2023年に本格的に音楽活動をスタートさせたという現役大学生のミヤケ武器。
そのアーティスト名からも想像できるように、楽曲(主にタイトルと歌詞)は風変わりでありながら、そのメロディやサウンドは意外なほどにしっかりと聴かせる地力を持っている。
歌詞は、聴き流すとまるで英詞のようななめらかさがあるが、歌詞を見るとゴリゴリに日本語。
すべて見たことのある単語なのに、ユニークで秀逸な組み合わせによって唯一無二の世界観を構築している。
歌詞の意味はないようであるようでない気がする。でも《寝坊出遅れた私の人生/どうせ明日がもうそこね/気にしちゃいないわ》(“zzz”)など核心めいたことをさらっと歌うから気が抜けない。
昨年11月にリリースした初のフルアルバム『大グロス』は、ジャジーな曲あり、シティポップムードの曲あり、ロックチューンありとバラエティに富んだ一作。「作りたい曲をとにかく作った」という衝動的なエネルギーや、作品全体から溢れ出す生命力が素晴らしい。
その中でも個人的なお気に入りは、デジタルシングルとしてもリリースされている“おまるドライブ”。
思わず二度見してしまうタイトルだし、歌詞も赤ちゃん視点で描かれておりかなり独特だ。
でも、まずは聴いてみてほしい。
イントロだけで胸が高鳴る曲ってそうそうないが、この曲は最初の一音からワクワクした。
アルバムの中では最も疾走感のあるロックなナンバーで、イントロのギターリフと楽曲全体のリズムが気持ちいい。そのサウンドで《ベビーカーのアクセルどこ/あの子にいいとこ見せたいわ》などと歌い出すのだから、癖にならずにいられないのである。
ミヤケ武器の曲はどれもこのアンマッチ感のバランスが絶妙で、気づいたら何度も再生ボタンを押してしまう。
20歳の才能、恐るべし。今後のリリースも楽しみに待ちたい。(藤澤香菜)
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一風変わったアーティスト名に楽曲タイトル、歌詞。ミヤケ武器って何者? 一聴したら、その癖が癖になるはず
2024.03.18 20:00