アルバム・デビューから今年で20年になるロン、14枚目のスタジオ作。彼の恩師筋に当たるプロデューサー:ミッチェル・フルームとの前作はフォーキィに聴かせたが、カントリー・ソウル志向の今作はウィルコやテデスキ・トラックス・バンドらで知られるジム・スコットとの初顔合わせになる。腕の立つミュージシャン達による高品質なモダン・ルーツ・サウンドとの相性は、ニュアンスを重視するリスナーには時にトゥー・マッチかもしれない。とはいえポップからバラード、レイドバックしたロックンロールまで作風はヴァラエティに富んでおり、微笑を誘うユーモアの差し色も含め、基本的にメランコリックな歌声とポジティヴなトーンとのバランスが見事な1枚だと思う。
汲めども尽きぬ天然泉のように美しい楽曲を書き続けるこの驚異的な才人は、ボブ・ロック(メタリカ他)とのタッグで話題を呼んだ前々作以降、新たなアレンジやサウンド作りに挑戦しながら裾野を広げている。そのクリエイティヴなルネサンスを大いに歓迎しつつ──どの作品を聴いても確実に残る、真情に満ちた「素顔の歌」にこうしてまた会えたことを何より嬉しく思う。(坂本麻里子)
良い歌を聴きたいなら
ロン・セクスミス『カルーセル・ワン』
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