サンフラワー・ビーン、遂にデビュー。NY音楽シーンの系譜を継ぐそのサウンドの魅力とは

サンフラワー・ビーン、遂にデビュー。NY音楽シーンの系譜を継ぐそのサウンドの魅力とは - サンフラワー・ビーン『ヒューマン・セレモニー』発売中(国内盤3月2日(水)発売)サンフラワー・ビーン『ヒューマン・セレモニー』発売中(国内盤3月2日(水)発売)

「ヴォーカル&ベースのジュリアがサンローランのクリエイティヴ・ディレクター=エディ・スリマンのフェイヴァリットで、バンドのアルバム・デビュー前にモデルとしてランウェイ・デビュー」といったトピックが飛び交うあたりは、NYブルックリン発のニューカマーならではのことだろうが、この若き3ピース=サンフラワー・ビーンの存在を何より際立たせているのはその楽曲とサウンドそのものだ。ということを、今回リリースされたデビュー・アルバム『ヒューマン・セレモニー』が雄弁に物語っている。

Sunflower Bean - "Wall Watcher"(Official Video)

タイトル曲“Human Ceremony”のクリーントーンが描く純白の闇、“Come On”の性急なコードストロークと繊細なアルペジオが織り成すスリリングなコントラスト、全細胞にまで染み渡るような“2013”のディープなリヴァーブ使いなど、若き日のボブ・ディランを思わせる風貌のニック(Vo・G)によるサウンドの多彩さ。サイケデリックな浮遊感もブレーキ壊れた疾走感も体現するジェイコブ(Dr)のビート感。そして、センチメントやメランコリアといった情感を微塵も寄せ付けない、気怠さとクールネスに満ちたヴァイブを放つジュリアのヴォーカル……それらが渾然一体となって、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとヤー・ヤー・ヤーズが同居しているような、アンニュイな退廃感と艶かしさを兼ね備えた空気感を醸し出している。

パンク/ニューウェーヴ/インディー・ロック/ドリーム・ポップなど、NY音楽のエッセンスを身体いっぱいに吸い込み高純度で結晶化させた3人の音楽世界は同時に、激情あふれる絶唱や全身震撼レベルの轟音のダイナミズムでは手の届かない領域にあっさり触れてしまうマジックに満ちている――どんなに年を重ねても、誰の心の奥底にも色濃く残る「永遠の青春性」という場所に。

サンフラワー・ビーンの音楽は、リスナーを強烈なヴァイタリティやメッセージで導いたりはしないし、苦悩まみれの日常に何かの答えやベクトルを与えたりするものではない。ただ、明けない夜の煩悶や葛藤のかたちを、その謎めいたサウンドとメロディであまりにも鮮烈に指し示すだけだ。そして、それを心震わせるアートフォームとして具現化させてみせた『ヒューマン・セレモニー』は何より、ジュリア/ニック/ジェイコブの3人の非凡なセンスとクリエイティヴィティの証明そのものだ。すでにザ・ヴァクシーンズやパーマ・ヴァイオレッツとのUKツアーなども行っているサンフラワー・ビーン。その姿を日本で観られることを、今から勝手に待ち侘びている。(高橋智樹)
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