辛いふうに見られるのもイヤですね。だって、この活動は自分が好きではじめたことですし。大変なこともあるんですけど、それを見せないようにするのも、この活動の中のひとつかなって
あいみょんは今が最高だ。これまでもいつもそうだったし、これからもずっと、「今」が最高で、今こそ最高に愛されるアーティストとして、あいみょんらしいアーティスト人生を生きていってくれるはずだ。そう信じていられる。そんなふうに思わせてくれるアーティストはみんなも知っている通り、そんなにたくさんはいない。でもあいみょんはなぜか――というか、その理由ははっきりとあって、その理由を今回の「7年振り返り」インタビューで解き明かしくれているのだが――そう言い切らせてくれる。
それは、あいみょんがいつもいつだって、とても本質的で、何より恒常的な、そして誰より柔らかく懐かしく心に浸透してくるような、ひと言で言ってしまうならば、身も蓋もないくらいに「人生」的なテーマを歌っているからだと、僕は思っている。「人生」的な――と書いたが、人によっては、あいみょんの歌に恋をしたときの切なさこそを見ているかもしれないし、季節の変化を感じた瞬間のふとした心の動きを見ているのかもしれない。あるいは、青春のひりついた燃焼を見ているティーンもいるしれない。それはもちろんすべて正しくて、今を懸命に生きているあなただけの、あなた固有のあいみょん体験なのである。
その究極の形が今回の新曲“あのね”だ。この曲には「ありがとう」という、僕たちの日々で毎日擦り切れるように飛び交っているたった5文字の言葉をめぐる歌が歌われている。ありがとうにはいろいろなありがとうがある。明るいありがとうもあるし、悲しいありがとうもあるし、ありがとうの中には、お別れのありがとうもある――。
あいみょんはそんなエクレクティックで概念的で、ものすごく大切なことを、たった数分の音楽によって見事に表現している。すごいと思う。そんなふうに、移ろいゆく季節と、日々変わりゆく人の心を大事に繊細に歌い続けてきたからこそ、あいみょんは、国民的アーティストたりえているのだとして。老若男女に愛されるための最高にして最強のタイアップ、それは高視聴率ドラマやヒットが約束されたアニメ作品の主題歌を書くこと以上に、「季節」と「人の心の柔らかな切なさ」を、精一杯豊かに歌うことなのだと僕は思う。
というわけで、今回の表紙巻頭特集は、あいみょんが生きてきたデビューからの7年の日々をめぐるインタビューをさせてもらった。あいみょんは何を思い、今のあいみょんになってきたのか。そして、なぜ「今」がいつも最高のあいみょんなのか。その理由が詰まった、7年間のかけがえのない日々のすべてを聞かせてもらった。楽しく読んでほしい。
インタビュー=小栁大輔 撮影=川島小鳥
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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