MV1億回再生超えの“ただ声一つ”と同じ布陣で届けられたロクデナシの新曲“あやふや”。「あやふや」な感情を「明確に」表現するボーカリスト・にんじんの才能に震えた

MV1億回再生超えの“ただ声一つ”と同じ布陣で届けられたロクデナシの新曲“あやふや”。「あやふや」な感情を「明確に」表現するボーカリスト・にんじんの才能に震えた - “あやふや” ジャケット写真“あやふや” ジャケット写真
2021年6月から活動をスタートさせたロクデナシ。TikTokのフォロワー数が100万人を超えるボーカリスト・にんじん、40mPやナユタン星人などボカロPを中心としたコンポーザー、Y_Yや周憂などのイラストレーターが「ロクデナシ」という名のもとに集った次世代音楽プロジェクトだ。

その魅力はやはり、多種多様で才気煥発なクリエイターが手掛ける作品をひとつの世界にまとめ上げるにんじんの歌声にある。透明感という言葉では形容できない、歌というよりは吐息や叫びのような、美しいグラデーションに満ちた声。その声は多くの人を魅了し、代表曲“ただ声一つ”のミュージックビデオの再生回数は1億回を超えている。“ただ声一つ”が、日本のみならずアジア各国のバイラルチャートにもランクインしたことからも、にんじんの声が言語の枠を越えて世界中の集合的無意識に働きかける特別な何かを持っていることが窺えるだろう。


その“ただ声一つ”と同じ布陣(MIMIが楽曲を、faPkaがイラストを手掛けた)で届けられた最新曲が、2月7日に配信リリースされた“あやふや”だ。“ただ声一つ”というタイトルはロクデナシという音楽プロジェクトのすべてであるような言葉だと感じたが、“あやふや”というタイトルもまた、にんじんというボーカリストの真髄を見事に言い表している。


名づけられる前の未分化な感情。煮え切らない態度。記憶の彼方に消えてゆく愛しい思い出──。喜怒哀楽がハッキリしたものを表現することはある種容易いだろうが、「あやふや」なものに「形を与える」ということは、その言い回しの矛盾が示すようにとても難しい。しかし、にんじんはこの曲で、「あやふや」という曖昧で定型がないものを明確に表現しているのだ。合唱曲のような静謐な佇まいを持つサウンド、心の琴線に優しくふれるピアノと並走する歌声は、低音はハスキーにくすぶり、高音はよりウィスパーに滲みながら、地声と裏声の境界線もなく、ただただ溶け合っている。

《言いたいことも 言えないまま/ホントの気持ち ホントの感情も知らないまま》諦め、《時計の針は残酷でさ/世界は僕を急かし続けてる/いやそう言うとこが弱いのかな》とぼやく、「あやふや」な《僕》の想いをそのままの純度で詰め込んで、《いつか遠くで君の声が/そこにあるって思えたんだ/温もりを満たしてくれたの/本当だったよ》という《ホントの気持ち》を自覚してからは、《君は綺麗だよそのままで笑っていてよ》という願いを確かな温度で伝える──曲が紡ぎ出す物語を「ただ声一つ」で音に変えていくにんじんは、やはりただ者ではない。(畑雄介)


『ROCKIN'ON JAPAN』3月号のご購入はこちら
JAPAN最新号、発売中! スピッツ/別冊COUNTDOWN JAPAN 23/24/back number/[Alexandros]/Vaundy/キタニタツヤ 2万字/go!go!vanillas/PEOPLE 1/ハンブレッダーズ/ねぐせ。/なとり/Mr.ふぉるて/シャイトープ
1月30日(火)に発売する『ROCKIN’ON JAPAN』3月号の表紙とラインナップを公開しました。今月号の表紙巻頭は、スピッツです。 ●スピッツ 大傑作『ひみつスタジオ』を引っ提げたツアー「SPITZ JAMBOREE TOUR ’23-’24 “HIMITSU STUDIO”」。…
JAPAN最新号、発売中! スピッツ/別冊COUNTDOWN JAPAN 23/24/back number/[Alexandros]/Vaundy/キタニタツヤ 2万字/go!go!vanillas/PEOPLE 1/ハンブレッダーズ/ねぐせ。/なとり/Mr.ふぉるて/シャイトープ
ROCKIN'ON JAPAN 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする