO-KINGにフォローして貰ったようなものじゃないか。そんな感じでやりあいながらも、豪華共演はスパゴーのカヴァー・レパートリーでもあるCCRの名曲“Have You Ever Seen The Rain(雨を見たかい)”だ。なんだかんだ言っても、YO-KINGとヤックのパワフルなヴォーカル・リレーはすごい。あと、YO-KINGの本編終盤にプレイされた“Hey! みんな元気かい?”から、物語が続いている感じになっているのも良かった。

2組のバンドを通して、なんでこんなにも「かっこいいと感じるロックのツボ」を突きまくってくれるのか、と思いながら観ていたが、違った。そもそもこの人たちに、「かっこいいと感じるロック」を教わってきたのだから、当たり前なのである。これから先も、彼らには教えてもらわなければならないロックが、まだまだ山ほどあるはずだ。(小池宏和)


セット・リスト

SPARKS GO GO
01: NEW ROSE
02: SOOKIE SOOKIE
03: NORTH SEA ROAD
04: bird
05: Sandy's Sunday
06: Easy Ride
07: BEAUTIFUL WORLD
08: サマーオブラブ
09: SAD JUNGLE
10: SLOW DOWN
11: ざまーない!


YO-KING

01: バランス
02: いつも笑顔で
03: いつかのうみ
04: 輝く星と楽しい遊び
05: FOREVER YOUNG
06: Beast of Burden
07: ハリボテROCK
08: DREAM IS OVER
09: Hey! みんな元気かい?
10: 泣かないけどね

EN: Have You Ever Seen The Rain (with SPARKS GO GO)


※上記ライヴレポート中のSPARKS GO GOのセットリストに誤りがあり、 4月13日18:15に修正いたしました。ご迷惑をおかけしました関係者の皆様、読者の皆様に深くお詫びいたします。(RO69編集部)
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