ゴールデン・グローブ賞のノミネーションが発表された。
全てのノミネーションはこちら。
https://www.goldenglobes.com/winners-nominees
以下、アメリカのメディアの反応も含めた雑感。
1)トレント・レズナー&アッティカス・ロスがスコア部門で2つノミネート!
これは予想されていたことだけど、トレント・レズナーとアッティカス・ロスが、『Mank/マンク』と『ソウルフル・ワールド』の2作品でオリジナルスコア部門にノミネートされた。おめでとうございます! 彼らは、ひとつの部門で自分の作品を競わせることになる。
https://twitter.com/NetflixFilm/status/1356980988685873152
https://twitter.com/PixarSoul/status/1353389748010708993
彼らはここ数年で、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』以来、『ウォッチメン』も含め、単にサントラを手掛けるのではなくて、その時代のポップ・カルチャーにとって重要な作品に関わってるのが素晴らしい。『Mank/マンク』について語ったインタビューはこちら。
彼らと同じスコア部門でノミネートされている『テネット』のルドウィグ・ゴランソンは、チャイルディッシュ・ガンビーノのプロデュースを長年務めている。映画では『ブラックパンサー』などライアン・クーグラー監督作の常連でもある。ケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパーのプロデュースもしている。
2)オリジナル・ソング部門のノミネートも豪華なメンツだ
『Judas and the Black Messiah』で、H.E.R.が“Fight For You” をリリースしたばかり。
https://twitter.com/colbertlateshow/status/1357563420149567491
『ユナイテッド・ステイツvsビリー・ホリデイ』で、ビリー・ホリデイを演じたアンドラ・デイによる“Tigress & Tweed”。
https://www.youtube.com/watch?v=9n1Is2xHvdI&feature=youtu.be
『シカゴ7裁判』より、セレステの“Hear My Voice”。
『あの夜、マイアミで』でサム・クックを演じたレスリー・オドム・Jr.による“Speak Now”。
https://www.youtube.com/watch?v=1vAvQ9Um8hQ
『これからの人生』より、Diane WarrenとLaura Pausiniの“lo Si(Seen)”。
3)Netflix作品が史上最多ノミネート
コロナ禍で劇場公開が限られていた事もあり、Netflix作品が全体で42項目とダントツで最多ノミネートされた。今年は、映画部門もストリーミングが強い。
以下内訳。
a. 映画ノミネーション
『Mank/マンク』 6
『シカゴ7裁判』5
『ノマドランド』4
『ザ・ファーザー』4
『Promising Young Woman』4
『あの夜、マイアミで』4
『続・ボラット』3
b.映画配給別ノミネーション
Netflix 22
Amazon Studios 7
Focus Features 5
Sony Pictures Classics 5
Walt Disney Studios Motion Pictures 5
Warner Bros. Pictures 4
Universal Pictures 3
c. TV番組ノミネーション
『ザ・クラウン』6
『シッツ・クリーク』5
『オザークへようこそ』4
『The Undoing/フレイザー家の秘密』4
『The Great』3
『ラチェッド』3
d.TV配給別ノミネーション
Netflix 20
HBO 7
Hulu 6
Pop TV 5
Showtime 5
Amazon Studios 3
4)女性映画監督が3人ノミネート
オスカーも同様だが、女性監督は長年軽視されてきた。それを受けて、ここ数年各都市の映画祭が全体の半分は女性監督の作品を上映しようと努力している。その成果があってか、今年は3人の女性監督がノミネートされた。上のツイートのように、今年で78回目を迎えるゴールデン・グローブ賞で、女性監督がノミネートされたのは、今年を入れないとたった5人しかいない。あり得ない。
ただ、多くノミネートされれば良いというものでもなく、大事なのは誰が獲るのかだ。
グラミー賞でも、ビヨンセやケンドリック・ラマー、ジェイ・Zが最多ノミネートされておきながら主要部門は白人アーティストが獲ることが多い。個人的には、『ノマドランド』のクロエ・ジャオに獲ってもらいたいが、『Mank/マンク』のデヴィッド・フィンチャーと、『シカゴ7裁判』のアーロン・ソーキンがノミネーション数を考えても上にいるのでまだ分からない。
5)人種差別問題
どのメディアも書き立てていて、個人的にも大激怒しているのは、『I May Destroy You』という大絶賛されたTVシリーズがひとつもノミネートされなかったこと。Michaela Coelが自ら脚本を書き、監督をして、主演もした作品だ。それなのに、『エミリー、パリへ行く』や『ラチェッド』など評価の低かった作品が複数ノミネートされていて意味不明。
また、『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』のジャーニー・スモレット=ベルや、ゼンデイヤ、『ミセス・アメリカ〜時代に挑んだ女たち〜』のウゾ・アドゥーバなど、黒人女優が顕著な活躍をした年であったのにもかかわらず、TVの女優ノミネートが白人ばかりで、人種差別だと批判を浴びている。
ライアン・マーフィー作が贔屓されたか?
また、映画部門においても、『ミナリ』という映画が、登場人物は韓国語を話すが、舞台も制作もアメリカ。それなのに規定により外国語部門でしか提出できなかったことも人種差別と問題視されていた。さらに、この作品に出演のスティーヴン・ユァンやユン・ヨジョンがノミネートされなかったことも疑問視されている。スパイク・リーの『ザ・ファイブ・ブラッズ』の心と絶賛されていたデルロイ・リンドーがノミネーションされなかった事も問題視されている。
映画部門の作品賞でも、黒人が主人公の作品で評判の良かったものはいくつもあったのに、それも全部無視されている。例えば、『ザ・ファイブ・ブラッズ』、『あの夜、マイアミで』、『マ・レイニーのブラックボトム』、『Judas and the Black Messiah』など。
https://www.youtube.com/watch?v=sSjtGqRXQ9Y&feature=youtu.be
ゴールデン・グローブを決めているのは、カリフォルニア州に住む約90人の外国人記者達だ。自分は外国人という立場でアメリカに住んでいて、人種差別するというのがなかなか理解できない。
6)その他アメリカのメディアの雑感
a. 予想されていたのに無視された作品、俳優
ーメリル・ストリープ:『ザ・プロム』のメリル・ストリープ。それなのにジェームズ・コーデンがノミネートされてて謎。
ー『ブリージャトン家』:Netflixで驚異的なストリーム数を記録したのに完璧無視。
ー『ラヴクラフトカントリー〜』のジョナサン・メジャース
b. 予想外のノミネーション
ーケイト・ハドソン『Music』。シーア監督作の映画。誰も観てない、または評価がめちゃくちゃ低いのに、主演女優賞と作品賞の2部門でノミネート。最大の謎。予告編を観るのもまあまあ辛い。
https://www.youtube.com/watch?v=l7OVB-7gjJ0&feature=youtu.be
ージャレッド・レト『The Little Things』。どこからともなくいきなりノミネートされてみんな驚き。
https://twitter.com/JaredLeto/status/1341423358521401345
ゴールデン・グローブの授賞式開催はアメリカ現地時間の2月28日となる。
またコロナの影響でずれ込んでいるオスカーは、ノミネーションの発表が3月15日、授賞式は4月25日となる。
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