ポール・ウェラー @ Zepp Diver City

ポール・ウェラー @ Zepp Diver City - Pic by CHIEKO KATOPic by CHIEKO KATO
ポール・ウェラー @ Zepp Diver City
ポール・ウェラー3年ぶりの来日ツアー、その初日となるZepp Diver City公演に行ってきた。デビューから35年以上、今なお超現役のミュージシャン&ロック・アイコンとしてシーンの第一線にいるこの人の伝説的キャリアについて、そして彼の今回の来日の意義については僭越ながらこちら(http://ro69.jp/feat/paulweller201209_02)のページで書かせてもらっているので、本レポートと併せてご覧いただければと思う。

Diver Cityで3日、さらにZEPP NAGOYA、ZEPP OSAKAと行なわれるウェラーの本来日は、4月にリリースされた最新作『ソニック・キックス』(全英初登場1位)を引っ提げての新作ツアーであり、同時に事前に告知されていたようにジャム、スタイル・カウンシル、そしてソロ時代の楽曲を網羅した総覧的ベストヒット・ツアーでもある。でも、それは単なる「せっかくだから過去のヒット曲もやってあげるよ」というサービス精神の賜物ではなかった。今やる意味のある楽曲を各時代から厳選し、2012年の軸足をはっきり示す内容になっていたのが、いかにもウェラーらしいストイックさだなぁと感じたライヴだった。後に記したセットリストを見てもらえれば分かると思うけれど、特にジャムのナンバーにおける「名曲だけど定番曲ではない」選曲の絶妙さはさすがだと感じた。じゃあ実際、どんなものだったのか。順を追って振り返ってみたい。

この日のオープニング・アクトを務めたのはOKAMOTO'S。今回のツアーのトピックのひとつは各会場の各公演にバラエティ豊かな日本のアーティストがスペシャル・ゲストとして登場し、ウェラーのサポートをする贅沢な構成になっていることだ。OKAMOTO'Sはオールドスクールな60s R&Bの中に「今」の焦燥を差し込む鮮烈なプレイで、まるでそれは少年ウェラーの原風景を追体験するかのようなパフォーマンスだった。これから始まる「レジェンド」の先駆けとして、ウェラーの物語のイントロとして、最高のアクトだったんじゃないだろうか。

そして20時、ついにポール・ウェラーが登場する。久々に目の当たりにした生ウェラーの出で立ちは、濃紺のジャケットに青みがかったグレーの細身のパンツ。胸元にはバラ色のスカーフを差している。白銀の髪は眉前&襟足長めなおなじみの変形モッズスタイルで、水色のカットソーの胸元にはシルバークロスのペンダントが光っている。相変わらず寸分の隙もない、恐ろしくかっこいい御仁である。バンドはウェラーに加えてギター、ベース、キーボードが各1名、そしてドラムス&パーカッションが2名の計6名体制だ。ウェラーは「コンニチハ!」と短く一言挨拶すると、すぐさま1曲目の“Have You Made Up Your Mind”が始まる。ワウギターとオルガンのリズミカルな掛け合いも胸躍るウェラー流R&Bで、最高のスターターだ。

ポール・ウェラー @ Zepp Diver City
ポール・ウェラー @ Zepp Diver City
続いてカウベルが軽妙なカウントを取り、これまた軽妙なギター・リフが折り重なると、ワッ!と沸き立つ会場。そう、スタカンの大名曲“My Ever Changing Moods”のスタートだ。これはウェラーのテーマ・ソングとでも言うべきナンバーで、「俺の移り気な気分」なるタイトルに象徴されるように毎回ライヴで様々なアレンジが試されていくのが楽しいナンバーだ。この日のアレンジは言うならばロウ・キー、ざらっとアナログでビンテージなギターの音色が原曲のお洒落スノビッシュなノリを薄めている。

そして矢継ぎ早に“Friday Street”からジャムの“Running On The Spot”へ、R&Bで幕を開けたショウは一気にリリカルなビート・ロックへと移り変わっていく。ウェラーは相変わらずせっかちな人で、曲間の余韻も何もあったものじゃない。なにしろギターを交換するたびにギターテクはステージに助走付けて走り込んでくるし、受け取るウェラーも5秒後にはとっととイントロを掻き鳴らし始めている。「アリガトウ! 次は新曲をやるよ、や、違った、新曲じゃない、数年前の曲だった、時差ぼけだな、すまない!」とひとりボケ突っ込み(それすらも早口でせっかち)をかましてして始まったのは“Wake Up The Nation”――うん、たしかに数年前の曲、しかもアルバム・タイトル曲ですよ、兄貴!

