3月半ばに発表された、日本マドンナの解散。10代でシーンに颯爽と現れたばかりの彼女たちだけに、突然の発表に誰もが耳を疑った。その最後を見届けなければ納得できない、とばかりに、ラストライヴとなった彼女たちの企画には、たっくさんの人が訪れた。
まず、ステージに現れたのは、ギターとドラムでインストを鳴らす名古屋のガールズ・デュオ、ファンシーマルコポーロ。MCが書かれた画用紙に掲げるスタイルで、終始無言だったが、最後は「ありがとう 日本マドンナ」と掲げて、喝采を浴びていた。続いて、一瞬にして男臭い空気に変えたTHE 抱きしめるズ。「マドンナは、まだ死んでねえよ! 危篤だよ!」と、惜しむ思いを彼ららしく吐き出しながら、つんのめったロックンロールを響かせていく。オーディエンスも感情が開放され、会場の温度がぐっと高まっていく。
そして、いよいよその時が来てしまった。あんなの「まだ、死んでません、私たち!」という宣言と共に、日本マドンナの登場である。「あなたたちの心のマドンナになりたい!」と絶叫して“あいわなびゆあまどんな”が始まったかと思えば、“幸せカップルファッキンシット”では会場中が叫ぶ。あんなが「普段のライヴ、こんなにならないから。今さら!?」と言ってしまうくらいの熱狂を巻き起こしていった。バンドも、あんなのドスの利いた歌声やギラギラした視線、そして3人で向き合って音を鳴らす様子を見ていると、全然生気がほとばしっているように思える。しかも、今日はさとこ(Dr)の20歳の誕生日。「おめでとう!」が飛び交う祝福ムードに、やっぱり解散なんて嘘じゃないかな?と疑ってしまった。
しかし、中盤から、あんなの言葉に何かが滲みだす。“あるがままに”の前には「“あるがままに”は、私の音楽がやる意味が込められていると思うんです。素直でいるのと、好きっていうのが、大事なんだと」と言い、“寿司屋”の前には「(日本マドンナをやっていて)最後の方、辛かったんです。でも、この曲を歌うことによって許された気がした」と語る――聞いていて思った。人一倍純粋な少女たちは、早々に世の中の荒波に揉まれることによって、人一倍傷付いてしまったのではないだろうか。そして、表現の真ん中にあるピッカピカの刺を折らないために、解散を選んだのではないだろうか。ラストナンバーは、あんながベースを弾きながら独白のように《悲しいことも辛いことも この日本マドンナでたくさんありました だけど今 たくさんの人の顔が見えて ああ私 都会でよかったと思います》と歌いだした“田舎で暮らしたい”。最後の《幸せになりたいよ》という言葉が、とてもとても切実に響いてきてならなかった。
アンコールに応えて再びステージに現れた3人。あんなが「私の思いは伝わったかな?」と言うと、フロアから「もったいなーい!」と返す女の子が。すると「私はライヴ見ている側の人間だったし、寂しくて楽器を持ち始めて、こういう光景を見れたことは人生の誇りです。ありがとう」とあんな。そこでしんみりした空気を自らブッ壊すように「私はこれからもこういう生き様です!」と断言し、本当のラスト“ファックフォーエバー”へ。最後まで毒を撒き散らしながら、美しく散っていった日本マドンナ。その存在は、永遠に無垢なままで刻まれるだろう。演奏が終わっても「マドンナ! マドンナ!」コールが鳴り止まなかった。(高橋美穂)
日本マドンナ @ 新宿レッドクロス
2013.04.24