デフ・レパードが、全世界で2500万枚以上というセールスを誇る代表作『ヒステリア』の再現ライブを行なう日本ツアーをスタートさせた。
客電が落ち、まずは客席前方へ迫り出した花道にギタリストのフィル・コリンの姿が浮かびあがる。続いてボーカルのジョー・エリオットや、ピンクのスーツに身を包んだベースのリック・サヴェージといったメンバーたちが登場し、武道館を埋め尽くす満員のオーディエンスからは大きな歓声が沸き起こった。
アルバムの完全再現なので、当然のように本編のセットリストは、全曲が聴き馴染んだ通り演奏されていく。次に何が飛び出すかわからないライブならではの醍醐味はあまり無いが、この日の彼らは、それをものともしないだけの価値を『ヒステリア』というマスターピースが持っていることを証明してみせた。
マイケル・ジャクソン『スリラー』のハード・ロック版を目指したというだけあって、7曲ものヒット・ソングが収録されており、それらが次々と演奏される前半から盛り上がりまくるはもちろんのこと、シングル・カットされていないナンバーが多い後半の楽曲も、どれも十分なクオリティの高さを見せつける。中だるみするどころか、しっかりクライマックスを作り上げてしまったのには、あらためて感心させられた。最初からそのまま演奏して、ショウの形にすることを意識した構成だったのではないかと思わせるほどだ。
12曲をやりきって見事なステージを成立させたあと、アンコールでは他のアルバムからのヒット曲も披露し、歓喜と熱狂のうちにコンサートは幕を閉じた。
たびたび語り草になる通り、デフ・レパードというバンドは、普通なら解散してもおかしくないレベルの苦難を乗り越えてきている。しかし、事故で片腕を失ったドラムのリック・アレンは今も力強くビートを刻み続けていたし、急逝したオリジナル・メンバーのスティーヴ・クラーク(※この日も、たびたびスクリーンにその姿が映し出された)に代わって加入したヴィヴィアン・キャンベルも、その後26年間、交代することなく固定している。離合集散が多いバンド事情の中、これだけの結束力を維持してきたからこそ、今回のようなライブをやることができるのだと深く実感した。(鈴木喜之)
<SET LIST>
1. Women
2. Rocket
3. Animal
4. Love Bites
5. Pour Some Sugar On Me
6. Armageddon It
7. Gods Of War
8. Don't Shoot Shot Gun
9. Run Riot
10. Hysteria
11. Excitable
12. Love and Affection
[encore]
13. Let It Go
14. When Love & Hate Collide
15. Let's Get Rocked
16. Rock of Ages
17. Photograph