People In The Box@中野サンプラザ

People In The Box@中野サンプラザ

People In The Box、初の中野サンプラザ公演。
当然のことながら今まで観た彼らのどんなライヴとも、全く違うものだった。
もちろんライヴは素晴らしかった。ただ、放たれた音楽の重みがすごくて、終演から何時間たった今も反芻しているのだが、まだ消化しきれずにいる。

当初は3/24に予定されていたが、延期となり約一カ月後である4/20に開催となった今回のライヴ。
最新アルバム『Family Record』のリリースツアーファイナルにして、その楽曲達は以前とは全く違う感触と質量を持って鳴らされていた。
たとえば去年の野音では音が空に拡散しながら昇っていく様な高揚感を覚えたが、
今日の音はもっとタイトで直線的。ベース、ドラム、ギター、歌の4つがとてもクリアに響き、
真っ直ぐに体に飛び込んでくる感じ。
そして、どんなに熱くエモーショナルになっても、その根底には「冷静さ」みたいなものが強く感じられたように思う。
もちろん会場の特性が違うのだから、サウンドが違うのは当然。だけどこの変化はそういう問題ではないだろう。
震災を経て、今回の公演が無事に行われるまでの約1ヵ月。バンドが直面した「なぜ今ここで音楽を鳴らすのか」「自分の実態とは何なのか」といった数多くの問いは、予想できないほど大きな影響をこのステージに与えたのだろう。
今日のライヴを見て強く印象に残ったのは、常軌を逸した興奮とか狂騒的な感覚よりも、
むしろ地に足のついた、雄大で温かい音の響きだった。
本編ラストの“JFK空港”は、悲しみや喪失や諦念を越えて、遠く遠くへ飛び続けていく様なエナジーに満ちていて、本当に感動的だった。
後半、スタンドマイクを握った波多野の歌は、今までになくダイナミックでまっすぐに響いていると感じた。

「正しいとか間違ってるとか一回リセットされたことで、僕らは自由になったから。だから楽しもう」とMCで言っていたが、今日のライヴは確かに、重みと共にこれまでにない風通しの良さもあった。
アンコールで披露された新曲は、抜けのいい気持ち良さがあって、あいしてるよ、という言葉が繰り返し歌われていた。とてもプリミティヴで無垢な旋律が、バンドの、そして私たちのこれからを、ほのかに指し示すようだった。(福島)
ROCKIN'ON JAPAN 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする