ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST - all pics by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)all pics by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)
「もう、日本全国51本やってるとね、自分の家からライブ会場に来るっていうのが、いちばん非日常なんですよ。今日がいちばん勝手が違う(笑)」というナカヤマシンペイ(Dr)のMCを受けて、ホリエアツシ(Vo・G・Piano)が「でも、それもツアーだなと思ったから、家から電車乗って集合場所まで行く時も、ビデオカメラ回しちゃったよ」と答え、「今日のコーストに向けてのメンタルはもう、攻め攻め! 今日攻めてると思ったでしょ?」とソールドアウト満場の新木場STUDIO COASTの観客に語りかける頃には、すでにフロアは最高の熱気と歓喜で満ちあふれている。2月17日の日本武道館ワンマン、5月1日のベスト・アルバム『21st CENTURY ROCK BAND』リリース、そして5月8日から計52公演に及ぶ一大全国ツアー『21st CENTURY ROCK BAND TOUR』を開催……2003年のメジャー1stシングル『TRAVELING GARGOYLE』から10周年を迎える彼らの足跡を、オーディエンスと一丸となって祝福しつつ、まさにライブを日常としながら2013年を駆け抜けてきたストレイテナー。夏フェスを挟んで9月28日からスタートしたツアー後半戦もいよいよ終盤。セミファイナルのこの日のライブも、STUDIO COAST丸ごとロックのその先の目映い世界へと導いてみせるような、感激のロック・アクトだった。

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST
まだツアー・ファイナル=12月7日の沖縄公演が控えているので、ここではセットリストは割愛、一部の曲目に触れるに留めさせていただくが、9月11日にリリースされた最新ミニアルバム『Resplendent』の楽曲も網羅したこの日の内容は、「ベスト盤『21st CENTURY ROCK BAND』を主体としたライブ」というよりも、半年以上に及ぶツアーを経てきた今の視点で自らのヒストリーを再び俯瞰しつつ、より高純度なストレイテナーのロック・ワールドを提示するような、実に意欲的なものだった。ホリエ&大山純(G)の鋭利なギター・サウンド冴え渡る“From Noon Till Dawn”のエネルギッシュな爆走感は同時に、どこまでも清冽な開放感に満ちていたし、シンペイ&日向秀和(B)の豪快なダンス・ビート轟く“KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]”は、聴く者を振り落とすようなスリルよりはむしろ、目の前の誰ひとり残さずそのサウンドで抱き止めて疾駆するようなパワーに満ちていた。ホリエの「泣いちゃうかもしれない曲を……」という言葉と静謐なピアノの調べとともに響き渡ったメロディアスな名曲“シンクロ”のめくるめく麗しのサウンドスケープ。そして、『Resplendent』の“シンデレラソング”! ロックのダイナミズムの結晶のようなイントロの重量感あふれるキメが鳴った瞬間に沸き上がる大歓声! 16ビート+キック4つ打ち/アグレッシブにうねるベースライン/獰猛にしてクリアなギター・サウンド/決然と響くホリエの熱唱がぐいぐいと高揚感の頂へ昇り詰めながら、STUDIO COASTをでっかく揺さぶる狂騒空間を生み出し、ピークポイント満載のこの日のアクトの中で強い輝きを放っていた。

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST
何より、この日のライブで最も感慨深かったのは、ロック・ミュージックの宇宙をソリッドな意志の座標で貫いてみせるようなテナー唯一無二の凛とした楽曲&アンサンブルが、それこそインディーズ時代からの楽曲も含め、ひとつのでっかいパースを描いて広がっていたことだ。2人から3人になり、4人になり、そのつど変化してきたサウンドも、すべてはより澱みなく揺るぎないロックを目指すための極限進化だったし、それを支える不屈の闘志が彼らにはあった。4人のバンド・サウンドがタイトに鍛え上がることで、その音世界はより透明度と切れ味を増し、情熱が燃え盛れば燃え盛るほど、そのバンド・アンサンブルはより堂々とした存在感とスケール感に満ちていく。そして、ストレイテナーの純粋なる生命力そのもののように伸びやかに広がるホリエの歌声が、この日の多幸感をさらに天井知らずに煽っていた。

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST
「なんだこの緊張感は! 初日みたいな感じで演奏に臨んじゃってるよ。ドキドキしてるよ。30半ばのおじさんたちがドキドキしてる!(笑)」とシンペイは言っていたが、この日のライブの汗ばむような熱量に満ちた空気感からは、テナーの4人とオーディエンスとの絆が確かに滲んでいた。「2ヵ月ぶりぐらいに今朝やっと、自分の部屋の掃除とか片付けとかできて……51本分の手紙とかいっぱいもらうわけよ。それを片付けしながら読んでたら、もう……大袈裟でも何でもなく、俺はあなたたちに生かされてると思いました。ありがとう!」と呼びかけるシンペイに続けて、「それと、ストレイテナーありがとう!って言いたいね。さっき楽屋で言ったんだけど」とひなっち。「ストレイテナーがなかったら、人生全然違うことになってたから。ありがとうって言いました、メンバーに」。フロア一面から惜しみない拍手が沸き上がっていった。

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST
一方、「来年、11年目もよろしくお願いします!」と言っていたホリエは、アンコールのMCではメジャー・デビュー10周年記念日・10月16日の金沢金沢EIGHT HALL公演に触れて、「ケーキ出てきたんですよ、アンコールの時に。あれね、『ケーキ出して』って僕が言いました!」とまさかのカミングアウト。「だけど、それともう1個、EMIのディレクターさんから、シャンパンが一緒に出てきたんですよ。それでグッときて、泣いちゃったんだよね(笑)。Ustreamしてたんだけど、俺、背中しか映ってなくて。ただ歌が下手な人みたいな印象に……」というホリエに、「や、伝わってたよ。『アツシ泣いてる』ってちゃんとツイートされてたから大丈夫。それとこれとは……ケーキがヤラセなのをバラすのは別だ!(笑)」とシンペイが突っ込んで、会場を爆笑に包んでいく。さらに、「今年はストレイテナーは感謝の1年だったから、わりと守ったのよ。でも、来年からまた攻めていくから。頼むよ!」と熱気と汗と祝祭感まみれのオーディエンスに語りかけるホリエが続けて「俺たちが、道を作っていきます!」と静かに、力強く宣誓する声に、ひときわ高らかな拍手喝采が湧き起こっていた。

ストレイテナー @ 新木場STUDIO COAST
『21st CENTURY ROCK BAND TOUR』は12月7日:沖縄・桜坂セントラル公演でグランド・フィナーレを迎えるが、今月12日には同じくここ新木場STUDIO COASTにて長年の盟友:ASIAN KUNG-FU GENERATION / ART-SCHOOLとのクリスマス・ライブが控えているし、27日には『New Audiogram ver.7.2』(w/tricot)、28日には『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY』、そして30日には『COUNTDOWN JAPAN 13/14』の出演が控えていて……といった具合に2013年ラスト1ヵ月も止まらないストレイテナーのさらなる「攻め」に想いを馳せながら、すべての音が止んだ後も胸が躍って仕方がなかった。(高橋智樹)
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