TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST

SMA(ソニー・ミュージック・アーティスツ)によるUstream番組『TESAGURI SMA』を飛び出し、SMA所属のミュージシャンやお笑い芸人たちが挙って番組MC=たいがー・りーの神輿を担ぐ、といった趣旨のイヴェントが開催。たいがー・りーは手作り感たっぷりのステージ垂れ幕を用意したり、本編中も随所で活躍。ミュージシャンの楽屋に突入する様子などはUSTの生中継でも見られたそうだが、たいがー自身が企画して進めたというよりも、やはり「担がれている」といった印象が強い、風変わりだが濃密な3時間であった。たいがー・りーと、たちばな哲也(SPARKS GO GO)、そして木村哲朗(ザ・ビートモーターズ)ら3人の番組MCが登場し、たいがーはいきなりオーディエンスにウェーヴを起こさせ、こちらもSMAのUST番組である『ヒライセイイチ60分』から「ピカピカ家族」のコーナーを受け持つピカピカ一座の面々もステージに傾れ込むという賑々しいオープニング。そして、たいがーとオーディエンスによる「リー!」「リー!リー!」の掛け合いから、いよいよライヴがスタートだ。

TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
音楽アクトの出演1組目は、電大である。さっそく重厚なブギー・ロックンロールの“Chuo Free-Way”をぶっ放し、トリプル・ヴォーカルが広がりのある響きで届けられる。続く“Body Guard”では「ピカピカ家族」のお父さん役=おぐ(ロビンフット)が矢沢永吉のモノマネで飛び入りし、鋭い反応で食らいつくオーディエンスと共にタオル投げを敢行。さらにはTHE イナズマ戦隊から上中丈弥(Vo.)もゲストで登場し、“炎のモーニングコール”の全身からソウルを迸らせるようなパフォーマンスに、テッシーは「真ん中にヴォーカルがいると、いいね!」と身も蓋もない言葉を漏らしてみせる。上中が16歳のときにバンドを組んで初めて人前で歌ったという、ユニコーンの“与える男”を、同じくイナ戦から山田武郎(G.)を加えた5ピース編成で披露する一幕は、お祭りイヴェントらしいスペシャル感を振りまきつつ感慨深い瞬間となった。そして終盤“By The Way”から“風天”にかけては、EBIもパーカーを脱いで3人がTシャツ姿で骨太ロックをヒート・アップさせる大熱演。短い持ち時間ながら、素晴らしいトップ・バッターであった。

TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
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TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
メイン・ステージの転換中には、サブ・ステージでお笑いアクトが次々に登場する。響のミツコがネタ前に「スタンドマイク頂けますかー? あ、これ使っていいの?……(マイクが高く煽り気味のポーズで)……オアシスみたいになっちゃった……」とボソリ呟いたり、「テンションだけ似てるマイケル・ジャクソン」を披露するコウメ太夫といい、音楽ネタの笑いを振りまいてくれる場面多し。4組のお笑いアクトの最後にはAMEMIYAが定番ネタ「冷やし中華はじめました」でオーディエンスのシンガロングを誘っていたが、個人的に最も笑ったのは、がっちりのコント「セールスマン」を見せてくれたバイきんぐであった。

TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
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さて、音楽アクトの2組目はTHEイナズマ戦隊だ。“IT'S SHOWTIME!!!!!”では上中がけたたましいブルース・ハープを吹き鳴らし、そして“LIFE IS ROCK”と、熱いエネルギーを率直に伝える関西ブルース/ファンクのノリと自力の高さを見せつけながらパフォーマンスを繰り広げてゆく。ディスコ・ロックンロールの強烈なグルーヴでオーディエンスを弾けさせたかと思えば、黒いブルースと演歌をひと繫ぎにしてしまったかのような、聴く者の胸に纏わり付いて離れない生活感溢れるエモーショナルな歌も見事。昨年末にリリースした最新アルバム『GLORY DAYS』の収録曲を中心に7曲を披露し、剥き出しのロックンロールだけで4人がキラキラと輝いてしまうようなステージであった。「今日も皆さんの前で幸せでした!」と上中。すべての楽曲を披露すると、去り際に久保裕行(Dr.)は、新作ツアーの中で5/11に行われる恵比寿リキッドルーム公演について告知していた。他の日程も含めて、ぜひチェックして欲しい。

