【JAPAN最新号】奇跡の歌声と気鋭の才能が出会う音楽プロジェクト・ロクデナシ。シーンを席巻しながら未だ繊細に震え続ける、その歌世界に迫る
2023.12.28 12:00
2021年の暮れに世に放たれた、日本語で歌われるある1曲が、日本国内だけでなく、海を越えて多くの若者たちの心に浸透した。音楽プロジェクト「ロクデナシ」の楽曲“ただ声一つ”である。その、感情を「伝えるため」という以上に感情「そのもの」が響いているような歌声と、儚いメロディが、この時代を生きる人々が抱える不安や孤独に、声にならずとも確かに存在している叫びに、確かな体温をもって触れたのだろう。曲は香港やベトナムなどアジア圏の様々な国のバイラルチャートにランクインし、YouTubeにアップされたミュージックビデオは1億回再生を突破している(2023年12月時点)。
TikTokを中心に活動してきた、あまりに特別な歌声を持つボーカリスト「にんじん」と、ボカロPをはじめとした才気溢れるコンポーザーたちによってロクデナシは成り立っている。ひとりのシンガーと複数のソングライターによって成り立つという関係性は決して珍しい形ではないが、しかし、ロクデナシは確かな「新しさ」を抱いている。初のアルバム『愛ニ咲花』もリリース。今こそ、私たちの哀しみをすくい上げる、この激しくも繊細な歌の世界について考察する。(以下、本誌記事に続く)
文=天野史彬
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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