【ライブレポート】これぞミューズ!ーー約8年の空白を経て待望の来日公演が実現したミューズ。彼らがライブで示した現在地を完全レポート!

【ライブレポート】これぞミューズ!ーー約8年の空白を経て待望の来日公演が実現したミューズ。彼らがライブで示した現在地を完全レポート!
9月末、ファン待望の来日を果たしたUK最強スリーピースバンド:ミューズ。約8年ぶりとなる来日公演で彼らが示した現在地とは? “ミューズらしさ”を120%体現したステージングを余すことなくレポートします。
(rockin'on 12月号掲載) 



【ライブレポート】これぞミューズ!ーー約8年の空白を経て待望の来日公演が実現したミューズ。彼らがライブで示した現在地を完全レポート!

文=粉川しの

実に約8年ぶり、待ちに待ったミューズの来日公演がついに実現! ……なのだが、実際にライブを観る前には、今のミューズは彼らのキャリアにおいて、どんな地点にいるのか? という疑問があった。そもそも8年もブランクが空いたのは、彼らが直近2作のアルバムのツアーでは来日しなかったからで、最新アルバム『ウィル・オブ〜』だって、既に3年前の作品だ。

だから日本公演を含む2025年のアジアツアーはどこか宙ぶらりんで、偶然と必然の空白が重なり、彼らの現在地が不透明なまま日本にやって来たのは否めないだろう。今回の来日は、『ウィル・オブ〜』ツアーの周回遅れのアウトロなのか? それともミューズの新章の早すぎるイントロなのか? それも見極めたくてKアリーナに向かった。

結論から言うと、ミューズの約8年ぶりの来日公演は、彼らのキャリアにおけるアウトロでもイントロでもなかった。何しろ舞台は久しぶりの日本、相対するのは彼らをずっと待っていたロイヤルなファンだ。まず真っ先にやるべきは、ファンとバンドの間に横たわる空白を猛烈な勢いで埋めることであり、これがミューズなのだと、互いに再確認することであり、今回のミューズの来日公演は、彼らがその意義を十二分に自覚した上で繰り広げた、超絶エッセンシャルなギグだったと言えるだろう。

謎めいたサイファがスクリーンに映し出される中、シンセが無限音階を辿るオープニングのSF的大仰さ、そこから一気に天井をぶち抜く勢いでヘヴィメタルに至る強引な展開に、「これぞミューズ!!」と快哉の声を上げてしまったのは筆者だけではないはず。ちなみにこれはミューズのロック面とエレクトロニック面、ハード面とポップ面、暴力面と耽美面を1曲に無理やり押し込んだ、新曲の“Unravelling”だ。
つまり、彼らはミューズのミューズらしさをダイジェストした新曲を1曲目に持ってくることで、これがミューズの再確認の場だと真っ先に設定するのだ。

花道に歩み出たクリスのベースソロから、マシューの速弾きソロへと華麗なバトンリレーを繰り広げる“ヒステリア”、分厚いギターリフとコーラスを押し除けるようにしてマシューのプリンスばりのファルセットが轟く“ウィル・オブ・ザ・ピープル”、そしてJFKの演説をフィーチャーした“Simulation Theory Theme”と、前半は極から極へと行き来するミューズのライブ機序に加え、バンドのドラマツルギーやディストピア空想史観を再確認するナンバーが続く。

また、ビリビリと下腹に響くダブからオペラティックなハードロックに変貌する“ウォント・スタド・ダウン”など、最新作『ウィル・オブ〜』のナンバーは前半に演り終えて、後半はベストヒットへと雪崩れ込んでいくセットリストも潔かった。ミューズ独特の世界観を約8年越しに再確認した後は、バンドとファンが満を持して一丸となり、巨大で、破天荒で、過剰ミューズのライブでしか味わえないカタルシスをブチ上げていくのだ。

