「ひとりぼっちはさみしいかい? 誰の支持も得られないのはかなしいことかい? 誰の支持も得られなくて大人になるのは怖いかい? それは悲しいことなんかじゃない。僕がずっとここにいるから」――そう言って演奏した“(This Is Not)SadSong”。続く“ベルエポックマン”の「お前」という歌詞で、志摩は客席をひとりひとり指さしながら歌いかけた。ロックンロール・ヒーローとしての志磨遼平が戻ってきた!と確信した。それはバンドという城が、ひとつの完全体としてようやく確立したからだ。ようやく、と書いたが、実はこのメンバーが出会ってまだ1年しか経っていないのだけど、本当にどこにも存在しない、むちゃくちゃかっこいいバンドとしての説得力がどんどん増してきた。やばいでしょ、ドレスコーズ!? と、会場にいた誰もが思ったはずだ。そう、ここからドレスコーズとわたしたちの物語が本当に始まる。アルバムのリリースは当然ながら大きな転機だが、今日のライブを観て、紀元前、紀元後みたいな違いを感じた。この瞬間に立ち会
えたことはとても幸せだ。
SEのヴェルヴェット・アンダーグラウンド“オール・トゥモローズ・パーティーズ”が鳴り響く中ゆっくりとメンバーが登場。ドラマティックで頽廃的な空気を引き裂くように、破壊的なノイズサウンドをゲリラ的にぶちかます。サイケデリックな映像にのって演奏された一曲目“誰も知らない”を聴きながら、ここはファクトリー(アンディ・ウォーホールの実験工房)か?と目と耳を疑った。初盤で観たO-nestと構成は同じだが、その衝撃はまったく違う。それは曲が進むにつれぞくぞくするほど実感した。どの曲も、楽曲の本質と魅力が際立っていた。
特に“レモンツリー”以降はかなりやばかった。“Automatic Punk”は、ロックンロールの事件性を、奇抜な言動ではなく、「音楽」として誰一人傷つけず血を流すことなく見事に表現してみせた。
“誰も知らない”バンド=ドレスコーズから、みんなのバンドへ――セットリストの流れはまさにそれを体現していたように思う。
《夢は もう見た/僕らは 歩くよ》
――アンコールの最後“1954”を歌い終えた志磨は、リッケンバッカーを床に叩きつけてステージから去っていった。
「何かとんでもないことが始まる予感」は志磨の大得意な分野だが、それがバンドとして、しかも3月という彼が生まれた季節に、ひとつの強烈な像を結んだのは本当に感動的なできごとだった。
写真は終演後、日本青年館の客席に座る4人。ライヴについてベース山中は「終わりではなく始まりみたいな気分」と言い、志磨は「くやしい」と言った。つまり、もっともっとこのバンドはすごくなる、ということだ。
明日アップされるライヴレポートもぜひ読んでほしい。3月末発売JAPANでライヴレポートを掲載。
そして現在発売中のJAPANでは、志磨&パティ・スミスのツーショット写真も掲載中。パティとの対談について書かれた『屑・フロム・ヘル』は必読だ。
(井上)
SETLIST
1.誰も知らない
2.Lolita
3.リリー・アン
4.Tango,JAJ
5.Puritan Dub
6.新曲
7.パラードの犬
8.ストレンジピクチャー
9.レモンツリー
10.Automatic Punk
11.SUPER ENFANT TERRIBLE
12.(This Is Not)SadSong
13.ベルエポックマン
14.Trash
EN
15.新曲
16.1954