“High and Dry”の発掘ライヴ映像に見るレディオヘッドの「物持ちの良さ」

“High and Dry”の発掘ライヴ映像に見るレディオヘッドの「物持ちの良さ」

先日、1989年頃に収録されたものだという“High and Dry”のライヴ映像がネットにアップされて話題となった。
89年当時、トム・ヨークは20歳。
4年前に結成していたレディオヘッドの前身バンド、オン・ア・フライデーは活動休止中で、トムは大学進学のためオックスフォードを離れてエクセターに移り住んでいた。
そのエクセターで彼が一時的に参加していたのがヘッドレス・チキンズというバンドで、今回アップされた“High and Dry”は、そんなエクセター時代のライヴ映像ということになる。

ちなみに、“High and Dry”はもともとトムがヘッドレス・チキンズのナンバーとして書いた楽曲だ。
比較的高音質・高画質で残されていた今回のライヴ映像で確認するかぎり、いかにも80年代後半のカレッジ・ミュージック調と言うか、当時のトムの嗜好性を反映したハードコア、パンクの影響を色濃く感じさせるアレンジで、当然のことながら6年後の『ザ・ベンズ』収録の“High and Dry”とはまったく異なったヴァージョンだ。
そう、まったく異なったヴァージョンではあるのだけれど、これはこれで非常に完成度が高い。
ヘッドレス・チキンズはエクセターのローカル・シーンではそこそこ名の知れたバンドで、デ・ラ・ソウルやイートのオープニング・アクトを務めたこともあったという。
大学時代の期間限定のバンドだったにせよ、単なる助っ人のヴォーカリストとしてではなく、あくまでもトムが主体的に参加していた「正史」のバンドだったことには違いない。
ちなみにヘッドレス・チキンズのバンド・メイトだったジョン・マティアスは、その後『ザ・ベンズ』のレコーディングにも参加し、“High and Dry”でコーラスを担当している。

この“High and Dry”の発掘ライヴ映像を観て改めて思うことは、レディオヘッドのナンバーの「物持ちの良さ」みたいなものだ。
たとえば『OKコンピューター』(1997)の時代に書かれて、『イン・レインボウズ』(2007)で日の目を見た“Nude”、今回の“High and Dry”、そして現在制作中の新作に収録予定とされる“Lift”に至っては、1996年に原曲が作られたナンバーだ。
彼らは何年も、時によっては十年以上も寝かせておいた曲を引っ張り出してきて、ようやく命を吹き込む、ということを頻繁にしている。

同じようにめちゃくちゃ物持ちの良いアーティストと言えば、ノエル・ギャラガーもそうだ。
彼も20年以上前に書いた曲を時を超えてさくっとレコーディングし、彼自身の最新サウンドとして納得させてしまえる人だ。
ノエルのように自他共に認めるタイムレスな音楽を志すアーティストにとっては、むしろそうあるべきものなのかもしれない。
その一方で、レディオヘッドのように革新性の権化みたいなバンドが10年、15年前の楽曲を大事にし続けている、っていうのは意外に思えるかもしれない。

しかし、この時を超えた楽曲群の存在は、レディオヘッドの礎、変わり続けていく彼らを支える根拠でもあるんじゃないかとも思う。結成以来30年、彼らがひとりの落伍者も出さず活動し続けてきたように、レディオヘッドの変化とは途切れることのない連続性の中で起きているものだから。

というわけで、“High and Dry”のビフォー・アフターをご覧あれ。

https://www.youtube.com/watch?v=UgEJiIAeOwk


(粉川しの)
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