呪文のような《ma ma ma ma……mad mad mad!》すら観客がシンガロングする“マッドネス〜狂おしい愛”から、焦らしに焦らした末に投下したイントロリフ一発でKアリーナを縦に揺らしまくる“プラグ・イン・ベイビー”へ、エレクトロニックなミューズから、ハードロックなミューズへ、その極端な振れ幅がむしろグルーヴとなって、彼らのオンリーワンなパフォーマンスをタイトにまとめ上げていく。

「次は懐かしい曲だよ」とマシューが言って、デビューアルバム『ショウビズ』収録の“アンインテンデッド”をやってくれたのも、往年のファンにはサプライズプレゼントだったのではないか。マシューとドムによるアコースティックでの披露だった“アンインテンデッド”から、バルカン音楽風のピアノで始まる“ユナイテッド・ステイツ・オブ・ユーラシア〜”の、クイーンばりのドラマティックな多展開も凄まじい。
 
過去の単独来日は、基本的にアルバムツアーであり、アルバム毎のコンセプトやジャンルの嗜好性を一応の軸とすることで、パフォーマンスや演出にも統一感が担保されていたわけだが、今回はその軸がないためにパフォーマンスや演出が通常以上にランダムで、故に曲毎のギャップもより際立って感じられる。そして何度も私たちを波状に襲うこのギャップを、涼しい顔で乗りこなしている3人(+サポートKey)のアンサンブルは、このバンドの異形ぶりが際立つという意味において、却っていつも以上にミューズらしく聴こえた。

「たとえ思いついても普通はやらないだろう」という、過度な足し算や掛け算で無理やり強度を上げていくのがミューズ・サウンド、及びミューズ・ワールドだ。前述の通りミューズ・サウンドは今回も炸裂していたが、ミューズ・ワールドの構築は控えめだった。今回の飛び物は紙テープと紙吹雪のみで、ドローンが飛び交ったり、無数の球体がクラウドサーフしたりするかつての演出と比べると明らかに地味だったし、吹雪の量も(あくまでミューズ比だが)少なかった。

ワールドの構築がアルバムのコンセプトと紐づくものである以上、そこが薄くなるのは否めないだろう。それでも加減知らずの炎が隙あらばボンボン打ち上がるのはいかにもミューズで、あんな至近距離で火柱の熱を浴びながら飄々と弾いているクリスも、炎の勢いに負けじと大ぶりストロークを繰り出すマシューも、百戦錬磨の面構えで最高だった。

“タイム・イズ・ランニング・アウト”から“ナイツ・オブ・サイドニア”に至る本編ラストの4曲は、ミューズの本来のホームは5万人級のスタジアムであり、Kアリーナ(2万人収容)の容積は彼らにとって明らかに小さすぎる、ということを再確認させられる流れだった。「最大」、「最強」といった枕詞で語られる現役屈指のライブバンドが3ピースであるという、常識を覆す痛快が詰まったクライマックスだった。

ドムのドラムは相変わらずシンプルだし、クリスのベースもそこまで手数が多いわけではない。マシューは“アップライジング”などではギターを置き、ハンドマイクで歌う余裕すらある。シンプルなセッティングにそぐわないミューズの爆発的な出音を食らうたびに、いったいどんな仕掛けがあるのかと目を凝らしてステージを見てしまうのだが、いつだってそこには正確無比な技巧性と、勇猛無比な情熱の融合という当たり前の証拠、そして誇大妄想的な音をとことん理路整然と構築する、非凡な才能だけが存在するのだ。

ドムとサポートのダン・ランカスターによる“ザ・セカンド・ロウ〜熱力学第二法則:単離機関”のハウス風リミックスで幕を開けたアンコールで、マシューはギラギラ光るジャケットを纏って登場。そう言えば今日はここまでミューズのライブには欠かせない面白要素が足りないと思っていたが、最後にきっちり回収。ラストの“スターライト”はこの日もまた、彼らだけが到達しうる高みでギラギラと輝いていた。年内には新作の制作に入ると言われているミューズ。次はアルバムツアーで、なるべく待たせずに帰ってきてください!


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