「The Long Goodbye」と題されたディープ・パープルの最新ツアー、いよいよ14日から日本公演がスタート。初日の舞台となったのは、これまで個人的にはKOЯNやスリップノットなんかを見た場所で、パープルのようなバンドにとってはやや意外な会場という印象を与える幕張メッセだ。場内にはみっしりと椅子が並べられていたものの、つめかけたオーディエンスはみんな立っていたので、スタンディングな雰囲気もけっこう出ており、これがなかなかいい感じだった。
音響面でも、筆者がいた中央付近に関して言えば、各楽器の分離もくっきりしたうえで、ドーンと迫力のある音圧で鳴っており、とてもよかったと思う。演奏全体は、それぞれリッチー・ブラックモアとジョン・ロードの代わりという重責をこなして十数年になるスティーヴ・モーズとドン・エイリーが牽引する形で、イアン・ペイス、ロジャー・グローヴァー、そしてイアン・ギランの黄金期メンバーも熱演。背後のスクリーン演出もけっこう凝っていて、ホール会場とは違う空気感の中でも十分に通用するパフォーマンスを見せてくれた。
この日は、まず伝家の宝刀“ハイウェイ・スター”からスタート。以降、現在のラインナップで作り上げてきたナンバーを、往年の代表曲とうまく絡ませながら披露していき、エイリーのキーボード・ソロ・コーナーを挟んでから一気にクライマックスへと雪崩れ込んでく構成。手元のセットリストでは、いったん“スモーク・オン・ザ・ウォーター”で本編終了し、その後にアンコール2曲と示されていたにもかかわらず、メンバーはステージから引っ込むことなく、舞台手前に出てきて挨拶しただけで、そのまますぐ“ハッシュ”に突入した。ギラン加入以前の初期作品だが、ディープ・パープルの演る“ハッシュ”が2018年に生で聴けて、とても嬉しい。
《長いサヨナラ》とうたってはいるものの、どうやら「そろそろ、いつ終わりが来てもおかしくない」という覚悟を持ってバンド活動に向き合ったことによって、ミュージシャンとしての底力が覚醒したかのようで、不思議なエネルギーに満ちたコンサートだった。このあと名古屋/大阪2デイズ/広島/福岡と日本ツアーは続いていく。きっと、さらに調子を上げていくだろうと予想されるので、ぜひチェックしてください。(鈴木喜之)