鴻鳥先生(綾野剛)「ペルソナが僕の家族か」と四宮先生(星野源)らを送り出した『コウノドリ』最終話レポ

TBS系ドラマ『コウノドリ』、いよいよ最終話。序盤では前回、出生前診断で胎児がダウン症であると診断された高山透子(初音映莉子)・光弘(石田卓也)夫妻が、出産を迎えるまでの不安が描かれた。鴻鳥先生(綾野剛)はペルソナ総合医療センターのスタッフに「特別な子供の育児をするって意気込みよりも、赤ちゃんが可愛いって気持ちが湧いてくるようなサポートをすることが大事」と語る。決して押し付けにならないように見守りつつ、メンタル面でもしっかりと支えようとする医師たち。しかし「たとえ夫と別れてひとりになったとしてもこの子を育てなきゃ」と意気込む妻と、どこかまだ実感が湧いていない夫では足並みが揃わない。ソーシャルワーカーの勧めで、ふたりはダウン症の子供のいる家族の集まりに顔を出してみることに。前回は、出生前診断でダウン症と診断された別の夫婦が中絶を選択する様をリアルに描き、その葛藤と命の重みを伝えていたが、産むと選択した夫婦もまた大きな不安を抱えながら出産までの日々を過ごしていくのだった。しかし実際にダウン症の子供を育てる家族たちの姿を見て、高山夫妻は少し前向きな気持ちになった。それは「ひとりじゃないんだ」という思い。夫が「透子はひとりじゃない。この子もひとりじゃない」と言ったこの言葉は家族の絆を強くした。今橋先生(大森南朋)がふたりに教えてくれた「オランダへようこそ」というエミリー・パール・キングスレイの詩も彼らの支えになったようだ。

そして今回は助産師である小松先生(吉田羊)の同期である武田京子(須藤理彩)の出産も。その昔、助産師になると決めた時に「お互いの赤ちゃんを取り上げる」と約束したふたり。いざ陣痛が始まったものの、なかなかお産は進まず、緊急帝王切開に。赤ちゃんは無事に生まれたが、武田は大量出血。急激に重篤なトラブルを引き起こして妊婦が死亡することも多いとされる、子宮型羊水塞栓症を発症していた。手術室の床に血液が溢れ、下屋先生(松岡茉優)ら救命科の医師たちも駆けつけた時には心肺停止していた。すぐに心臓マッサージなどを施すが、なかなか心拍は戻らない。小松先生が「武田! 生きろ!!」と叫び、祈るような数秒の後、心拍再開。まさに命がけのお産となった。

「本当に良かった」と休憩室でホッとした様子の鴻鳥先生と小松先生。そこで四宮先生(星野源)がふたりに「ペルソナをやめようと思う」と切り出した。父の晃志郎を亡くしてからの四宮先生の心の動きを察していた鴻鳥先生は「四宮はそう言うと思ってたよ」と返す。離島で産科医をしている恩師・荻島先生(佐々木蔵之介)と四宮先生の再会をセッティングしたのも、彼の背中を押すためだったのだろう。「飛び込んでみるしかないと思ったんだ、怖がってるばかりじゃなくて。俺も赤ちゃんが好きだからな」と四宮先生。その決意を聞いて今度は「小松留美子、ペルソナをやめます!」と宣言。「お母さんのケアに力を入れた場所を作りたい」、「赤ちゃんを産む前も産んだ後も、お母さんの、家族の人生に寄り添いたい」と言うその想いは実に小松先生らしいものだった。鴻鳥先生は「離れてたって、僕たちが目指す場所は同じだ。僕はいつでもペルソナにいて、みんなを繋げていく」と仲間の選択を祝福。「お母さん、赤ちゃんと社会を、そしてそれぞれの場所でがんばる仲間たちを繋げていく。そういう医者に僕はなりたい」と。

ペルソナに来たらいつでも鴻鳥先生がいる。そのことが嬉しかった小松先生は「家族みたいじゃん!」と鴻鳥先生と四宮先生を抱きしめた。「そっか、ペルソナが僕の家族か」と鴻鳥先生もまた、愛おしそうに小松先生と四宮先生を抱きしめた。これから離れ離れになる、そして、これまでペルソナの産科で色んな想いを共にしてきた3人の、ひとときの温かな時間だった。

その後も、白川先生(坂口健太郎)を下屋先生が「がんばれよ!」と見送るシーン。さらに、能登の病院まで研修に来た吾郎先生(宮沢氷魚)に「体当たりで学ばせていただきます、ジュニア先輩!」と言われて四宮先生がププッとキュートな笑顔を見せるなど、最後の最後まで名シーンの連続だった最終話。何より、鴻鳥先生の「僕はここ(ペルソナ)にいる」という強い覚悟が印象に残った。

出産は奇跡だ、ということ。奇跡の後に、現実が待っていること。出産にまつわる、その喜びも苦しみも、しっかりと踏み込んで描いてきたドラマ『コウノドリ』。実際に妊娠や出産を経験した女性だけでなく、その夫や父親である男性、子供には興味がなかったという若い層まで、回を重ねるごとに多くの人を魅了しながら命とは何か、命に向き合うとはどういうことかを投げかけてきた。生まれてきた以上は、誰もが皆、関係ないことなんかではない。赤ちゃんが産まれる場所で今日も起こっている様々なドラマをスタッフ・キャスト一丸となり、愛とリアリティを持って届けてくれる作品だった。気が早いのはわかっているが、鴻鳥先生がペルソナにいてくれるならば!またの続編も思わず期待してしまう。(上野三樹)
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