“Running~”からこの“Wake Up~”へと続く流れはウェラーの中でジャムの時代のパンク・スピリットが脈々と受け継がれていること、サウンド・スタイルは変貌してもマインドは不変であることを伝えるものだった。続く“Fast Car / Slow Traffic”は文字通り車の走行音を思わせる爆音ノイズをギター・エフェクトで生み出しながら16ビートにのってガンガン加速していく、これまたパンキッシュなナンバー。ワウ効かせまくりなサポート・ギターとの絡みも、競い合いながらドリフト走行する2台のスポーツカーみたいでめちゃくちゃ格好良い。

そこから一転、ブリット王道(ザ・フーみたいだった)のメロディが光る“That Dangerous Age”からジャムの名曲“Strange Town”へ、そしてサイケデリックなヘヴィ・グルーヴがうねる“7&3 Is The Strikers Name”へと、ウェラー流の60sへのオマージュのようなセクション、パンク以前の彼のルーツを探るようなコーナーが始まる。ここでウェラーはアコギに持ち変え、『ソニック・キックス』からの新曲“The Attic”、そしてスタカンの“The Cost Of Loving”とメロディ・オリエンテッドな2曲を歌い上げる。“The Cost Of Loving”はオルガンの音色も渋くていい。

ウェラーがタバコをふかしながら(そう、この人は今や絶滅危惧種のステージでタバコを吸う系ミュージシャンでもあるのです)ステージ下手のキーボードに座り、始まったのは“Long Hot Summer”。お待ちかねの名曲キター!と一瞬こぶしを振り上げそうになったものの、ウェラーのマイクの音量が小さすぎたり、逆にダビーなリフを刻むギターのリヴァーヴ音量が大きすぎたり、なんだか原曲のエレガンスとは程遠い歪な演奏になってしまっていたのが惜しい(無駄にアシッドで面白かったけど)。ウェラーも途中で何度かマイクの音量を「あげろ!」とイライラした顔で指示を出していたし、ちょっと不本意な出来だったんじゃないだろうか。

ポール・ウェラー @ Zepp Diver City
続く“Pieces Of A Dream”はそんなウェラーの苛立ちを解消するかのごとき長大なインストがこれでもかと激しくのたうつブルーズ・ナンバー。そこから“Long Hot Summer”の仇を討つかのようにエレガンスが大復活したチルアウト系の名曲“Above The Clouds”が完璧なアンサンブルで決まり、そして“Pieces Of A Dream”の続編のようなブルーズ・ナンバーで再び燃え盛る“Science”と、緩急見事なナンバーが並んだ中盤の流れは本当に素晴らしかった。冒頭からの全体的な構成で言えば、R&Bからビート・ロック→パンク→ソウル→サイケ→ソウル→ブルーズ→ソウル→ブルーズとくるくる表情を変えながら進んでいくショウで、その幾多の表情がポール・ウェラーという人の多面体を象っていく。

再びピアノの前に座り、「サンキューベリーマッチ! サンキュー!」と叫んで始まった“Dragonfly”、そしてこれまたピアノで歌い上げる“You Do Something To Me”、そして激渋な名曲“Heavy Soul”と、後半はウェラーのソロ時代のナンバーが並び、ショウのエンディングに向けて成熟したムードを醸成していく…が、その渋めの流れを断ち切るかのように始まったのがジャムの“Start!!”だ。もうすぐショウは終わるというのに、文字通り瑞々しく清廉な「スタート」を鳴らしてしまうこのナンバーで、ウェラーの歴史が一巡、いや、なんども循環していくような印象を受けるセットリストへとまとまっていった。

アンコール1曲目は“From The Floorboards Up”。これはウェラーの「モッド・ファーザー」としての冠を確固たるものにしたナンバーと言っても過言ではないヘヴィ・ソウル系の名曲なわけで、ショウは一気に集大成モードへと突入していく。そこからお待ちかねの“Shout To The Top”へと上昇白熱していくパフォーマンスは、間違いなくこの日の最大クライマックスだった。アンコール・ラストの“Broken Stones”が終わっても鳴り止まない拍手と、「Weller! Weller!」と連呼される恒例のコール。ちなみに洋楽のコンサートで「苗字」メインでコールが起こる人は滅多にいないが、ウェラーに関してはほぼ「成田屋!」みたいなニュアンスで「Weller!」コールがすっかり定着している。

そして遂に実現したダブル・アンコール、足早にステージに登場したウェラーが鳴らしたのは“Into Tomorrow”だった。ポール・ウェラー・ムーヴメントのデビュー曲、つまりはウェラーのソロ・デビュー曲だ。「明日へ」と題されたこの曲がリリースされた当時、キャリア初のどん底にいたポール・ウェラーが復活するなんて、世界中のほとんどの人は信じちゃいなかった。そして数少ない彼の熱心な支持者のほとんどが、ここ日本のファンだった。約20年前、失意の中から立ち上がろうともがいていた彼に日本のファンが送った熱い声援を、この曲で熱狂した私達のことを、ウェラーは覚えていたのかもしれない。それを思うと、本当に胸が熱くなるようなフィナーレだった。

ちなみに直近10月のロサンゼルスのショウでは“5 O'clock Hero”や“Carnation”といったジャムのナンバーもプレイされているし、“Changingman”もやっている。セットリストは日によって少しずつ変わっていきそう。今日&明日、そして名古屋、大阪にいかれる方もぜひお楽しみに!(粉川しの)

セットリスト
01. Have You Made Up Your Mind
02. My Ever Changing Moods
03. Friday Street
04. Running On The Spot
05. Wake Up The Nation
06. Fast Car / Slow Traffic
07. That Dangerous Age
08. Strange Town
09. 7&3 Is The Strikers Name
10. The Attic
11. The Cost Of Loving
12. Long Hot Summer
13. Pieces Of A Dream
14. Above The Clouds
15. Science
16. Dragonfly
17. You Do Something to Me
18. Heavy Soul
19. Start!!
20. Around The Lake
(encore1)
21. From The Floorboards Up
22. Shout To The Top
23. Broken Stones
(encore2)
24. Into Tomorrow
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