Hi-STANDARD全ディスクレビュー 3rdシングル『ANOTHER STARTING LINE』(2016/10/5)


「16年振りのHi-STANDARDの新譜が、事前告知なしでCD屋に置いてある」――衝動に背中を蹴り飛ばされて、レコードショップへ走るなんて初めてだった。

目当てのCDを買いに足早でレコードショップに向かうことはあっても、ノーチェックのCDを買いに昼休みに職場を飛び出すなんて今までしたことがなかった。さらに言えば、私自身ハイスタの音楽を聴いて育った訳でも、パンク魂に火を点けてもらった訳でもない。それなのに走った。理由はただひとつ、「純粋にワクワクしたから」だ。ハイスタが伝説的なバンドだなんてことは教科書レベルで知っていたが、それはあくまでも「理解」だった。しかし私は2016年10月4日(発売日は10月5日だが)、その伝説と呼ばれる所以を「体感」したのだった。

そしてそこに詰め込まれていた想いと音は、2016年にリリースされる新譜として鳴るにはあまりにもシンプル過ぎるものだった。1台のドラムと1本のベースと1本のギター、そこに乗る歌声という単純明快極まりない構成。婉曲した表現が一切ないどストレートな歌詞と、一言一句に宿る圧倒的な説得力。ハイスタ世代と呼ばれる人たちはこの音で覚醒したのかと頭を殴られた気持ちになったし、《キミがまた僕の人生に戻ってくるとは思いもしなかったけど/生き返ったみたいさ》(“Another Starting Line”和訳)、まさにそんな「16年前のあの頃」の音がそのままの温度で鳴っていた。もう、めちゃくちゃシビれた。

《これはもうひとつのスタートライン/キミと僕への》(“Another Starting Line”和訳)

ハイスタがこのタイミングとこの方法で世間にかましたリスタートダッシュは、これ以上ないほどパンキッシュでパンチの効いたものだった。そんな彼らの視界に映るのは、このジャケットのように真っ直ぐな一本道なのだろう。そしてその道を歩いていくのは、紛れもなくこの音を受け取ったキミ自身だ。私はあの「音楽が与えてくれるワクワク感」を決して忘れぬよう、このCDと共にどこまでも進み続けたいと思う。(峯岸 利恵)