TBS系ドラマ『コウノドリ』、第7話は助産師の小松留美子（吉田羊）が腹痛で倒れ、産科医の鴻鳥サクラ（綾野剛）や四宮春樹（星野源）に心配されて検査を受けた。結果は子宮内膜症による子宮腺筋症、卵巣チョコレート嚢胞で将来的に卵巣がんになる可能性もある。「こんな状態で仕事してたなんて……」と鴻鳥先生は心を痛め、「（子宮と卵巣の）全摘を勧めるのが本人のためだ」と四宮先生は判断。「私から子宮がなくなっても世界が平和ならそれでいいか！ はっはっは」と、いつも通り明るく振る舞おうとする小松だけど手術をすることは「この先、子供を産まない人生を送る決断」でもあり、悩んでいた。助産師として常に妊婦を励まし、周りの仲間を笑顔にしながら頑張ってきた彼女だが、自分の体の問題を放置して悪化させていたことは周りの仲間にとってもショッキングな出来事だった。今度は自分たちが小松さんの力になってあげる番なんだ、と言わんばかりに振る舞う姿がチーム・コウノドリの結束の強さを物語る。

「お母さんになる人生と、お母さんにならない人生。何が違うのかな？」――小松が思わずそんなことを漏らす場面もあったが、ペルソナ総合医療センターには「お母さんになる人生」を選んだからこそ闘っている産科医もいた。鴻鳥先生や四宮先生らのかつての後輩でもあり、産後復帰したばかりのシングルマザー・倉崎恵美（松本若菜）だ。まだ子供が小さい倉崎先生を周りは「無理しないように」と気遣うも、「私だけ特別扱いしてほしくない」と不満げな様子。四宮先生は「意地っ張りだな」などと言うが、「女手ひとつで子供を育てて行くって相当な覚悟がなきゃできない」と倉崎先生の気持ちを理解していたのは小松だった。倉崎先生を食堂で見つけた小松は、「お客さん肩凝ってますね。もうちょっと力抜いて仕事しましょうか」とマッサージをはじめる。そこに救命科に移って奮闘中の下屋加江（松岡茉優）もやってきて「いいな、私もやってほしい」と3人でマッサージ大会に。「私には肩の力を抜いている時間がありません。学ばなきゃいけないことが多すぎて」と言う下屋先生に「そうしたら、もう少し自分を認めてあげましょうか。1日の終わりに『よく頑張りました』って自分に声をかけてあげてください」と小松が返した場面は、彼女が助産師として長年いかに色んな女性に大きな優しさと愛情を持って接してきたかを感じさせた。

そんなある日の夜、倉崎先生が勤務を終えて保育園のお迎えに行こうとすると、担当している妊婦の容態が急変。「ここはチームだよ。少しくらい仲間に助けられたっていいだろ？」と鴻鳥先生は倉崎先生を帰そうとしたが、小松は「もし良ければ、私がお迎えに行こうか？」と提案。「ここがチームならこんな協力の仕方もありだよね？」と言う小松の気遣いに思わず泣きそうになる倉崎先生。子供を産む人生も、産まない人生もあるけれど、女同士だからわかりあえることってある。手術への決断ができないまま、倉崎先生の娘を抱いて夜道を歩く小松の姿は何だか切なかった。無事にその夜の勤務を終え、小松は鴻鳥先生に連れ出されて行ったピアノのあるバーで、BABYの曲をリクエスト。その演奏を聴いて泣きながら、「私決めたよ、悔しいけど仕方ない。これが私の人生だ」と手術をする決意をした小松に、鴻鳥先生が「頑張ってる小松さんが好きだけど、頑張ってない小松さんも好きです。だからひとりで抱え込まないで。みんな小松さんの味方ですから」と励ます場面は涙なくしては見られない名シーンだった。それにしても『コウノドリ』は屋上もしくはピアノ演奏シーンで本音を語るという演出が多いが、今回は屋上のテラス＋ピアノ演奏という特別なシチュエーションが用意されていた。

いざ手術の際、麻酔をする前に小松が「ちょっと待って」と何度も深呼吸する姿がリアルに胸に迫った。手術をする前の自分の体には、人生には、もう2度と戻れないという、その重みを表現する場面だった。その頃、産科の控室でソワソワしている鴻鳥先生と四宮先生が並んで焼きそばとジャムパンを食べながらふと目を合わせ、何故か食べていたものを交換するシーンは謎すぎたが面白かった。小松の病室にそれらを差し入れしていたのも、男たちの不器用な優しさだ。「親も兄弟も夫も子供もいない私にとって子宮は最後の頼りだった」と小松は言っていたが、病気が発覚して周りのみんなが心配したり気遣ってくれたことで「私の中から大事なものがなくなっちゃったけどさ、私には支えてくれる仲間がいる。それってすげえ心強いんだよ」と気付いたことは新たな人生の支えになるはず。「小松留美子、ただいま帰還しました！」と明るく職場に戻ったのが彼女らしかった。

さらに今回はピアニストのBABYこと鴻鳥先生が出演するライブハウスに四宮先生が足を運び、終演後に「実は……相談があるんだ」と切り出したところで終わった。ここ数回はチーム・コウノドリの絆を試されるようなことばかりだが、次回は四宮先生に何が起きるのだろうか。（上野三樹）