ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー @ 英バービカン・ホールでのライブレポート公開!

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー @ 英バービカン・ホールでのライブレポート公開! - pic by Wunmi Obinudopic by Wunmi Obinudo

去る5月にブルックリンで初演されたコンサート+インスタレーション+シアター的なソング・サイクル「MYRIAD」がロンドンに上陸した。最新作『エイジ・オブ』のアート・ワークにも含まれた「エコ(Ecco)」、「収穫(Harvest)」、「過剰(Excess)」、「束縛(Bondage)」の4単語を、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)は「MYRIAD」を読み解くキーワードと説明していた。イントロ(プレリュード〜“Age Of””)とアウトロ(“Last Known Image of a Song”からフィナーレへ)を除いてアルバム収録曲順をシャッフルした「MYRIAD」は、同作のコンセプトをより分かりやすく増幅・提示する内容だったと思う。

ステージ後方には吊られた台形を5面分割したスクリーンはプレミア版より簡略化されているが、ステージ両端の中空からグロテスクな彫刻が客席を見下ろす様は同じ。2年前に筆者が『ガーデン・オブ・デリート』期にロンドンで観たライブでもスクリーンが使われていたとはいえ、そちらはスマートフォン画面を思わせる長方形。そこにノンストップでビデオ映像や色彩が映し出され、ストロボ光やスモークといった演出も派手で今風だった。

しかし、この晩のスクリーンはひびの入った鏡のようであり、太古のピラミッドのようでもあり、一種儀式めいた雰囲気があった。向かって左から、アルバムにも参加したパーカッショニスト:イーライ・ケスラー、キーボード・ボーカル合成他でアーロン・デイビッド・ロス(元Gatekeeper)、OPN、およびケリー・モーラン(ブルックリンを拠点にするミニマル系コンポーザー/ピアニスト)というずらっと横一列の布陣も、クラシックのオーケストラあるいはロックでおなじみな「コンサート」のイメージとは異なる。とはいえOPNのキャリアから考えれば、このパフォーマンスは彼にとってもっとも「コンサート」なそれだった。ほとんどの場合、彼ひとりがシンセを演奏しラップトップを操る(時にギター他のゲストが参加することも)構成から、一足飛びでフルバンドに転じたことになる。しかも前回観た会場がナイトクラブだったのに対し、今回は全席指定のシアター兼ホール。彼の野心は留まるところを知らない。

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それ以上に驚いたのは、セット全体のポイントとして想像していた以上に「歌」が大きく作用していた点だった。SF映画を思わせる映像とフラッシュの光の中パフォーマーが登場する映画的な演出に続き、拍手が止んだところで“Age Of“の雅びな前奏がスタート……という展開こそ順当だったものの、続く“Still Stuff That Doesn't Happen”で早くもOPNが歌う。ヴォコーダー他で加工されたロボティックな声が、しかし「僕に話しかけて」と訴えるこの曲の遠さとエモーショナルな切実さとのギャップ。そこから生じる現代的な悲しさはもちろん、OPNの真摯な歌いぶりも刺さる。キーボードを前に歌い上げるその姿に、つい「シンガー・ソングライター」という古めかしいタームが浮かんだほどだった。音源ではクッション的な曲という印象だった“Babylon”も、ライブではその情感豊かなメロディに新たな翼が加わり見事な跳躍を果たしていた。

とは言ってもやはりOPNであり、異なる方向や音楽性をマルチに志向するサウンドや質感が離反したかと思えば衝突し、錬金される斬新な快楽と驚きは次々に耳のドアをノックしてきた。十八番とも言える荘厳なシンセの瀑布、ダクソフォンの不穏な響き(弓を構えるOPNの姿はジミー・ペイジもよもや)、“Manifold”他でのガボール・ザボを思わせるバロック・ジャズ的哀感。

ジャズと言えばツトム・ヤマシタの70年代初期のサントラ仕事(特にロバート・アルトマン『イメージズ』)が浮かぶイーライ・ケスラーの張り詰めたプレイは全編にわたって異化効果を生んでいたし、一方“The Station”や“Black Snow”では「今」そのもののいびつなR&Bグルーヴがうねる様にゾクゾクさせられた。『ガーデン・オブ・デリート』期ばりの撹拌されたノイズが暴れる“Warning”、守護天使アノーニの力強いボイスが黙示録的な焦土にこだます“Same”と終盤のテンションは圧巻で、寸分違わぬサウンドとビジュアルとエモーションのシンフォニーを駆け抜けたバンドにスタンディング・オベーションが送られた。

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