今週の一枚 ザ・ローリング・ストーンズ『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995』

今週の一枚 ザ・ローリング・ストーンズ『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995』

ザ・ローリング・ストーンズ
『ヴードゥー・ラウンジ・イン・ジャパン 1995』
発売中


『ヴードゥー・ラウンジ』の日本ツアー、東京と福岡で行われた合計9公演のうち1995年3月12日東京ドームでのライブをノーカット映像化したもの。1995年にVHS/LDで、日本のみで発売されたものの、その後廃盤となっていた。それが今年3月の『Exhibitionism - ザ・ローリング・ストーンズ展』の日本開催に伴いリストアされ、これまた日本のみでリイシュー(初BD/DVD化)される運びとなった。同時に『スウィート・サマー・サン - ハイド・パーク・ライヴ 2013』、『クロスファイアー・ハリケーン』、『女たち - ライヴ・イン・テキサス'78』の3タイトルも再発される。


1995年か。連中としちゃ最近のライブだな……などとおっさんファンとしてはつい思ってしまうわけだが、それでも24年前である。最年長のチャーリーで当時53歳、最年少のロンで47歳。今のオレよりずっと年下なのだ。男としても、またミュージシャンとしても働き盛り。ステージ上での動きにもキレがある。ビル・ワイマンが脱退し、ダリル・ジョーンズがサポート加入して初めてのツアーということになるが、さすがにツアー後半のこの時期になるとすっかりバンドに馴染んでいるし、演奏もさすがの安定感。新しいパートナーを手に入れたチャーリーも楽しそうだ。そのダリルやチャック・リヴェール、バーナード・ファウラー、リサ・フィッシャーなど、現在まで続くツアー・バンドの体制が固まったのもこの時期。“ミス・ユー”での、ミックと色気ムンムンで迫るリサ嬢の絡み(ミックがリサの尻を触る)や、各メンバーの表情や細かい仕草など、映像ならではのお楽しみも。『ヴードゥー・ラウンジ』ツアーの映像はこれで2本目だが、ミックのたどたどしい日本語MC(通じてないと察知して英語で言い直すのが面白い)や、北米では1回しかやらなかったというアコースティック・セットなど見所はたっぷりだ。“ラヴ・イズ・ストロング”で盛大に音程を外すミックは、ご愛嬌ということで。

当時の雑誌によれば、この日本ツアーでメディア向けに配られた資料には、全曲のBPMと、演奏時間が秒単位で記されていたという。つまりさまざまなビジュアル・エフェクトと完全同期すべく、ストーンズの演奏もコントロールされていたということだ。しかし、演出や演奏はおろか、曲ごとの各メンバーの動きも予めきっちり決まっているだろうに、ここで確認できるのは、ストーンズという生身の肉体と人間味である。それが結成した1962年から現在まで、変わらず彼らの個性であり強みなのを、今作は示している。 (小野島大)
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