TBS系ドラマ『コウノドリ』、第8話。四宮先生（星野源）は父親が倒れたという妹（相楽樹）からの電話を受けて、石川県の能登にある実家に帰った。町で唯一の産科医である四宮の父は、何事もなかったように診察を続けていたが、院長から父がステージⅣの肺がんであることを聞かされる。「働きながら治療するなんて無理だ。さっさと引退して治療に専念して欲しい」と願う息子に、「この町のお産を守ることが使命だと思ってる。だから最後までやらせてくれ」と譲らない父親。同じようなメガネをかけたふたりは頑固なところまで似たもの親子。しかしまだそんな強がりを言える元気があることにほっとした部分もあったのだろう、「勝手にすればいい」と四宮先生は故郷から再びペルソナ総合医療センターで勤務する日常へと帰ってきた。

その頃、ペルソナでは吸引分娩で出産をした風間真帆（芦名星）の赤ちゃんが白川先生（坂口健太郎）の処置により新生児遷延性肺高血圧症と診断された。すぐにNICUで治療に取り掛かるも、なかなか効果が上がらない。「健康で元気な赤ちゃんが産めなかったのは私が悪いんですよね？」と自分を責める母親に鴻鳥先生（綾野剛）は「そんなふうに自分を責めないでください。赤ちゃんにつながれているたくさんの管は赤ちゃんが今、一生懸命にがんばっている証です。頑張り屋さんの赤ちゃんを誇りに思ってください」と励ました。

「ワンランク上の新生児科医を目指したい」と思っている白川先生は自信をもって治療を続けるも、赤ちゃんを心配した周りの看護師が今橋先生（大森南朋）に相談。エコー検査により「この子は肺の異常ではなく生まれつきの心臓病かもしれない」という疑いが生じ、総肺静脈還流異常症であることが判明。すぐに大学病院に救急搬送して手術をする必要があることを家族に説明するも、「うちの子は、肺じゃなくて心臓が悪かったってことですか!?」、「それって医療ミスですよね？」と父親に責められて白川先生は完全に自信を喪失。赤ちゃんを搬送する際も自分が家族に付き添わないほうがいいと判断したが「責任を持って最後まで見届けなさい！自分の実力を過信して赤ちゃんの生命を危険に晒したんだ。自分の過ちから逃げるんじゃない」と今橋先生に厳しい言葉をかけられる。

搬送先の大学病院で白川先生は意外な人物と再会した。以前、ペルソナのNICUで新生児科医として勤務していた新井先生（山口紗弥加）が、今はこの病院の小児科で働いているのだという。ペルソナ時代の彼女は徹夜も惜しまず、プライベートも犠牲にして働いてきたが、今の白川先生と同じような失敗を経験して仕事を続けることができなくなった。白川先生が事情を話すと、かつての自分自身と重なったのか「医者、辞めたいと思ってる？」と聞いた。新井先生はペルソナを辞めてから実家でのんびりとした生活をしていたが、放り出してきてしまった赤ちゃんたちのことを毎日思い出していたという。そして「今はNICUを退院した子どもたちを外来で応援してるの。やっぱり子供が好きなんだよね」と笑顔を見せた。ペルソナ時代には「鉄仮面」と呼ばれていた彼女の穏やかな今があった。

救急搬送された赤ちゃんの手術は無事に終わり、ペルソナを退院していく風間夫妻に白川先生はやっとの思いで声をかけ「力及ばず申し訳ありませんでした」と頭を下げた。NICUに戻り「悔しいです……」と泣く白川先生に、今橋先生は「その気持ち、忘れないでね」と声をかける。そんな今回の経験を踏まえて白川先生もまた、新たな道を歩むことを決断した。ペルソナを辞めて小児循環器科の研修を希望しているという。研修医時代からの仲間である下屋先生（松岡茉優）に「自分がどんな医者になるかばっかり考えてて、患者に寄り添う気持ちを見失ってた。今回のことでよくわかったんだ、自分がまだまだぺーぺーだってことに」と話し、「俺はいつか最強の新生児科医になる」と誓った。

冒頭には四宮先生が「大学病院で研究に専念しないかと誘われてる」と鴻鳥先生に相談する場面もあったし、ペルソナの医師たちが次々と、それぞれの新たな道を模索したり、岐路に立ったりしている。「僕にもきっと選ぶべき道があるはずだ」――そう胸の内を語った鴻鳥先生は今後どんな道を選ぶのだろうか。ドラマ『コウノドリ』は、いよいよクライマックスへと向かっていく。（上野三樹）