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この後のサブ・ステージは、たいがー・りーの独壇場である。いや、正確には、パフォーマンスを終えたばかりでお疲れのイナ戦・山田が助手件ツッコミみたいなポジションで登場していたのだが、ここで披露されるのはたいがーの趣味でもあるという発明品の数々。「傘立て」は、2本の傘の柄の部分が交差してハート・マークを形作るというカップル用グッズ。「喧嘩してるときはこう」と、片方の柄がそっぽを向いている。山田は「おれ、要る?」とぼやきながらも、このときは「YES/NO枕みたいな感じだ」と的確なコメントを残していた。そして「高校球児がバッターボックスに立つとき、お守りを握るのが納得いかない」ということで考案された「お攻め」も披露し、さらには「好きな人が出来ると、俺はその人の鼻歌を聴くのも好きになる」という思いから、好きな人の声を7音階でサンプリングしてメロディを形作ってみせる。「うがいをする音」や「クロールの息継ぎ」「ひろしくん好き(←たいがーの本名)」といった声までを7音階で拾う執念で、オーディエンスからは「キモい」「あぶない」といった声も当然のように飛ぶのだが、個人的にはかなり感動してしまった。気になって調べてみたら、たいがーと筆者は同い年であった。

TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
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たいがーに思わぬ文字数を裂いてしまったが、この日の主役なので良しとして、続いてはSPARKS GO GOである。よたよたと姿を見せたヤックが、いつも通りゆらりと両腕を掲げると沸き上がる歓声。そしてユルい立ち居振る舞いを瞬く間にかき消す、3ピースの豪腕ロックが立ち上がってくる。いちいち太文字で強調したくなるようなロックで、“SAD JUNGLE”から“Sandy’s Sunday”へと絶好調に飛ばしてゆくスパゴーであった。先のたいがーの芸といい、「若い頃に得た、痺れる感覚やときめきを、丁寧に育てて自信満々に見せつける」作法は、この日の出演アクトが共有して抱えているものかもしれない。ヤックは「芸人さん、時間も短いし可哀想だよね。来年は、俺らがあっち(サブ・ステージ)でやろうよ」とか言っていたが、O-EASTのメイン・ステージでさえ小さく思えてしまうようなロック・サウンドのスケール感は圧巻であった。イヴェントを仕切る役回りのテッチがドラムスを叩きながら歌う“PA PA PA”に続いては、「我々が一番の貧乏くじを引いた」とヤックが悪態をつきながらブラック・レザーに身を包んだたいがー・りーを招き入れ、彼がキャロルの“ファンキー・モンキー・ベイビー”を歌うカヴァーも披露。フィニッシュと同時に足元から蹴り上げたランドセルをキャッチし、「完」と書かれたランドセルの裏側をびろーんと見せるなど抜け目ない。お兄ちゃん・橘あつやも弾きまくり、終盤にかけては恐ろしくパワフルなダムドのカヴァー“New Rose”も盛り込まれて鉄壁のステージであった。

TESAGURI SMA Presents リー!リー!リー! たいがー・りー音楽祭 @ Shibuya O-EAST
イヴェントはここで終わりではなくて、『TESAGURI SMA』のテーマ曲として生み出されたインスト・チューンを披露するために、たいがー(Ba)、テッチ(Dr.)、ビートモ・木村(G.)、イナ戦・山田(G.)によるTESAGURI BANDが結集する。一度目はベースの音が出ておらず、「ベースの先生に出てきてもらいましょう!」とEBIが登場。ベース本体のヴォリュームが上がっていない、という初歩の指摘に笑いが巻き起こる。2度目はEBIも加わったツイン・ベース編成で、がっちりと演奏を成功させていた。アンコールでは、さすがに疲れているのか滑舌の回らないたいがーがどうにか出演者全員(響だけは仕事のため中座していた)を呼び込み、ローリング・ストーンズ“Jumpin' Jack Flash”のカヴァーを盛大にプレイ。たいがーによるヘナヘナのベースだけが放置プレイを受けていたが、このアンコールのために姿を見せたビートモ・秋葉の熱唱とミック・ジャガーの動きを見事にコピーする張り切りっぷりも目を引いた。やはり風変わりなイヴェントではあったけれど、めちゃくちゃ楽しい。「誰かのためにやるイヴェント」のモチベーションは、多くの出演者に良い影響を及ぼしていたのだと思う。第2回以降も、開催を期待したい。(小池宏和)
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