TBS系ドラマ『コウノドリ』、第5話は妊娠27週の切迫早産で緊急入院を余儀なくされた西山瑞希(篠原ゆき子)が登場。早産になる可能性があるので、赤ちゃんが1日でも長くお腹の中で過ごせるように病院で安静に過ごしましょう、と担当医の鴻鳥サクラ(綾野剛)が説明。同じく切迫早産で入院中の七村ひかる(矢沢心)は「お互いにがんばって健康な赤ちゃんを産みましょうね!」と同室に仲間ができたことを喜び、ふたりはすぐに意気投合する。洋菓子店を経営する西山夫婦は、産まれてくる子供に「あかり」という名前をつけて第一子の誕生を心待ちにしていた。しかし32週のエコー検査で鴻鳥先生は瑞希のお腹の赤ちゃんの心拍が確認できないことに気付く。すぐに四宮先生(星野源)も呼び再度エコーするが、彼も静かに首を横に振った。原因不明のIUFD(子宮内胎児死亡)と診断され、母体へのリスクも考えて翌日の朝に出産することが決まる。瑞希は夫とふたりきりになると「ごめんね、ごめん……!」と泣き出す。あまりにも悲しい絶望の夜だ。
今回は下屋先生(松岡茉優)の緊急帝王切開による出産で超低出生体重児として産まれた翔太くんの両親の葛藤も同時に描かれた。医師としては一刻を争う状況の中、赤ちゃんを助けたい一心で判断を下していくが、急な展開に心がついていけなかったり思い描いていなかった状況を受け入れられない親もいる。障害が残る可能性が高いと聞き「手術をしてまで助けて欲しいと思えません」と言う父親と子供の顔さえ見ることが出来ない母親に、下屋先生はショックを受け「患者と寄り添うってどういうことなんだろう」と悩む。2年前の『コウノドリ』前シリーズでは、超低出生体重児として産まれた赤ちゃんの親が「後遺症が残る可能性が高いなら何故助けたのか」と新生児科の新井恵美(山口紗弥加)を責めたシーンがあった。自分は何のためにがんばっているのだろうと思うことは過酷な状況の中で働いている医師たちにとって非常に辛く、特に使命感の強かった新井先生はそれ以降、病院から姿を消してしまった。しかし下屋先生は自ら手紙を書き、両親を説得していく。白川先生(坂口健太郎)の「ベビーは俺がしっかり観てるから、絶対諦めないから」という真っ直ぐな姿勢に刺激を受けたようだ。
瑞希が既に心拍のない赤ちゃんを陣痛促進剤を使って産んだ朝。助産師の小松(吉田羊)は妊婦の悲しみに寄り添いながら、赤ちゃんは戸籍に残してあげることはできないと説明し、だけど「写真や手形、髪の毛や爪を切って残してもいい。あかりちゃんのためにしてあげたいと思うことがあれば何でも協力するから」と言った。夫婦は病室の小さなベビーバスで赤ちゃんを沐浴させることにした。かけがえのない子供との思い出のシーンは大きな悲しみの中のひとときの癒やしとして描かれる。
何故、子宮内胎児死亡という結果になったのかは鴻鳥先生にもわからなかった。出産前に「私のせいですか? 何で赤ちゃん死んじゃったんですか?」と気持ちをぶつける瑞希に「僕には今回のことを予測することができませんでした。結果としてこうなってしまい、申し訳ありませんでした」と頭を下げたシーンが印象的だった。後に四宮先生は下屋先生に「サクラが頭を下げたのは患者の感情の圧を下げる為だ。死産の四分の一は原因不明なんだ。俺なら絶対に頭を下げない。次なる出産の為に綿密な計画を立てるだけだ」と言っていた。母親たちの行き場のない悲しみを少しでも引き受けようとするのもまた、鴻鳥先生の医師としての在り方なのだろう。そして彼自身はそんな医師としての想いを抱えたまま、ピアノを弾くことで、祈り、癒やしや救いを求める姿もドラマ『コウノドリ』では描かれている。
瑞希と同室だった七村ひかるは、やがて元気な赤ちゃんを産んだ。ひかるが瑞希の死産を知った時の号泣も、病院内の「祈りの部屋」で退院前のお見送りをした場面も、その時に瑞希の夫が出産祝いに作った大きなケーキに書かれていた「あかり、おめでとう ママ、ありがとう」のメッセージも――もう涙が止まらなくて、泣いてたらあっという間に終わっていた第5話だった。これからの展開も医師たちに更なる試練が待ち受けているよう。心して観続けたい。(上野三樹)
切迫早産で入院した妊婦たちの明暗。声なき出産に涙が止まらない。ドラマ『コウノドリ』第5話をレポ
2017.11.12 13:00