まだツアー中のためセットリスト全掲載は控えさせていただくが、ソロ・デビュー・シングル曲“TALI”をはじめYOSHII LOVINSON名義の頃の曲を要所要所に配しつつ、最新シングル曲“点描のしくみ”に最新ミニアルバム『After The Apples』収録曲、さらにイエロー・モンキーの楽曲までを全2時間のステージの中に盛り込み、いわゆるシングル・コレクション的な視点とはまったく別の方法で自らのキャリアを俯瞰してみせるような内容だった。パワフルにアンサンブルを牽引する吉田佳史(TRICERATOPS)&三浦淳悟のビートも、生形真一(Nothing's Carved In Stone)&バーニーこと日下部正則のダイナミックなWギターも、荒々しいオルガン・プレイから繊細なシンセ使いまで多彩な色を放つ鶴谷崇の鍵盤さばきも、すべてが吉井和哉という表現の肉体の一部であるかのような一体感と躍動感をもって鳴り渡っていく。
「いろんな時期の曲を、今の健全な(笑)、やる気満々の自分で、聴いてもらってます!」と客席に語りかけつつ、ソロ10周年記念のベスト・アルバム『18』を来年リリースすることを告げ、自らの足跡を静かに振り返っていた吉井。ソロで活動を始めた頃、ひとり孤独と逆ギレの中でAKAIのサンプラーで曲を作り始めたこと。外国のエンジニアと組んだり、自分が海外に行ったりして、半ば意地みたいな感じで自分の音楽を突き詰めていったこと。9.11で、バンド時代に昇ったことのあるビルが壊れたのを見て、自分の中の何かが壊れるような衝撃を受けたこと。そして、2本あったワールド・トレード・センターのビルが1本になって完成する来年、自分も10年で「ひとつ完成」する手応えを感じていること。「ここで初めて、10年かけたオリジナル・アルバムが完成したと思ってます」と彼は語っていた。ロック・アーティストとして、日本の「今」と向き合う1人の人間として、自らの表現を研ぎ澄ませてきた吉井和哉の核心が、彼ゆかりの場所で、最高の形で提示されている。「ずっと家出しながら音楽をやってたような気がしてて……でも、今日は九段下が僕の家です!」というアンコールのMCの言葉が、この日のサウンドとともに脳裏に強く残った。
来年1月23日にベスト・アルバム『18』をリリース後、本人曰く「バンド時代から10年行っていない街を回る」全国ツアー『吉井和哉 TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA』が2月23日からスタートする。「ツアー最終日、福島に行ってきます(5/18:福島・あづま総合体育館)。『.HEARTS』ツアーの続きだと思ってるし、『Flowers & Powerlight』ツアーの続きだと思ってます」と吉井。9.11、3.11を経て、自分のやるべきことが見えてきた気がするーーと決然と語っていた彼の想いが、そのまま音になって現れたような、感動的な一夜だった。(高橋智樹)