今日の武道館の前の東京ワンマンだった昨年秋のZepp Divercityで、これがチリビだな、という痛快なシーンがあった。ドラム台の後ろに中二階の様なアクティングエリアを作って、そこにメンバーがライブ中何度かアクセスする。チリビ史上初の試み(!)と言っていたのだが、ある曲でそこに行ったMotoが盛り上がって踊っている内に曲が終わってしまい、次がMCタイミングだった関係で素のライティングの中、笑いならが定位置に走って戻った。普通は間奏の何小節目で二階に上がり後奏のどこで下に降りる、などという決め事を作るのだが、この自由さこそがチリビなのだと思う。
セカンドアルバムを引っさげての"Welcome to My Castle" at Budokan、という今日の初武道館公演は、アルバムのテーマ通り、自分達のお城をイメージしたセットの中で展開していった。しかしコンセプトに対する説明的なMCは一切なく、ひたすら畳み掛ける様に自由に曲を連打する。それがとても心地良かった。
普通のアーティストは初武道館の際、ここに辿り着くまでの物語をドラマティックに語るものだ。あるいは逆に、これは一つの通過点、などとクールに言ってみたりする。そのどちらでもなく、いつも以上に自然体で、自由に楽しみながら曲を聴かせ続ける。そこで奏でられるポップは巨大なおもちゃ箱をひっくり返した様な、どこに行ってしまうのか想像がつかないスケールの大きなグルーヴだった。
(海津亮)
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初武道館のChilli Beans.は、変わらず自由なChilli Beans.だった
2024.02.03 22:18