イエローモンキーの映画『パンドラ』が明日、開く!! (ネタバレ注意)

イエローモンキーの映画『パンドラ』が明日、開く!! (ネタバレ注意)

夢は美しいだけでなく、狂気もはらんだ残酷なものでもある。1998〜99年、絶頂期にあったイエローモンキーが、未曾有の113本のツアーに挑んだ『パンチドランカー・ツアー』、高橋栄樹監督によるそのドキュメント映画『パンドラ』を観ているうちに、宮崎駿の長編引退作となった『風立ちぬ』と同じような感覚に襲われた。飛行機という美しい夢を追い続けた零戦の設計士、堀越二郎の物語だ。ひとつの夢を成し遂げたロックバンドは、次の夢へどう向かってゆくのか? それぞれの人生が複雑に絡み合い、肉体的にも、精神的にもぼろぼろになりながら、それでもロックバンドという夢をまっとうしようと格闘する姿、あるいは当時起こった(ファンなら知っている)いくつかの事件、この赤裸々な映像に、観てはいけないものを観てしまった、という罪悪感すら沸きおこりそうになる。

なぜ、今、ここまですべてを見せてしまうのか? そのヒントは、撮り下ろされた4人のインタヴューシーンにある。メンバー4人が集まってボウリングしながら当時の様子を語り合っている様子にとても驚いたが、この映像によって、作品のリアリティがぐっと増しているのは言うまでもない。「伝説的なロックバンド」の虚像を壊してまで、「ロックバンドのリアル」、本当のイエローモンキーの姿を観せたかったのだろう。
98年のフジロック(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとトリのレッド・ホット・チリ・ペッパーズの間に出演)のライブ映像では、あの雨の凍えそうな冷たさが甦ってきてぞくぞくしたし、イギリスのライブハウスで演奏された“BULB”(“球根”の英語バージョン。この訳詞がすばらしい!)はもう本当に観たかった映像なのでわくわくした。プレ・ライブでの狼煙のような“SUCK OF LIFE”から、恒例の年末武道館メカラウロコの“真珠色の革命時代(Pearl Light Of Revolution)”の荘厳な美しさ。最終日、横浜アリーナの“ROCK STAR”“SO YOUNG”。そしてこのテーマである“パンチドランカー”。
果てしなく追いかけてつかめたのは
えらそげで無愛想な夢のレプリカ
それよりもこの愛を君に見せたい
ごらんよこれが裸のボクサー
(“パンチドランカー”)

「今度はみんなが旅に出る番だ!」
横浜アリーナでこう叫んだ吉井和哉のMCは鮮明に覚えている。今思えばメフィストテレスのような誘いだとも思えるが、それはこう続く。「でも、それは乗り越えられる」ものだと。

もし、このツアーをやっていなかったらイエローモンキーはどうなっていたのだろう?という考えから逃れることは難しい。メンバーやスタッフは何万回も思い浮かんだ言葉だろう。けれども、この「乗り越えられる」という力強い言葉、そして、この4人が今、同じスクリーンに映っていることが、すべての答えなのだと思う。

パンドラの箱から世界に放たれた混乱や、痛み、苦しみ、悲しみは、今でも容赦なく襲いかかってくる。でも最後に残るのは、希望なのだ。それは誰もが知っていることだ。

『パンドラ』は、明日28日(土)1日限りの限定上映! 完売の会場も多いが、ぜひチェックしてほしい。渋谷シネクイントでは2週間限定レイトショー。
http://theyellowmonkey-movie.com/
12月4日にDVD&Blue-ray発売も決定した。が、やはり映画館で見てほしい。決して巻き戻せない時間を誰かと共有する緊張と興奮を体験してほしいから。(井上)

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