開演と同時に超満員の渋谷クラブクアトロ中の情熱が瞬間沸騰、フロア激震のダンス・ロック天国へ! 10月30日にリリースされたばかりの1stフルアルバム『DOPPEL』(デイリーチャート最高2位!)を引っ提げて、東京・大阪で開催されるリリース記念ライブ=『KANA-BOON 東阪ワンマンライブ「僕がステージに立ったら」』の初日:東京・渋谷クラブクアトロ公演。まだ11月15日(金)の大阪・心斎橋BIG CAT公演が控えているためセットリストの掲載は割愛、ここでは演奏曲目の一部に触れるに留めさせていただくが、エネルギッシュなビートと極彩色のメロディが聴く者の衝動とセンチメントをぐいぐいと突き上げながら、会場一丸となって歓喜の果てへと爆走するような、頼もしいくらいに力強い熱演が展開されていた。
「僕たち3枚しかリリースしてないから、リリースしてる分の曲、全部やりますから!」という谷口の言葉通り、今年4月のインディー・ミニアルバム『僕がCDを出したら』、メジャー・デビュー・シングル『盛者必衰の理、お断り』、そして1stフルアルバム『DOPPEL』という全国流通盤3作品に収録された全19曲を、アンコールまで含め漏れなくびっちり披露していたこの日のアクト。シングル曲“盛者必衰の理、お断り”はもちろんのこと、谷口鮪のキュートでポップな歌メロと流星のような輝度と飛翔感に満ちた“1.2. step to you”、古賀隼斗(G・Cho)の鋭利なストロークが繰り出すリフと「こいちゃん」こと小泉貴裕(Dr)&「めしだ」こと飯田祐馬(B)の爆走16ビートがしのぎを削る“ウォーリーヒーロー”……オーディエンスの心を瞬時に鷲掴みにするキャッチーな楽曲と、触れた者の情熱を猛烈な勢いでドライブさせる高速BPMの(キック4つ打ちをメインとした)ビートの疾走感が、立っているだけで汗ばむほどのクアトロ中の焦燥感と高揚感を同時にMAXまで無限増幅していく。このままこの場所に留まっていてはいけないようなソワソワ感と、息が詰まるような切なさと、無敵感に満ちた開放的なダイナミズム――それらが渾然一体となって、フロアをジャンプとダンスででっかく揺さぶり、一面に拳を突き上げさせていく。
何より、この日のライブでリアルに浮かび上がってきたのは、ハイハット裏打ち+キック4つ打ちというダンス・ミュージック特有のリズム・パターンを高速回転させたビートも、剛軟自在のカラフルなギター・アレンジも、弾むようなメロディも、すべてはKANA-BOONが鳴らすロックンロールのために当然の、そして必要不可欠なツールとして血肉化されている、ということだ。より切実に、より熱く、胸を焦がしてくれる音楽を鳴らすための必然として、彼らはこのビートとサウンドを選んだ。生半可な気持ちでやったらネタ一発のコミックソングにもなりかねない『平家物語』&『寿限無』という大ネタを巻き込んだ“盛者必衰の理、お断り”が、ブレーキの壊れたスピード感に満ちたロックンロールとして炸裂してオーディエンスを踊り狂わせていたのも、ひとえに彼ら4人の揺るぎない闘争心ゆえだ。
そんな熱量に満ちた演奏の空気が、いざMCになると一転。「最近、すごいポケモンが欲しくて」というめしだは「欲しすぎて、でもお金なくて全然買えへんってなって。作るしかねえなと思って、作ってきたんですけど」とお手製のピカチュウを取り出し、「ピカチュウだけやと味気ないなと思って、上にサトシつけたんです(笑)。貯金箱なんですけど、穴がないんで、お金を出したい時はサトシを引きちぎるんです。こちらを、整理番号1番の人にプレゼントします!」と会場の爆笑を誘う。古賀は「KANA-BOONを今年知った人とかは、全国流通して、メジャー・デビューして、ここ1年で育ってきたみたいな捉え方をしてると思うんですけど。僕らは高校1年生の頃に鮪に出会って……」という話から「だけど俺たちずっと頑張ってきた」的な深イイ話に持っていくのかと思いきや、「自分はもともとドラム志望で、でも当時の先輩が『俺はドラムマニアやったことあるから経験者』のひとことでドラムの座を奪われ(しかもそれは嘘だった)、次に借り物のベースを弾いてたら持ち主が『やっぱり自分で弾く』と言い出したので、結局ギターになった」という打ち明け話で、すでに和んでいた場の空気をさらにほぐしていく。
「高校の頃からこんな感じなんですよ。だからたぶん、30とかになってもこんな感じでやってて、いろいろ心配事もあるかと思うんですけど、大丈夫です。僕ら変わらない……変われないんで」と谷口。音楽以外は至ってマイペースな4人が気合い一閃、力を合わせて爆発的なバイタリティと加速度を描き出していくKANA-BOON独自のマジックの奥底に触れたような気がして、思わず嬉しくなった。さらに、この日は何度も「こいちゃーん!」コールを巻き起こしていた小泉が、“ないものねだり”の割れんばかりのクラップとともに(若干リズムに乗り損ねながらも)轟々と噴き上がらせたコール&レスポンス。「今年は初めてのことがいっぱいあって、たくさん夢が叶った」と感慨深げに語る谷口が《あの夜僕はフェスに出たいと話した あの夜僕はCDを出したいと言った》と切々と歌い上げた“眠れぬ夜の君のため”……それらひとつひとつが鮮烈な名場面として脳裏に焼きついていく。

「僕たちも、いろんなことを言われるようになって。悪口とかも言われるし。今まではものすごくそういうのを気にしてて、『あぁ~』って思いながら見てたけど、もうそういうことは気にしないようにして。こうやって目の前にいるみなさまを、これからは信じて、ちゃんとやっていこうと思えるようになりました」と、終盤のMCで谷口は静かに、メジャー移籍へと至った2013年の激動を振り返って語っていた。「今まで自分を信じてあげることができなくて、だから人も信じられなくて……今日来られなかった人もたぶんたくさんいるんですけど、そういう人たちのおかげで、何のために音楽をやっていくのか、何のために大きくなりたいのか、気づけました。みんなが誇れるバンドになっていくので。忘れないでください。今日のこのライブのことを。これからもよろしくお願いします」……そんな谷口の真摯な言葉が、《眠れぬ森の君にあげるよ 覚めない夢を。》(“眠れぬ夜の君のため”)というフレーズの余韻とともに、深く強く胸に残った。11月15日の大阪公演の後も、『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY』『COUNTDOWN JAPAN 13/14』『Livemasters Inc. COUNTDOWN "GT2014"』と年末フェス連戦が控えている2013年のKANA-BOON。まさに極限進化の真っ只中にある4人の「今」に、もっともっと1人でも多くの人にぜひ触れてほしい。切に願う。(高橋智樹)