ロックの殿堂が「ぼくらのASOVIVA」になった日――
初の日本武道館ワンマン、そのすべてを徹底レポート!
文=高橋智樹 撮影=森好弘、渡邉一生
「『FREDERHYTHM ARENA 2021』、本日は日本武道館という『ASOVIVA』を作りました。最後まで楽しんで帰ってね。よろしく!」――日本武道館の客席に呼びかける三原健司(Vo・G)の言葉は、晴れやかな高揚感と同時に、この困難な時代において「音楽で遊び尽くす覚悟」を掲げる、決然とした挑戦精神にあふれていた。
フレデリックが横浜アリーナ公演で「1年後に自身初の日本武道館公演開催」を発表したのは、2020年2月24日のことだった。しかしその直後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により状況は一変、音楽ライブのみならず春〜夏の大規模イベントは軒並み中止/延期を余儀なくされた。そんな中、「FABO!!〜Frederic Acoustic Band Online〜」(7月/アコースティックセット)、「ASOVISION〜FRDC × INT〜」(9月/バンドセット、映像チーム「INT」とのコラボ)といった無観客のオンラインライブを通して、時代の「遊び場」としての音楽の在り方を多方面から追求し、秋のライブハウスツアーで「新しい生活様式」での有観客ライブの可能性を体現してきた。
そして――横アリ公演から1年の時を経て、二度目の緊急事態宣言下にあった2月23日。検温/手指の消毒/ソーシャルディスタンス/観客の発声禁止……と幾重にも追加されたルールを遵守したうえで、それでもなお「今、ここ」の状況をポップミュージックで突き動かすべく闘いを挑んだフレデリック。真摯に音を紡ぎ歌声を響かせるその姿が、眩しい歌や音像と相俟って、至上のポップ祝祭空間を描き出していた。あまりに感動的な一夜だった。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2021年5月号より抜粋)