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    【全アルバムレビュー:エレファントカシマシ】3rd『浮世の夢』

    【全アルバムレビュー:エレファントカシマシ】3rd『浮世の夢』 - 『浮世の夢』1989年8月21日発売『浮世の夢』1989年8月21日発売

    最も愛すべき裏名盤

    エレカシ史上最もぶっとんだ、日本ロック史でも類を見ないユニークな作品だ。その象徴となるのが、いまだにライブの定番でもある“珍奇男”。《机さん机さん 私はばかでしょうか/はたらいている皆さん 私はばかなのでしょうか》という自虐にも似た叫びを聴くといまだにドキドキする。聞いてはいけない道化者の独り言に触れてしまったような赤裸々さがあるからだ。

    《悪い奴らけちらし 本当の自由取り戻すのさ》と正義のヒーローとして颯爽とデビューしたエレカシ。だが思い描いた成功には程遠く、自分は何者なんだ?と懐疑的になり内省したのがこの時期。ひとり炬燵にくるまって小鳥の声を聞く、という太宰治×内田百聞のような文学的な詞がフォークロック的なサウンドにのってエモーショナルに爆発する。早すぎたニートとも元祖ひきこもりとも言える世界観だが、それをロックとして成立させているところがすごい。しかしながら、この内なる発見は、宮本のソングライティングをぐっと深化させた。(井上貴子)

    収録曲:
    1.「序曲」夢のちまた
    2.うつらうつら
    3.上野の山
    4.GT
    5.珍奇男
    6.浮雲男
    7.見果てぬ夢
    8.月と歩いた
    9.冬の夜

    ※『ROCKIN'ON JAPAN』2016年1月号より転載

    過去のレビューはエレファントカシマシのアーティストページをご確認下さい。
    http://ro69.jp/artist/2218

    次の更新は2017年3月10日(金)19:00です。(毎日7:00、19:00公開予定)
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