RADWIMPS「青とメメメ」@ 国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原

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「今朝起きたとき、ああ、こういうことなのかなって思って。ここに来れなかった人とかこの場にいられなかった人とかがみんな雨になってこの場に駆けつけたのかなって気になっててさ。だから俺は、そんな気持ちを込めて今日は最後まで歌います」――台風18号の接近で朝から豪雨に見舞われたこの日。しかし開演1時間前に奇跡的に雨がやみ、嘘みたいな青空が広がった頭上を仰ぎながら、野田洋次郎(Vo&G)はこう告げた。RADWIMPS初の野外ワンマンライヴ「青とメメメ」。会場は、宮城県・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原。彼が言う「ここに来れなかった人」や「この場にいられなかった人」が、2年半前の「あの日」に失われた魂を指していることは誰の目にも明らかであるように、鎮魂と復興というテーマのもとに行われたアクトは凄まじいものだった。この場に立ち会えたことを心から幸福と思えるような感動が、そこにはあったのだ。

開演時刻の16時ジャスト、「大変お待たせいたしました。ただいま開演です!」という場内アナウンスで幕を明けたアクト。“One man live”で勢いよくスタートを切ると、続く“ギミギミック”でゴリゴリの音塊を叩きつけて早くも場内を制圧していく。“なんちって”のブレイクでは桑原彰(G)による恒例のトーク&「もう一回!」のコールも展開され、みるみる一体感を高めていくステージとフィールド。さらに「俺がどんだけこの日を楽しみにしてたかわからないでしょ? ここに2万人いるけど、俺がダントツ一番なわけですよ」という野田のやや挑発的(?)なファーストMCが、オーディエンスとの距離をさらにグッと縮めていく。そして――続けて野田が口にした冒頭の言葉に、フィールドから温かな拍手が送られたのであった。

RADWIMPS「青とメメメ」@ 国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原
すでに多くのアーティストが震災以降の東北で特別なライヴを行っている中、RADWIMPSはどんなライヴを見せてくれるのか。そんな期待に胸ふくらませながら会場に足を運んだのだが、答えは潔いほどシンプルだった。とにかく、ひたすら曲をやる。余計な説明や過剰な演出を排除して、少しでも多くの曲をプレイすることこそが最も尊い祈りとなる。そう言わんばかりに、野田の言葉を借りれば「じゃんじゃん曲をやっていく」4人の姿に、何より胸が揺さぶられる。かと言って、ただ淡々と曲をプレイするわけじゃなく、曲ごとに巧妙な仕掛けを施してエンタテインメント性溢れているショウとして魅せている点がまた素晴らしかった。桑原と武田祐介(B)のグルーヴィーなセッションが披露された“遠恋”、山口智史(Dr)のドラムソロに合わせて野田がハイハットとタムを乱れ打ちした“ヒキコモリロリン”など、曲ごとに必ずと言っていいほど見せ場が用意されていた。そのたびにフィールドが沸き返り、オーディエンスの笑顔が弾けたのは言うまでもない。さらには「ライヴで初めてやる曲をやってもいいですか?」と、Charaに楽曲提供した“ラブラドール”まで披露。この日のためにあらゆる準備と努力を重ね、アイデアを尽くして練り上げられたパフォーマンスの完成度の高さ、それを驚くべき結束力で見せていく4人の気迫には、身震いさせられるばかりだ。

中盤では、震災で水没したグランドピアノをこの日のために修復した様子を追ったドキュメンタリー映像の後、そのピアノを実際にステージに上げて演奏するシーンも。“ブレス”を弾き語りし終え、ピアノをポロポロと奏でながら「本当いい音するね。泣きそうになる」と呟いた野田、ここで感極まったのか、背中を丸めながら嗚咽してしまう。フィールドからは「がんばれー!」の声。そこから体勢を立て直して“螢”へと流れた場面は、この日の大きなハイライトだったと思う。その後に演奏された“ブリキ”の慈愛に満ちた響きと、「生きている俺らがこの世界の代表だから。チクショーっていう世の中でも、ウチらもその中の一員だし、その世界の責任を負っているから。誰かのせいにするとかじゃなく、思いっ切り幸せな世界にしていきましょう。きっと死ぬまでとんでもないことがまだまだあると思うけど、幸せな世界にすることを諦めないでいきましょう」という野田のMCとともに、この日会場を訪れた人すべてにとって忘れがたい時間となったことだろう。

