『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』。もちろん、最高に期待はしていたのだが、正直言ってここまで感動させられるとは思っていなかった。『アンリミテッド・ラヴ』に続く年間2枚目となるフルアルバムリリースと聞いた際には驚いたものだが、その2枚のアルバムの間に流れる多くの思いを感知したとき、レッド・ホット・チリ・ペッパーズという巨大な生命体の今の息遣いが明確に伝わってきた。
かけがえのない仲間、音楽パートナーであったジョン・フルシアンテの劇的な復帰は、ファンを興奮させたが、誰にも増してメンバーたちが歓喜に包まれた様子は本誌でも色々と報じられていた。
ジョシュ・クリングホッファーの献身的なプレイは全ファンが賛辞を送るものではあったが、バンドという厄介な生き物が不思議なのは「献身」だけでは補いきれないマジックを常に求めているところで、それがジョン・フルシアンテというピースであることを、今回の2枚のアルバムはつくづく耳に焼き付けてくれる。
再会の喜びのセッションを重ね、噴き出るように楽曲が生まれ、それに呼応してアンソニーが一気に、これだけの量の歌詞を書き連ねるというのも、とても通常のテンションで実現できることではない。ビッグアーティストであればアルバム一枚に2年、3年かけるのが普通の時代に、この勢いで駆け抜けるしかないんだと全員が意識を集中させたバンド力があり、メンバー全員が、そのフォースの力を確信し進んだのが『アンリミテッド・ラヴ』であり、『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』なのだ。
かつてのようにがむしゃらに突進したり、ファンクの波に身体を委ねるだけじゃなく、ここに至るまでの体験を巧みに織り交ぜながら、彼らにしか作れないサウンドへと到達しているのを示したことが、とてつもない喜びを与えてもくれるし、言葉にし難い感動の波が深いところから起きてくる。最新ライブレポートを読むだけで興奮させられ、羨ましくなって仕方がないのだが、この巨大特集で来日への期待値をマックスに持っていきたい。(大鷹俊一)
<コンテンツ紹介>
★新作『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』完全レビュー
★2022年決定版インタビュー
★最新ワールドツアーレポート
★歴代12枚の全アルバム解説
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの総力特集は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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