プロデューサーとして既に発表されていたナイジェル・ゴドリッチだが、ギターやキーボードも演奏しているようだ。
さらに、近年ではベックのバンドでも活躍する、ジェリーフィッシュのロジャー・マニングも参加している。きっと弾くだろうヴィンテージ・キーボードの音色が、ロジャーとどう絡むのかも楽しみ。
それにしても『死滅遊戯』から25年、まさかのニュー・アルバムのリリースだが、今、彼が新作を出す意味は、タイトルにすでに示唆されている。
『イズ・ディス・ザ・ライフ・ウィ・リアリー・ウォント?』
つまり、『これは我々が本当に望んだ人生なのか?』という問いかけ。
ピンク・フロイド時代と変わらず、世界に激しく警鐘を鳴らしているのだ。
前作『死滅遊戯』は、一昨年、新装版がリリースされたわけだが、
あのアルバムのテーマは、90年代初頭当時、天安門事件や湾岸戦争等、命を奪い合う人間同士の闘いが、エンターテイメントとしてテレビで消費される現代社会への痛烈な批評だった。
そこから20年以上を経て、ネット社会においてさらにそれが加速している現実が、再びあの作品に彼を向かわせたのだろう。
「そもそもローマ時代から人類はコロシアムで人間同士が殺し合うことをエンターティンメントとして楽しんでいた」と、インタヴューで語るロジャーの言葉が忘れられない。
もしかしたら『死滅遊戯』をアップロードしたことが、今作にもつながっているのかも?
ライヴで痛烈なトランプへの批判をしながらも、悪の根源は「トランプ」という個ではなく、人類そのものであることを、ロジャー・ウォーターズの音楽は常に私達に告げる。
発売日の6月7日(海外は2日)が本当に楽しみだ。ロッキング・オン本誌でも追います。
参加ミュージシャンは以下の通り。
ロジャー・ウォーターズ(ヴォーカル、アコースティック、ベース)
ナイジェル・ゴッドリッチ(編曲、サウンド・コラージュ、キーボード、ギター)
ガス・シーファート(ベース、ギター、キーボード)
ジョナサン・ウィルソン(ギター、キーボード)
ジョーイ・ワロンカー(ドラムス)
ロジャー・マニング(キーボード)
リー・パルディーニ(キーボード)
ジェシカ・ウォルフ&ホリー・プロクター(ヴォーカル)他
ジャケット写真の、テレビを観ている猿が、赤子に変化した『死滅遊戯』最新版、リリース時のインタヴューはこちら。(井上貴子)