RADWIMPS「青とメメメ」@ 国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原
生命力の塊のような“DADA”。妖しい旋律が浮遊する“G行為”、ソリッドな疾走感に満ちた“おしゃかしゃま”でフィールドを揺さぶり、“夢番地”の静謐なサウンドで沈みゆく太陽を見送った後は、“トレモロ”“ふたりごと”の連打で夜空に緑のレーザー光線が駆け巡り、大きなシンガロングが沸き起こる。「最後、もうひとハッチャケできるかい?」と“君と羊と青”のエンディングを繰り返しながらフィールドの温度を上げると、“俺色スカイ”で軽やかに弾け、胸が梳くようなエレポップ風のアンサンブルに盛大なハンドクラップが送られた“ドリーマーズ・ハイ”へ。この日一番の拍手喝采と「洋次郎―!」「ありがとう!」などの歓声が飛び交うフィールドに、「いつか君たちに大好きな人ができたら、それぐらいでっかい声で名前を呼んであげて、それぐらいでっかい声で愛してると言ってあげてください」と野田。さらにオーディエンスへの感謝を伝える山口のMCを挟んで、実はこのイベントを去年開催したかったこと、今日に至るまで本当に沢山の人々に関わってもらったことが野田の口から告げられる。そして「明日からまた日常がはじまると思うけど、今日のことを何度でも何度でも思い出しながら生きていこうと思います。本当に素晴らしい時間をありがとう」という言葉で結んで、“オーダーメイド”で本編終了。

アンコールでは、大型ビジョンに映し出される鼻メガネ&赤Tシャツ姿の4人。ザワザワとどよめくフィールドを尻目に、下手側のフィールドからカートに乗った味噌汁’sが登場! そのまま客席エリア後方に設けられたミニ・ステージに上り、“ジェニファー山田さん”をプレイ。味噌汁’sとしてのライヴは7年振りということで、このサプライズにはオーディエンスも狂喜乱舞するばかりだ。さらに《ソースより醤油だろ チーズよりも味噌だろ》《僕は日本人!》という歌詞が痛快な新曲も披露して、ステージを降りる4人。ダブル・アンコールでは再びRADWIMPSとしてメイン・ステージに登場し、まずは新曲“ラストバージン”を披露。野田の弾き語りから青く壮大なロックンロールへと発展するスローテンポの音像でフィールドを包み込み、最後は“有心論”で特大のシンガロングとハンドクラップを導いて感動のフィナーレへ。すべてを出し切ったような表情で手を繋いで深々とお辞儀する4人の姿に、万雷の拍手が降り注いだことは言うまでもない。

RADWIMPS「青とメメメ」@ 国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原
気づけば開演から終演までの3時間15分、一粒も雨が降ることはなかった。それも「必然」だったと思えるような、神がかり的なステージ――というのは少々センチメンタルすぎるかもしれないが、そう声高に叫ばずにはいられないほどの凄まじいパワーが、この日のライヴには働いていたと思う。勿論、その奇跡を呼び込んだのは、この日に賭けたバンドとスタッフ、そして2万人のオーディエンスの並々ならぬ想いが結実したからに他ならない。ライヴ中、何度も「愛してるよ!」と叫んでいた野田。その惜しみない愛情を下敷きにして生み出されたRADWIMPSの音楽が、浮き沈みの激しい現実を乗り越えていく力となること、そして、時に人智を超えた奇跡や感動を呼び起こすこと――途方もないスケールのエネルギーとエモーションが宿ったこの日のライヴは、その事実をまざまざと証明していたと思う。

なお、終演後の9月16日0時から24時間限定で新曲“五月の蝿”がストリーミング公開されている(http://radwimps.jp/gogatsunohae/)。バンドの歴史どころか日本のロックシーンの歴史にも深く刻み込まれるだろう至上の夜を大成功に終えた今もなお、RADWIMPSは力強く前進していくのだ。(齋藤美穂)

セットリスト
1. One man live
2. ギミギミック
3. なんちって
4. 05410-(ん)
5. 遠恋
6. ヒキコモリロリン
7. 指切りげんまん
8. シザースタンド
9. セプテンバーさん
10. シュプレヒコール
11. ます。
12. ラブラドール
13. いいんですか?
14. ブレス
15. 螢
16. ブリキ
17. DADA
18. G行為
19. おしゃかしゃま
20. 夢番地
21. トレモロ
22. ふたりごと
23. 君と羊と青
24. 俺色スカイ
25. ドリーマーズ・ハイ
26. オーダーメイド
アンコール1
27. ジェニファー山田さん
28. にっぽんぽん
アンコール2
29. ラストバージン
30. 有心論
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