思えば、日本での活動を本格的に再開した2016年のツアー「魔法的」開催発表から新作発表まで、いつも予想外の方法やタイミングでの告知に私達は驚かされてばかりだった。そんな斬新な演出の数々を、時系列で振り返ってみる。
《2016年1月19日》
各所に掲出されたポスター。「あす1月20日午後3時 渋谷クアトロ」で一体何が行われるのか?
渋谷CLUB QUATTROや周辺のCDショップ、映画館、東名阪のZeppなどに「あす1月20日午後3時 渋谷クアトロ」と書かれたポスターが多数掲載された。ゲリラライブを行うのか? そもそも本人は登場するのか? などと様々な憶測が飛び交った。
翌日1月20日、渋谷CLUB QUATTROに駆けつけたファンと関係者の前に小沢健二は姿を現した。本人の口からツアー「魔法的」の開催を発表し、「新曲をたくさんやろうと思います」と語った。日本でのライブは2010年・2012年にも行われていたが過去の曲が中心だったため、この発言から小沢健二が精力的に音楽活動に取り組み始めていることが伝わった。ツアーに対してはもちろんのこと、今後の音源リリースへの期待も高まった。
《2017年2月19日》
公式サイトが「414 Error」表示。小沢健二の存在しない平行世界に迷い込む。
小沢健二の公式サイトのトップページに「414 Error」と表示された。エラー表示の下には、「お探しのウェブサイトは存在しません。アーティスト名「小沢健二」には0件がヒットしました。何かのお間違いではありませんか?」(一部抜粋)と書かれていた。小沢健二の存在しない世界を想像して少し切なくなりつつ、遊び心のある公式サイトの更新にアーティストとしての新たな展開が期待できた。
《2017年2月20日》
リアルタイムチャットにより本人の言葉で伝えられた19年ぶりのシングル発売。
「小沢健二AMA(Ask Me Anything)私の平行世界」と題したリアルタイムチャットイベントの冒頭で、19年ぶりのシングルとなる『流動体について』の発売が本人の言葉で伝えられた。リリース発表はもちろんのこと、発売が2日後に迫っていることにもファンは大きく驚いた。
《2017年2月21日》
朝日新聞一面に新聞を模した「愉しい広告」が掲載。
「言葉は都市を変えてゆく」と題して、本人が執筆したモノローグ連作が、新聞を模したデザインの一面広告として朝日新聞に掲載された。モノローグには『仮面ライダー』に登場する悪の組織「ショッカー」についての記述があり、それに注目した一部のファンの間では、小沢健二のファンを指す名称として「ショッカー」が用いられるようになった。
《2017年2月24日》
『Mステ』にて公式発表よりも早く「フジロック」出演を宣言。
20年ぶりに出演した『ミュージックステーション』でのトーク中、突然思い出したかのように「今年フジロックフェスティバルに出ます」と発言。アナウンサーからの言っても大丈夫なことなのかという問いに対しても、「分かりません、まだ発表されてないんですけども」と答えており、予期せぬ発表であったことが窺えた。
《2017年7月29日》
「しばらくお待ちください」グッズのステッカーに隠された爆弾級の秘密。
「フジロック」で販売されるグッズの写真が公式サイトで事前に公開されていたが、ステッカーの一部が「しばらくお待ちください」という言葉とともに爆弾マークで隠されていた。ステッカーを購入すると隠された部分に、シングル『フクロウの声が聞こえる』の発売情報が記載されていた。その情報は現場からSNS上で徐々に拡散され、喜びを全国のファンと分かりあった。
《2017年9月1日》
渋谷マルイの巨大広告により判明! 小沢健二と誰? “フクロウの声が聞こえる”はまさかのコラボ作品だった。
シングル発売を5日後に控えたこの日、渋谷マルイに巨大広告が掲出され、“フクロウの声が聞こえる”でアーティストとコラボレーションしていることが明らかになった。ネット上はコラボ相手を予想する投稿で盛り上がった。9月3日には広告が掛け替えられ、コラボ相手はSEKAI NO OWARIであることが発表された。古くから交流のあるアーティストではなく、第一線を走るアーティストとのコラボは、小沢健二が今の日本の音楽シーンに戻ってきたという事実を改めて実感させられた。
《2017年12月1日》
公式サイトに掲載された“アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)”歌詞全文から窺い知れる、当時の「小沢くん」のエピソード。
映画『リバーズ・エッジ』の主題歌として書き下ろした“アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)”の歌詞全文が、発売日も未定だったこのタイミングで公式サイトに掲載された。その内容は、映画の原作者であり小沢健二の友人である、岡崎京子との思い出を綴ったかのような内容で、まだ音源を聴くことができないにもかかわらず多くの反響を呼んだ。
《2018年2月16日》
『Mステ』にスペシャルゲストと出演すると発表。放送を観て明らかになったその人物は、後のツアーでも大活躍。
放送日当日にスペシャルゲストと出演することを発表した。その人物の正体は演奏が始まるまで明かされず、一緒に歌う満島ひかりが映し出されたときには、この貴重なコラボレーションがテレビで放映されているという状況に驚きを隠せなかった。また、同年に行われたツアーでは満島ひかりがバンドメンバーとして参加した(この事実も本番当日に判明)。有名女優をゲストではなく、メンバーの一員として参加させようと思った小沢健二の斬新な発想によって、ライブはより華やかなものとなった。
《2019年4月5日》
新アルバムの発売日は? リアルタイムチャットで「アルバム、いきなりです」と発言。
YouTubeに新アルバムを告知するティザー映像が公開された日の夜、リアルタイムチャットでアルバムの発売時期に関する質問が殺到した。それに対して小沢健二は「アルバム、いきなりです」と回答。さらに続けて「ライブもです」、「いきなり発売していきなり開演です」、「ってなわけないか」とコメントし、ファンをどきりとさせた。ほかにも、Twitterアカウントを開設したことが明かされた。
アルバムはいつ発売されるのか? 発売方法はCDなのか配信なのか? ツアー「魔法的」で披露された音源化されていない曲は収録されているのか?...などと、ファンの疑問が尽きることはない。この高ぶる気持ちを抑えつつ、突然のアルバムリリースを待ち構えたい。(有本早季)