2016年7月27日(水)に15thアルバム『醒めない』をリリースするスピッツ。
RO69ではリリースを記念して、これまでの全アルバムを振り返るディスクレビュー特集を行います。
『醒めない』リリースまで、1日1作品ずつレビューを掲載します。
本日の作品は1996年発表の7th『インディゴ地平線』です。
今年4月にリリースされたシングル曲“みなと”を聴いた時に、すぐに思い出したのが、この『インディゴ地平線』だった。それはおそらく、“みなと”の風景をイメージしながら聴いているうちに、“渚”の風景へとつながったという単純な理由からだと思うけど、しばらく『インディゴ地平線』と“みなと”を交互に聴いていて、やっぱり、この2作品で描かれる風景は、時間を経て同じ場所にある、互いに共鳴しあう音のような気がしてしまうのだ。
『インディゴ地平線』は今からちょうど20年前の作品で、以来、本当に何度も何度も聴いている大好きな作品。不思議なのは、こちらが年をとればとるほど、そして聴くたびに、キラキラと輝く水面のような、澄んだ空のような瑞々しさが増していく魔法のようなアルバムだということ。特に、タイトル曲“インディゴ地平線”から“渚”へ続く流れで胸に浮かぶ風景のまぶしさや懐かしさは、当時聴いていた時よりもその青さが色濃く感じられて、2016年の現在でも、なぜか初めて聴いた時と同じような新鮮さを感じる自分に驚く。まるで20年後の現在にどう響くかが、あらかじめ計算されて作られていたかのようだ。
“渚”では、まばゆい恋に落ちた瞬間のことを《風のような歌 届けたいよ》と歌いながら、《柔らかい日々が波の音に染まる 幻よ 醒めないで》と、この季節がいつか消えてしまう日のことを感じさせる。そして、20年後の“みなと”では、《君ともう一度会うために作った歌さ/今日も歌う 錆びた港で》と、かつてそこにあった景色を思いながら歌い続ける男が描かれる。私のセンチメンタルで勝手な思い込みだとは思いながら、“渚”と“みなと”、そして、この『インディゴ地平線』ともうすぐリリースされる最新アルバム『醒めない』は、同一地平線上にあるような気がしてならない。そんなわけで、またこの『インディゴ地平線』を何度もループして聴いているこの頃。色褪せない音楽という言葉をよく使うけれど、月日を経て色濃くなっていく作品にはそうそう出会えるものではない。スピッツの多くのアルバムの中でも、その濃度が増していく度合いはダントツな作品かもしれない。
“虹を越えて”や“ほうき星”の、やさしいノスタルジーを感じさせるギターサウンド、1曲目を飾る“花泥棒”のフレッシュな性急さ、ラストの“チェリー”の《君を忘れない》の歌い出し。すべて、時空を超えていつまでもそこで息づいているようなきらめきを放つ。7枚目のオリジナルアルバムではあるけれど、現在のスピッツへと続く入り口は、ここで大きく開かれたと思うし、バンドを語る上で重要な作品であることは間違いない。スピッツの、というより日本の音楽シーンにおけるマスターピースだ。(杉浦美恵)
なお、スピッツは2016年7月30日(土)発売『ROCKIN'ON JAPAN 9月号』の表紙に登場します。
お楽しみに!
公開済の作品はこちら
2016年7月17日 6th『ハチミツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145806
2016年7月16日 5th『空の飛び方』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145804
2016年7月15日 4th『Crispy!』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145764
2016年7月14日 3rd『惑星のかけら』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145713
2016年7月13日 2nd『名前をつけてやる』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145667
2016年7月12日 1st『スピッツ』:http://ro69.jp/blog/ro69plus/145597
スピッツ全アルバムレビュー 7th『インディゴ地平線』【『醒めない』リリース記念】
2016.07.18 18:00