本日のジャパネク通信:蟲ふるう夜に、今聴きたい歌

本日のジャパネク通信:蟲ふるう夜に、今聴きたい歌

昨年末以来、久々に観た蟲ふるう夜に。
このバンドのことはかねてからよく知っているし、厳しい視線で観たつもりだが、素晴らしいとしか言いようのないライヴだった。

大きな変化があった。
「自分自身が歌いたいこと」と「他者である自分が歌ってほしいこと」をつなぐダイヤルがカチッと合った印象があった。

アーティストの「言いたいこと」は、他者の中で大切な言葉になった瞬間、もっと正確に言うと、他者の中で「これが言って欲しかった言葉だ」という気付きを起こした瞬間に「メッセージ」になるのである。
わかるだろうか。
独りよがりの強い言葉と、他者に向けられた静かな言葉は、本質的にまるで違う力を持っているのだ。

蟲ふるう夜には自意識をいかにかたちにするのか、いかに自分を吐き出すのか、という意味で、常に「強い」表現を求めてきた。
しかし、今の彼らの歌の先には「他者」がいる。
その変化が生み出した新曲"わたしが愛すべきわたしへ"(この日が初披露だったらしい)は、「私」と「あなた」をまっすぐにつなぐ、一本の糸のような歌である。
それを通じて、心の交感がスムーズに繰り返される、優しい繭のような歌だ。
この曲にたどり着いたことに、僕は拍手を送りたいような気持ちになった。

そして、歌が変わった結果、バンドは迫り来る生々しさと肉体性を引き出された。
演奏自体には荒々しさが感じられ、人によっては衝動的なアクトに見えただろう。
しかし、それは紛れもなく正しい変化である。

ぜひとも多くの人に出会ってほしい、優しいバンドに蟲ふるう夜には、なった。
この夜はその証明となる、大きな意味を持つライヴだったと思う。
CDは6月4日発売。この曲がどう届いていくのかとても楽しみだ。
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