BUCK-TICK@NHK ホール

BUCK-TICK@NHK
 ホール

『memeoto mori』ツアーファイナル、NHKホール2DAYSの二日目を、昨日見に行ったのだが、いやぁ、すごかった。ギリシア神殿風の円柱と、巨大な3つの十字架、そして骸骨。異教のイコンが共存するBUCK-TICKらしいステージ空間の中で、一曲一曲の世界観を、照明や様々な演出、そして櫻井のシアトリカルなパフォーマンスで、ドラマティックに作り上げていく。神殿や洞窟、水の都、鳥たちが舞う丘、劫火に包まれたような真っ赤な世界が、次々に展開するさまは、なんだかRPGの映像に迷い込んでしまったような感覚だ。
その瞬間の興奮がライヴの醍醐味なのはもちろんだが、何時間、何日、そして何年経ったあとも覚えているライヴの風景というものがある。例えば、シガーロスのステージで色とりどりの紙吹雪が舞い続けた瞬間だったり、東京ドームでマドンナがマントをバッと広げたら背中に「Dancing Queen」という文字が電飾でキラキラ輝いたり、ストーンズの巨大なバルーン人形が立ち表れる瞬間だったり、デヴィッド・ボウイが『シリアス・ムーン・ツアー』で会場に蹴った地球の風船だったり……時間軸がむちゃくちゃだが、そういう頭にこびりついて離れないような、音と視覚のインパクトが、ここにもあった。特に、赤い砂漠の中の“コヨーテ”と、ステージで火が次々に噴きまくるプリミティヴな琉球風ダンス・チューン“memeoto mori”は圧倒的。

 それにしても、異教の司祭みたいな、トライバル風の衣装を着た今井は、さらに独自で、アグレッシブな異物感を際立たせていてカッコよかった。 一方、櫻井は、黒いマントを翻したり、赤いコートを雨をよけるように頭から羽織ったり、骸骨に抱きついたり、銀幕から抜け出たような正統派ダンディズムを見せつける。この対極の存在が一つの空間に存在するという神秘が、BUCK-TICKというバンドの得難い魅力なんだよなあ。としみじみ思った。(井上)
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